
2月25日(日本時間の26日)、第79回アカデミー賞授賞式がロサンジェルスのコダックシアターで開催され、各部門の受賞作品が発表された。今回は「バベル」で菊地凛子が助演女優賞、イーストウッド監督の「硫黄島からの手紙」が作品賞ほか4部門にそれぞれノミネートされ、日本映画界の期待を膨らませたものの受賞はかなわず。作品賞に輝いたのはマーティン・スコセッシ監督の「ディパーテッド」。ゴールデン・グローブ賞で作品賞を獲得していた「バベル」は作曲賞にとどまった。
「ディパーテッド」は作品賞ほか監督賞、助演男優賞、脚色賞、編集賞の5部門にノミネートされ、作品賞、監督賞を含む最多4部門を獲得。スコセッシ監督は1980年の「レイジング・ブル」以降6度目のノミネーションで念願の受賞を果たしたわけだが、今回のオスカーは大きな「ご褒美」のようにも見えてしまう。もともとアカデミー賞は一種の功労賞のような性質を持っているので、「ディパーテッド」が受賞したのはわからないでもないのだが、4部門とは少し多すぎる気もする。
スコセッシ作品のファンだったら、オスカーを受賞するなら過去にもっとふさわしい作品があったはずだと思うだろう。「レイジング・ブル」ではロバート・レッドフォードの「普通の人々」に賞を奪われ、「グッドフェローズ」はケビン・コスナーの「ダンス・ウィズ・ウルブズ」に敗北した。こうした不幸な番狂わせが続いた結果、スコセッシ作品の受賞が遅くなったのは事実で、そうした事情が今回の受賞の背景にあるのかもしれない。「ディパーテッド」がほんとうに「レイジング・ブル」を超える作品かどうかということは、この際考慮の外に置くのがいいだろう。
菊地凛子と助演女優賞を争った「ドリーム・ガールズ」のジェニファー・ハドソンは「アメリカン・アイドル」(アメリカで人気の歌のオーディション番組。CATVで視聴可)の出身だということを内外の報道で知った。あの厳しいオーディションを勝ち抜いてデビューしたのなら、相当の実力派のはず。菊地凛子は残念だったが、日本人俳優がノミネートされること自体がまれなことなので、ハリウッドに十分存在感をアピールできたと思う。「バベル」の日本公開はゴールデン・ウィークだそうだが、いまから上映が待ち遠しい。アル・ゴアの「不都合な真実」とドイツ映画「善き人のためのソナタ」がそれぞれドキュメンタリー長編賞と外国語映画賞を受賞したのは個人的にはうれしかった。ノミネート作品では見逃したものがたくさんあるので、機会があればレビューを掲載したいと思う。
「第79回アカデミー賞・おもな受賞リスト」
■作品賞 「ディパーテッド」
■監督賞 マーティン・スコセッシ「ディパーテッド」
■主演男優賞 フォレスト・ウィテカー「ラスト・キング・オブ・スコットランド」
■主演女優賞 ヘレン・ミレン「クィーン」
■助演男優賞 アラン・アーキン「リトル・ミス・サンシャイン」
■助演女優賞 ジェニファー・ハドソン「ドリーム・ガールズ」
■脚本賞 「リトル・ミス・サンシャイン」
■脚色賞 「ディパーテッド」
■美術賞 「パンズ・ラビリンス」
■作曲賞 「バベル」
■音響編集賞 「硫黄島からの手紙」
■視覚効果賞 「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」
■外国語映画賞 「善き人のためのソナタ」
■長編ドキュメンタリー賞 「不都合な真実」
<参考URL>
◆Yahoo!映画 「第79回アカデミー賞」特集
◆Oscar.com 79's Annual Academy Awards HP