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劇場映画やDVDの感傷的シネマ・レビュー

寸評◆キングコング

2006-01-31 11:51:13 | <カ行>
   

 「キングコング」(2005年・ニュージーランド/アメリカ)
  監督:ピーター・ジャクソン
  出演:ナオミ・ワッツ/エイドリアン・ブロディ/ジャック・ブラック/アンディ・サーキス

3時間に及ぶ長い映画だった。
物語の世界にひたって映像を堪能するには、これくらいの長さがあってもいいのだろうが、スカルアイランドに着く前の、少なくとも船が港を離れるまでが、全体のバランスからするとやや冗長に感じられた。

しかし、その後の展開は実にスピーディーで、画面から一瞬 たりとも目が離せない。大画面で見ても、ほとんど違和感のないコングや恐竜は圧巻。コングにさらわれたアンの、肝の据わった芸人根性に苦笑しながらも、大ザルに振り回されても怪我ひとつしない超人ぶりにはやや驚き(笑)

クロロホルムで眠らせたコングをどうやってNYまで 運んだかとか、鬱蒼としたジャングルの中でアンを捜索する男たちは、巨大昆虫と戦いながらどうやってアンのもとまでたどり着けたのかなど首を傾げるシーンもあったが、すべては野獣と美女との切ないラブストーリーで氷解する。

セントラルパークの凍った池の上で戯れるコングとアンは、まるで恋人どうしのように楽しげだったが、夢のような時間はまたたくまに過ぎ去り、コングを追い詰める軍の攻撃が始まる。なんともせつない展開だ。スカルアイランドの断崖の上で二人が夕焼けを見たとき、アンは美しさを言い表すジェスチャーをコングに教えた。エンパイヤステイトビルの上で最後の朝を迎えたとき、コングは胸に手を当てて朝焼けの美しさをアンに示す。二人の心が通い合う、美しいシーンだった。

異なる世界に住む者どうしの、破局へと誘われていく愛の悲劇は胸に迫る。
見ごたえのある娯楽作品だった。



満足度:★★★★★★★★★☆



寸評◆誰も知らない

2006-01-27 11:37:43 | <タ行>
  

 「誰も知らない」 (2004年・日本)
  監督・脚本:是枝裕和
  出演:柳楽優弥/北浦愛/木村飛影/清水萌々子/YOU
  

カンヌ国際映画祭で、主演の柳楽優弥が史上最年少の最優秀男優賞を受賞した話題作。父親の違う4人の子どもたちが、新しい男のもとへ走った母親に置き去りにされ、けなげに日々を送る姿を淡々と描く。

柳楽演じる長男の明(12歳)は、母親から託された現金で3人の妹や弟を文字どおり養っていく毎日。クリスマスに帰るはずの母親は戻らず、兄弟は子どもだけで年年越しを迎える。母を恋しがる幼い妹のために、お母さんを迎えにいこうと駅へ連れて行く明。帰り道にモノレールを見た明は、妹にこう言う。 「いつかモノレールに乗って、飛行機を見に行こうね」。 だが・・・・・・。

「いつか」という言葉は、とても悲しい。いつかという未来は、おそらく果たされないだろうという予感を、内に孕んでいる。 願ってはいるけれど、実現されない未来。こうした物語の中で、「いつか」に続くフレーズが現実になったためしは、あっただろうか?

子どもは大人とともに生きることで、子どもでいられる。大人の保護を受けなければ、子ども自身が大人にならざるを得ない。兄弟の世話を母親から託された明が、妹や弟のために大人顔負けの気配りを見せるシーンには、幾度となく心を打たれる。

ところで、この映画は現実のある事件を下敷きにしている。1988年に起きた「巣鴨子ども置き去り事件」だ。事件の大筋はこの映画と重なるけれど、もちろんまったく別物。映画のほうが、ずっとやさしい。

