経済(学)あれこれ

経済現象および政策に関する意見・断想・批判。

「天皇制の擁護 断章1」ユダヤ人の科学

2021-04-20 15:09:37 | Weblog
「天皇制の擁護 断章1 ユダヤ人の科学

ユダヤ人と言っても過去会った人は数人です。仕事の関係で来日した精神分析家と面談したり、招待したりというところです。私が彼らの社会に詳しいというわけではありません。
精神分析学は創始者がユダヤ人であることによってか、非常にユダヤ思想の影響を強く受けています。フロイトは自分が作った学問や治療法が、ユダヤ人の科学といわれるのを嫌いました。しかしいい意味でそうなのです。旧約聖書と精神分析の共通点は、まずrealityの尊重です。徹底的にreal、現実直視です。フロイトは真実に迫る事によって治療すると言いました。だから社会とか自己の次元で簡単に内省して解るものを疑い、その背後にリビド-とアグレッションを把握しました。Anlity(うんこの意義)の設定なんかもそうです。大雑把に言えば人間の行動原理など、性欲と攻撃感情と金銭だといっているようなものです。
旧約聖書がrealな人間観察の記録であるとは前回に述べました。人間性を妥協なくその現実あるいは真実にまで還元すると、逆に個々人はなぜ共同体を形成するのかという問題が出てきます。旧約聖書はそれを一神教、名を唱える事すらはばかられる、不可知不可視の唯一の絶対者である、神に求めました。しかしその点ではフロイトの方が一枚上かも知れません。個人をとことん現実に還元すれば、過去は現在に重畳し、繰り返され、結局相互の存在は同一になる、と彼は言いました。転移、対抗転移、さらに投影と同一視、という具合に論旨をたどればそうなります。しかしフロイトもここからは彼の思想的胎盤である旧約の理念に行き着きます。その結果が超自我です。これは神の異称です。
 19世紀の30年代にユダヤ人がゲット-から解放されて以来、ユダヤ人の中から優秀な思想家学者が輩出しました。代表を4人挙げます。K・マルクス、G・カント-ル、S・フロイト、A・アインシュタインです。唯物弁証法、集合論、精神分析、相対性理論と名がつく学問の一分枝を彼らは作りました。この4つには著しい共通点があります。次のようになります。
 
マルクス---社会の上部構造の背後にあってそれを動かすものは経済的衝動
 カント-ル---数は何により構成される?空間は?順序よく並べられうる点のような----
 フロイト---社会や自我を動かす潜在能力は性・リビド-
 アインシュタイン---時間と空間はあい疎通する 絶対的なものではない

数、社会、自我、時間、空間など我々が通常当たり前の公理として是認するものの一次性を彼らは否定し、その背後に、その下部に何かを求めます。あたかも旧約聖書の世界が、人間をrealに把握した結果、人間を超える不可知不可視な何物かにすべてを委ねるのと同じです。 
 (付 数学嫌いの方はぜひ集合論の本を読みなさい 見解が180度変化しますよ)
イギリスの経験論に由来する近代合理主義はある種の妥協です。妥協の手段であり結果が、私有財産とそれを操作しうる自我です。マルクス以下のユダヤ系の思想家はなんらかの意味でそれに挑戦します。
 私は、ユダヤ思想の一神教と仏教の縁起無我、そしてソクラテスの無知の知は同じもののようだと言いました。キリスト教はユダヤとギリシャの思想の後裔です。ところでキリスト教が生まれた西暦前後に仏教も大変身を遂げます。大乗仏教の出現です。法華経と無量寿経をもって大乗仏教運動の画期とすれば、これはキリスト生誕から福音書成立の時期と一致します。キリスト教は三位一体論に落ち着きます。法華経も同様な構造を持ちます。ギリシャ悲劇と観無量寿経の逸話は同工異曲です。西も東も結構同じ事をしているようです。こう大局的にみると区々たる民族や国家の特徴はどこかにいってしまいます。こういう形で私もユダヤ人の科学の影響を受けたのでしょうか?
 なぜ私が「天皇制の擁護」という本を書いたのか?私の政治的保守性もあります。しかしそれだけではないようです。民主主義とか議院内閣制とかというものに飽き足らない(こういう人は多いでしょうね)となると、結局権力とは何かと再問せざるをえなくなります。民権に限界があるのなら、君主制の意義はと考えてしまいます。この時私の職業に内在する何かは大きく影響します。私は権力論は王権論に行き着くと思っています。
 うれしい話。いい話ですから実名を出してもいいでしょう。大阪府池田市で開業されている大久保圭策先生から、民族派以外の天皇論、精神分析的天皇論が出てこないものかと思っていました。ラカン派から出てくるかと思っていたが、先生がお書きになるとは---といわれました。ラカンの王権論と私のそれとは導出の仕方が違います。日本とフランスの風土の差でしょう。しかしラカンがフロイトの思想に内包される権力論を取り上げた点には敬意を表します。

「君民令和、美しい国日本の歴史」

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