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アースダイバー/中沢新一

2006-01-10 02:15:07 | 最近読んだ本
曼荼羅というものがあります。
人間が、直感では理解できないほどの大きなものを理解するためには、特徴を抜き出してメモを作り、次に個々の特徴を寄せ集めて全体を理解しようとします。つまり、細分化された部分から、全体を再構成して、その時に全体を「わかった」と感じる事ができます。曼荼羅というのは、仏様の並びを表したものではなくて、宇宙を理解するための物だと聞いた事があります。宇宙(世界全体といっても良いかもしれませんが)という巨大なものを理解するために、細分化した部分に仏を置いていく。そうやって、宇宙全体を再構成したも、それが曼荼羅なのではないかと思います。

神話というもの。これは、古代から語り継がれてきたもので、そこには古代の人々がとらえた宇宙観が凝縮されています。神話の成り立ちを検証する事によって、我々の先祖がどのような精神活動を行っていたのか、その部分部分を知る事ができると思います。「アースダイバー」で中沢新一は、古代人の精神活動の部分を検証するために、縄文時代の地図を手がかりとして、神話のよりどころである遺跡を巡ります。そして不思議と、縄文時代の地形が、縄文人の精神活動と深く結びついていた事を発見します。

縄文時代から地形が変わるぐらい時が流れると、海が退いたあとに新しい土地が作られて、次第に現在の東京の姿ができ上がっていきます。古代からあった土地は高台として残り、その坂の下には新しい湿った土地が形作られていきました。新しくできた、湿った土地に住み着いた人々と、古代からある高台に住んでいる人々。この坂の上と下で、様々なドラマが生れ、そして新しい伝説が作られていきます。作られた時代の異る2つの大地と、そこに集まった人々の生活。それが不思議と現在の東京の姿と一致して見えます。

はたして、何千年も前の地形と、そこに住んだ人々の精神活動が、現在の東京にも影を落としているのか。それは、決して解決されない謎なのかもしれません。しかし、東京という街を縄文時代の地形に基づいてとらえ直すということは、ある種の知的ゲームとして楽しむ事ができると思います。

(写真は、「アースダイバー」のなかにも出てくる尾崎(お・さき)の丘に建つ母校です。)

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