子どもが子どもでいられるような環境をつくるのは、大人の責任。その責任を放棄してまで自分の幸せを優先する大人。その大人のために犠牲になる子どもたち・・・・・・。あくまでも淡々とした風景のなかに、子どもたちの悲しみが滲んでくる。一見の価値あり。



満足度:★★★★★★★★★★



タイトルINDEX 【ア行・カ行・サ行】

2006-01-26 12:40:50 | 索引
 
    【ア行~サ行】


     <ア行>
         ■アイ・アム・レジェンド
         ■アイム・ノット・ゼア
         ■アカルイミライ
         ■アクロス・ザ・ユニバース
         ■アコークロー
         ■アナザー・プラネット
         ■アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生
         ■アポカリプト
         ■アンダーカヴァー
         ■アンダーワールド ビギンズ
         ■硫黄島からの手紙
         ■イーグル・アイ
         ■イースタン・プロミス
         ■イングロリアス・バスターズ
         ■ヴィレッジ
         ■ウォーキング・デッド
         ■ウォーリー
         ■ウォンテッド
         ■美しすぎる母
         ■エイプリルの七面鳥
         ■エイリアンVSプレデター
         ■AVP2 エイリアンズVS.プレデター
         ■エレファント
         ■大いなる陰謀
         ■おくりびと
         

     <カ行>
         ■カクレンボ
         ■崖の上のポニョ
         ■華氏911
         ■風の馬
         ■カタコンベ
         ■壁男
         ■カポーティ
         ■亀も空を飛ぶ
         ■機械じかけの小児病棟
         ■宮廷画家ゴヤは見た
         ■キングコング
         ■キングダム/見えざる敵
         ■グエムル 漢江の怪物
         ■クラッシュ
         ■グラン・トリノ
         ■ぐるりのこと。
         ■光州5・18
         ■コンテイジョン         

     <サ行>
         ■サイレン FORBIDDEN SIREN
         ■サウスランド・テイルズ
         ■
         ■ザ・シューター 極大射程
         ■ザ・セル
         ■ザ・バンク 堕ちた巨像
         ■ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト
         ■地獄の変異
         ■実録・連合赤軍 あさま山荘への道程
         ■シティ・オブ・ゴッド
         ■ジャーヘッド
         ■ジャケット
         ■シャッター・アイランド
         ■重力ピエロ
         ■春夏秋冬そして春
         ■ジョン・レノンを撃った男
         ■シリアナ
         ■心霊写真
         ■スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師
         ■スカイ・クロラ
         ■スキャナー・ダークリー
         ■ステイ
         ■ストーカー(タルコフスキー)
         ■SPIRIT
         ■スラムドッグ$ミリオネア
         ■戦場のレクイエム
         ■ソウ3
         ■ゾディアック
         ■その土曜日、7時58分
         ■それでもボクはやってない
         ■それでも生きる子供たちへ
         



タイトルINDEX 【タ行・ナ行・ハ行】

2006-01-26 12:35:57 | 索引
 
    【タ行~ハ行】



     <タ行>
         ■ダイアリー・オブ・ザ・デッド
         ■太陽
         ■ダークウォーター
         ■ダークナイト
         ■ターミネーター4
         ■誰も知らない
         ■箪笥
         ■チェ 39歳 別れの手紙
         ■チェ・ゲバラ -人々のために-
         ■チェ 28歳の革命
         ■地球が静止する日
         ■父親たちの星条旗
         ■デイ・ウォッチ
         ■ディスタービア
         ■ディセント
         ■ディパーテッド
         ■デジャヴ
         ■デス・レース
         ■鉄コン筋クリート
         ■トウキョウソナタ
         ■トゥモローワールド
         ■ドニー・ダーコ
         ■扉をたたく人
         ■トランスフォーマー
         ■どろろ
         ■トンマッコルへようこそ


     <ナ行>
         ■ナイトウォッチ NOCHNOI DOZOR
         ■ナイロビの蜂
         ■ノア 約束の舟
         ■ノウイング
         ■ノーカントリー
         

