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アポカリプト◆マヤの勇士を描く神話的アクション大作

2007-06-17 18:12:50 | <ア行>
  

  「アポカリプト」 (2006年・アメリカ)
   監督:メル・ギブソン
   共同脚本:メル・ギブソン/ファラド・サフィニア
   撮影監督:ディーン・セムラー
   出演:ルディ・ヤングブラッド/ダリヤ・ヘルナンデス/ラオウル・トルヒーヨ

「手に汗握る」という映画があるとすれば、まさにこれ。冒頭の狩りの場面にはじまり、全編ほぼ疾走シーンの連続。ぐいぐいと画面に引き込まれ、気がつけば拳を握りしめていた。異世界に観客をかっさらうだけの腕力が、この映画にはある。

舞台はマヤ文明末期の中央アメリカ。密林の中で平和に暮らす部族の村を、マヤ帝国の傭兵が襲撃し、大人たちを捕虜にしてジャングルに連れ去った。部族長の息子ジャガー・パウ(ルディ・ヤングブラッド)はやっとのことで妻子を枯れ井戸に隠すが、目の前で父を殺され自らも捕虜となってマヤの都市へと連れ去られる。飢饉や疫病に疲弊した都市では、神官が生贄を捧げて神に祈っている。捕虜たちはその儀式のただ中へ生贄として放り込まれる・・・・・・。

メル・ギブソンは前作「パッション」で、ラテン語とアラム語を駆使して聖書の記述どおりの世界を再現してみせたが、「アポカリプト」でも当時のマヤの世界を描くために全編をマヤ語で演出。メインキャストはマヤ族の一人を除く全員が、マヤ語の指導を受けて撮影に望んだという。さらに主演のヤングブラッドほかキャストの面々は、南北アメリカの先住民から選び出し、知名度や演技力よりも土俗の血を彷彿とさせる風貌にこだわった。この徹底ぶりが功を奏して、マヤの神話的世界が不思議な現実感をともなってスクリーンに再現される。その鮮烈な映像(デジタル撮影を効果的に行っている)は見もの。

都市に内在する文明の終焉

生贄の儀式のシーンでは一部に残虐な描写があるものの、主人公が儀式を逃れて村へと続く森へ走り出したとき、わたしたちは爽快な風となって彼の背中を後押ししたい気持ちに駆られる。追っ手の槍と矢が降り注ぎ、生贄となった男たちの屍が臭う真昼、彼はいまひとたびの自由へ向けて密林をひた走る。その姿は感動的だ(マヤ文明が生贄の儀式と無縁でなかったことは知られているが、その描写が行きすぎだという意見をあちこちで聞く。殺戮シーンを意識しすぎたために、全体が色褪せて見えてしまうとしたら残念だ。この物語は、主人公ジャガー・パウが恐怖心を乗り越えて勇者へと成長する神話でもあるのだから)。

ところで3000年あまりに及ぶ繁栄を誇ったマヤ帝国はなぜ滅亡したのだろうか。一説には、都市への人口集中による自然環境の破壊や農業の衰退、それによる食料不足や疫病の発生など、政治的な基盤を揺るがしたもろもろの要因が指摘されている。「アポカリプト」では石灰石の建造物を覆う漆喰をつくるために、奴隷たちが真っ白になって働く場面がある。大量の漆喰をつくる過程で燃料となる木材を得るために、都市の周辺では森林の伐採が広範囲に行われていたらしい。都市という生き物が周囲の自然環境を侵しながら成長していくとすれば、いずれ資源の枯渇と環境破壊によって自ら衰退の道をたどることは想像に難くない。映画の冒頭に引用されたウィル・デュラントの言葉――「偉大な文明は外部からではなく内部から破壊され征服される」は映画のシーンに言及すると同時に、環境問題が脅威になりつつある現代文明への辛らつな揶揄とも受け取れる。

己の肉体をより所に恐怖心と戦ったマヤの勇士の物語――密林の神話に酔った138分。




満足度:★★★★★★★★☆☆



<参考URL>
 ■映画公式サイト「アポカリプト」

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7 コメント

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こんばんわ (にゃむばなな)
2007-06-17 20:23:19
TBありがとうございました。

自然破壊によって文明が衰退していくという意見はすごくよくわかりますね。これは過去の事象にとどまらず現代でも共通して言及できる内容ですもんね。

本当に人類って成長しないなぁって思いましたよ。もしかしたら近い将来、宇宙人が地球にやってきてこの映画のラストのように新しい始まりが始まるかも?と思うと、ちょっと怖かったですね。
Unknown (くまんちゅう)
2007-06-17 20:41:49
TBありがとうございました。
マヤ文明も自然破壊と支配者の腐敗で滅びたと言う事で現代社会に対する警鐘も含まれている訳ですね、納得です。自分はメル・ギブソンなのでキリスト教的啓蒙を勘繰ってしまいました。
●にゃむばななさん (masktopia)
2007-06-18 23:39:10
ご訪問とコメントをありがとうございます。

息もつかせぬ展開にスクリーンから目が離せませんでしたが、
その底に今に通じるメッセージを読み取ることができました。
そういう意味では、なかなかの骨太な作品だったと思います。

温暖化する地球にも、「新しいはじまり」があると
いいのですが・・・。できれば宇宙人よりも地球人による
アプカリプトであって欲しいと思います(笑)
●くまんちゅうさん (masktopia)
2007-06-18 23:53:16
ご訪問とコメントをありがとうございます。

マヤの都市が森林伐採などをきっかけに、食糧不足や
疫病に見舞われたというのは、ほんとうに現代に向けた警鐘ですね。

>メル・ギブソンなのでキリスト教的啓蒙を勘繰ってしまい

ラストのあたりは、そんなふうにも見えましたね。
「アポカリプト」という言葉もApocalypseを思わせるので、
どうしてもキリスト教的世界を連想してしまいますね。
コメントありがとうございます (ロイ from 週末映画!)
2007-06-21 22:53:38
コメントありがとうございました。
予告をみても、緊張感は伝わってきました。走っている印象が強いですが、奥深いメッセージもありそうですね。

また、参考にさせてもらうかもしれませんがよろしくお願いします。
おじゃまします (ピロEK)
2008-02-06 21:27:28
はじめまして。私のブログにコメント頂きありがとうございました。
私のブログにコメント頂いて以降、長いこと放置してスイマセン。
たしかに同じ系列のテンプレートですね。このテンプレートって今選べないんですよね(裏技以外では)。
ですからお互いにレアですよ…多分。ちなみにAki.さんという方のブログのテンプレートはmasktopiaさんと全く同じです。
私もAki.さんもこのレアテンプレートを変更しないで頑張っていますよ。
さて、アポカリプトですが、凄く好きなタイプの映画でした。衣装とかメイクとか美術とか…素晴らしい映画でしたので十分に堪能できましたよ。
では、また来させていただきます。今後ともよろしくお願いいたします。
こんにちは (masktopia)
2008-02-12 11:07:57
こちらこそ、ご訪問とTBをありがとうございました。

テンプレートが(いまはもう選べない)同じ系列の
ものだったので、ついコメントを差し上げてしまいました(笑)
「アポカリプト」を評価なさっている点は私も同じです。
いまは映像処理でみせてしまう映画が多いですが、
この作品のように役者にとことん無理をさせて
リアリティにこだわる骨太さが、何よりすばらしいと
思いました。
これからも監督メル・ギブソンに期待したいです。

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