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蟲師◆端麗な映像美で描く自然の怪異

2007-04-02 20:13:06 | <マ行>
  

  「蟲師」 (2006年・日本)
   監督・脚本:大友克洋
   原作:漆原友紀(「蟲師」)
   撮影:柴主高秀
   出演:オダギリジョー/江角マキコ/大森南朋/蒼井優

「虫がいい」、「虫が知らせる」、「虫が好かない」、「虫の居所が悪い」・・・・・・虫にまつわるこうした数々の表現は、日本人が人間の心身に影響を及ぼすものとして、虫の存在を思い描いてきたことを物語る。説明不可能のできごとには、目に見えない存在が介在しているという考え方は、幽霊や物の怪といった豊かな空想の産物を生み出した。この映画で描かれる「蟲」とは、まさにそういう類いのものだ。

主人公のギンコ(オダギリジョー)は蟲師。蟲と呼ばれる不思議な生命体が引き起こすさまざまな現象を解明し、時には蟲によって病を得た人々を癒しながら果てない旅を続けている。旅の途中で出会った虹朗(大森南朋)は、父親のために虹蛇(こうだ)という美しい蟲を探し続けている。道中を共にする二人は、蟲憑きの淡幽(蒼井優)が病にかかったことを知って屋敷に駆けつける。淡幽は体を侵す蟲を文字に書き記すことで払っていたが、ある盲目の女蟲師が家を訪ねてから、全身が黒い痣に覆われて高熱にうなされるようになっていた・・・・・・。

物語の舞台となる山岳地帯は、まさに深山幽谷の趣きがある。ロケハンは日本列島を一周半したというだけあって、百年前の幻想の風景が瑞々しくスクリーンによみがえる。この申し分ない自然を背景に、蟲という不思議な生き物が最新のVFXによって描かれるのだが、その美しく幻想的な映像はすばらしい。謎の女蟲師ぬい(江角マキコ)の住まう仄暗い山奥の池の話や、虹朗の求める虹蛇の出現シーンは、謎めいたいにしえの伝説を思わせて、印象深い。そして淡幽がしたためた巻物の文字が生き物のように壁を這う場面は、物の怪や呪術がまだ現実のものだった遠い時代を彷彿させる。

大友克洋による原作漫画の実写化への期待が大き過ぎたためか、話がわかりにくい、冗長で退屈だ、という批評がネット上に散見されたが、話の展開にそれほど難点は感じなかった。トコヤミや銀蟲(ぎんこ)、虹蛇、虹酒(こうき)といった聞きなれない言葉も、原作が漫画ということもあり、特には気にならなかった。場面のカット割りが長い分、柴主高秀撮影の美しい映像をたっぷりと堪能でき、作品の世界に浸れたのはよかった。原作は未読なので比較はできないが、この作品の曖昧模糊とした佇まいをどう受け止めるかで、好き嫌いが分かれる作品かもしれない。オダギリや蒼井優という旬の俳優に助けられた部分もあることは確かだが、総じて固有の映像美に満ちた端麗な異色作だと感じた。



満足度:★★★★★★★☆☆☆




<参考URL>
 ■映画公式サイト 「蟲師」
 ■Yahoo!映画 「蟲師」特集(4月11日まで掲載)

   
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Unknown (Rei)
2007-04-06 11:22:08
原作は遠い昔に読んだような…私ははまりました。海外のキリスト教世界では描き得ない、これが日本だ、僕らの精神風土だ(別に『五つの赤い風船』ファンではないのですが)と友人たちにメール送りました。たしかに難癖つけたいところもありましたが、魑魅魍魎の世界を『固有の映像美』に落とし込んだ作品、この映像世界だけで、それだけで私は大いに満足しました。ですから、ネット上での評判に、映画は好き好きといっても、作品についての評価の眼はきちんと持ちたく、かといって己の審美眼に絶対的な自信を持っているわけでもない映画好きにとっては、世間の評価に自分の審議眼に自信喪失気味でした所、本ブログのコメントは大いに頼もしい見方・味方。うれしくなり初めてコメント入れさせていただきました。本作でオダギリジョーは勿論ですが、蒼井優ちゃん、今後が楽しみな女優さんですね。
●Reiさん (masktopia)
2007-04-06 18:39:12
コメントありがとうございます!

いつも覗くYahoo!のレビューでは、ほとんど芳しい評価を
得ていませんでしたが、以前にもあそこで酷評されていた作品が
かなりの傑作だと感じたことがあったので、映画館に
足を運んでみました。

やっぱり、なかなかいいじゃありませんか(笑)

Reiさんのおっしゃるように、日本の土俗的な信仰や
伝承の世界を垣間見せてくれる、おもしろい映画だと
思いました。映像もすばらしかったですね!

こちらこそ、共感してくださってうれしいです。
ありがとうございました。

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