     <ハ行>
         ■バタフライ・エフェクト
         ■パッチギ!
         ■ハプニング
         ■パフューム ある人殺しの物語
         ■パプリカ
         ■バベル
         ■百万円と苦虫女
         ■パラノイドパーク
         ■パルス-回路-
         ■バーン・アフター・リーディング
         ■パンズ・ラビリンス
         ■バンテージ・ポイント
         ■ヒストリー・オブ・バイオレンス
         ■ヒューマン・キャッチャー
         ■ファーストフード・ネイション
         ■ファニーゲーム
         ■フォース・カインド特別編
         ■不都合な真実
         ■ブラインドネス
         ■ブラックブック
         ■ブラッド・ダイヤモンド
         ■プラネット・テラー in グラインドハウス
         ■ブリッジ
         ■ブーリン家の姉妹
         ■ブロークバック・マウンテン
         ■プロフェシー
         ■プロメテウス         
         ■ベクシル 2077 日本鎖国
         ■ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ
         ■変態村
         ■ぼくは怖くない
         ■ぼくのエリ 200歳の少女
         ■ボーダータウン 報道されない殺人者
         ■ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!
         ■ボルベール<帰郷>
        
         

 

タイトル INDEX 【マ行・ヤ行・ラ行・ワ行・数字】

2006-01-26 12:30:53 | 索引
 

    【マ行~ワ行・数字】


     <マ行>
         ■マシニスト
         ■マン・オン・ワイヤー
         ■ミスト
         ■ミリキタニの猫
         ■ミレニアム
         ■蟲師
         

     <ヤ行>
         ■闇の子供たち
         ■闇の列車、光の旅
         ■ユゴ 大統領有故
         ■ユナイテッド93
         ■ゆれる
         ■善き人のためのソナタ
         

     <ラ行>
         ■ラストデイズ
         ■落下の王国
         ■ラーメンガール
         ■ランド・オブ・ザ・デッド
         ■ランボー 最後の戦場
         ■Laundry ランドリー
         ■リーピング
         ■隣人13号
         ■-less 【レス】
         ■レッドクリフ PartⅠ
         ■レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで
         ■ローズ・イン・タイドランド
         ■ローズ家の戦争
         ■ロスト・イン・トランスレーション
         ■LOFT ロフト
         

     <ワ行>
         ■ワールド・オブ・ライズ
         ■ワールド・トレード・センター
         

     <数字>
         ■11:14
         ■1408号室



このブログについて

2006-01-26 10:54:41 | お知らせ
 
 
      ■経緯■
      このブログは2004年ごろからはじめた別サイトから、映画レビュー部門を
      独立させて一本化したものです。当初はただ記事の倉庫として使っていた
      ので、更新は月に2~3回どまり。その後SNSに投稿していたレビュー記事
      を移動させて、今のようなスタイルになりました。過去記事に手を入れる
      ことはほとんどないので、体裁・内容とも満足のいかないものもありますが、
      どうかご容赦を。

      ■ブログタイトル■
      上のような経緯があるため、タイトルも適当につけられています。そもそも
      “好きな映画だけ”見るなんてことはほぼ不可能なので、タイトル自体に
      矛盾があるかと(汗) 気の利いた別タイトルに変えたいとは思うのですが、
      名案が浮かばず。なお、タイトルでは映画を「見る」と表記していますが、
      これは大手メディアの漢字表記に準拠したものです(ただし本文中の表記
      については随時別枠で)。

      ■作品の満足度■
      ご参考までに鑑賞後の個人的な満足度を、星印「☆」10個中の「★」の数
      で採点しています。あくまでも個人的な満足の度合いであり、当然ながら
      作品の良し悪しとはなんら関係ありません。したがって好みの監督の作品
      や前作が気に入った場合などは評点が甘くなる傾向があります。また「★」
      の数は、再度の鑑賞後などに微調整される場合もあります。