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劇場映画やDVDの感傷的シネマ・レビュー

DVD寸評◆ミリキタニの猫

2008-07-17 15:34:54 | <マ行>
    

  「ミリキタニの猫」 (2006年・アメリカ)

80歳という老齢の画家が人生ではじめて脚光を浴びることの奇跡的な意味を考えると、(もちろんドキュメンタリーと銘打たれた本作の信憑性を前提にしての話だけれど)このミリキタニというニューヨークの路上生活者に目を留めた映画製作者・ハッテンドーフの眼力は評価されるべきだと思う。猫を好んでモチーフにする老画家に、猫好きの彼女が声を掛けたのはごく自然のなりゆき。そこからの展開はまるで小川に笹舟を浮かべたように、静々ととどこおりなく進んでいく。ミリキタニの人生がハッテンドーフとの出会いによって再び動きはじめたように、この老画家のドキュメンタリーを撮ることで、ハッテンドーフは映像作家への道を歩みはじめるのだろうか。ともかくも被写体と撮影者の幸福な出会いこそが、この作品の醍醐味だ。

1920年、カリフォルニアで生まれたジミー・ツトム・ミリキタニ(「三力谷」と書くらしい)は、母親の故郷・広島で育ち、第二次大戦の気運が高まるなか、18歳でアメリカに帰国。大戦中は日系人強制収容所に送られて辛苦の時代を過ごし、市民権を自ら放棄するという抵抗を試みる。それ以来、社会保障も受けられないままアメリカ国内を転々とした末、落ち着き先のニューヨークでアーティストとしての誇りだけを拠りどころに路上生活を送り続けた。自ら「巨匠」と名乗ってはばからないこの孤高の画家は、9.11を境に身の上を案じたハッテンドーフのアパートに転がり込む。数十年の時を、日本への郷愁とアメリカへの反発のはざまで孤独に生きてきたミリキタニが、ハッテンドーフの力添えでしだいに自己のアイデンティティに目覚めていき、アメリカという国としだいに折り合いを付けていく心の旅は、そのまま日系アメリカ人の戦後史と重なり合う。DVDには70年ぶりに日本を訪れたミリキタニの映像も収められていて、この老人の天衣無縫ぶりには心が和んだ。「巨匠」の描く絵もまた、のびやかですばらしい。


満足度:★★★★★★☆☆☆☆



<作品情報>
   製作・監督:リンダ・ハッテンドーフ
   音楽:ジョエル・グッドマン
   出演:ジミー・ツトム・ミリキタニ
         

<参考URL>
   ■公式サイト 「ミリキタニの猫」
   ■DVD情報 amazon.co.jp 「ミリキタニの猫」


   

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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どうもこすもさんこんばんは⌒ー⌒ノ (黒猫館)
2008-07-18 03:21:30
どうもこすもさんこんばんは⌒ー⌒ノ

「ミリキタニの猫」レヴュー非常に興味深く読ませていただきました。

ミリキタニは「猫」を好んで描く老画家であるとか。
猫仲間として非常にウレシイです。

また80歳という高齢でようやく注目されたという事実も凄いです。
30代や40代はまだまだ「若造」だと痛感してしまいました。

そしてなによりミリキタニを「見出した」ハッテンドーフ(←この名前も面白いですが⌒ー⌒;)がこの映画の影の主人公であると思います。

「作るヒト」が重要なのはもちろんですが「評価するヒト」も重要なのだと痛感してしまいました。

それではまた~♪
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くろねこさん、こんにちは~ (masktopia)
2008-07-19 16:02:36
あいかわらずの猛暑ですね。
外出するのも夜間のほうが楽なこの頃です。。。

>ミリキタニは「猫」を好んで描く老画家であるとか。
>猫仲間として非常にウレシイです。

おぉっ、猫がお好きでしたか^^ わたしもです。
そういえば、くろねこさんのHNも猫に因んでいますものね

>80歳という高齢でようやく注目されたという事実も凄いです。

幸福な老境とでも言うのでしょうね。
人生の終盤でみごとに花を咲かせたミリキタニ老人は
ほんとうに幸せだと思いました。彼を見出したハッテンドーフさんに
拍手を贈りたいですね


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