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運命の日

2007年05月24日 | ドラフト・新人

運命のいたずらなのか、それとも呪われた運命なのか・・・・
ドラフトロッタリー(抽選)は、今後のチームの運命を決める、1年で最も重要な日だ。
そして毎年、悲喜こもごものドラマが展開される。

前にも言ったことがあるが、僕はドラフトとトレードが何よりも好きだ。
分析や駆け引きといった頭脳戦と、どうしようもできない運命のいたずら。
この2つが絶妙に絡み合って生まれるドラマに、脳が刺激される。

特に今年のドラフトは、ルブロン/ウェイド/カーメロの2003年以来の豊作と呼ばれ、各チームにとっては絶好のチャンスなのだ。
以前にも紹介したように、とりわけグレッグ・オーデンとケビン・デュラントの2人のカレッジスターの力は抜きんでている。

オーデンは10年に1人の逸材と言われる希少なビッグセンター。
85年のユーイング、92年のシャック、97年のダンカンに並ぶ、久々の大物ビッグマンの出現だ。
センターが絶滅危惧種に指定されている昨今では、各チームのみならず、NBA全体にとっても貴重な人材となる。

デュラントは数字の上ではオーデンをも上回るスーパースター。
208cmの大型SFで、攻撃でも守備でも3ポイントでも何でもござれ。
KGのオールラウンド性とノビツキーの攻撃力を足して2で割ったような存在とも言われる。
平均25.8点、11.1リバウンドをマークし、1年生にして大学最優秀選手に選ばれてしまった。

プレーオフを逃した各チームは、是が非でもこの2人のフランチャイズプレイヤーを獲得しようと、シーズン中から“裏の獲得合戦”を進行していた。
ドラフトロッタリーでは、成績の悪かったチームほど、上位指名権を引き当てる確率が高くなるように割合が決められている。
つまり、「どうせプレーオフが無理なら、いっそのこと思いっきり負け続けた方がチームにとっては都合がいい」ことになる。
ハッキリと言うチームはもちろんないが、これは各チームの“本音”だ。

だが全ての下位チームがそうしたわけではない。
ホークス、シクサーズ、ブレイザーズ、ソニックスといった面々は、プレーオフの望みが絶たれてからも、純粋に“勝ちに”いっていた。
ドラフトロッタリーを見据えていたのは、セルティックス、ウルブズ、バックス、グリズリーズといったチームであった。
その結果、ドラフトロッタリーの確率はこうなった。

1.グリズリーズ(25.0%)
2.セルティックス(19.9%)
3.バックス(15.6%)
4.ホークス(11.9%)
5.ソニックス(8.8%)
6.ウルブズ(5.3%)
7.ブレイザーズ(5.3%)

これは基本的に成績の悪い順に並んでいる。
グリズリーズ、セルティックス、バックスの3チームは、狙い通りTOP2を引き当てる確率を高くする目的を果たしたということになる。
ただし・・・それはこれから起こるドラマの前振りに過ぎなかった。
運命のロッタリー抽選の結果は、こうなった。

1.ブレイザーズ(5.3%/7位⇒1位)
2.ソニックス(8.8%/5位⇒2位)
3.ホークス(11.9%/4位⇒3位)
4.グリズリーズ(25.0%/1位⇒4位)
5.セルティックス(19.9%/2位⇒5位)
6.バックス(15.6%/3位⇒6位)
7.ウルブズ(5.3%/6位⇒7位)

ご覧の通り、先に挙げた“わざと負けた”チームが軒並み順位を下げ、“勝ちにいった”チームが幸運をつかんだのである。
まるで、神が頑張ったチームにご褒美を与えたかのように・・・・

トップピックを引き当てたブレイザーズは、数年前まで選手の不祥事が絶えないダメチームに成り下がっていた。
その悪の温床を一掃し、クリーンな若手中心にチーム再編を始めたばかり。
昨年のドラフトでも最も成功した指名をし、ブランドン・ロイは新人王に、大型PFラマーカス・オルドリッチとパスの魔術師セルジオ・ロドリゲスも才能の片鱗を見せた。
ここに頼れるディフェンスの柱、オーデンを加えたラインナップは強力だ。
来年いきなりプレーオフに行っていても、決して不思議ではない。

2位のソニックスは、成績よりもチームの買収・移転問題で揺れ、シアトルを離れるのも時間の問題と言われていた。
ここで人気・実力ともに全国区のデュラントを獲得できるチャンスが巡ってきたのは、またとない幸運と言える。
つまり、デュラントの人気で観客動員が増えれば、移転問題といったお家騒動も解消されるからだ。
さらに、ちょうど今夏ラシャード・ルイスがFAとなり、資金力に苦しむソニックスは放出の可能性大だろうと言われていた。
そこにきて同じSFのポジションに、ルイス以上の逸材が手に入るとなれば文句なしだ。

3位のホークスは、見た目には1つ順位を上げただけで、大した差ではないように見える。
しかし、この1つの差は、雲泥の差であった。
この指名権は元々、ジョー・ジョンソンをトレードで獲得した際にサンズへ譲り渡していたものだった。
だが今年に限っては「3位以内だったらホークスが保持できる」という条件付きだった。
つまり、4位以下だったら自動的にサンズに譲らなければならなかったわけだ。
今年は2003年以来の豊作と言われる貴重なドラフト。
今年のドラフト上位指名権は、例年と比べて価値が全然違うのだ。

特にホークスは、ここ数年ドラフトで失敗を繰り返している。
SFばっかり指名してポジションの偏りが出たり、PG不在なのにクリス・ポールやデロン・ウィリアムズを指名するチャンスをスルーしたりと、フロントのボーンヘッドが続いていた。
ここで一旦はなくなるはずだった指名権を取り戻し、さらにはアル・ハリントンのトレードで得たペイサーズの指名権も、プレーオフ常連のペイサーズがプレーオフを逃すという幸運に恵まれ、11位という好順位になった。
この3位と11位という2つのロッタリーピックを使って、ホークスがどう今までの失敗を帳消しにできるかが注目される。

一方・・・・不運に見舞われたのがグリズリーズとセルティックスだ。
グリズリーズのジェリー・ウェストGMは、今年限りで勇退が決まっているものの、この結果には「不公平だ。システムに問題がある。」と怒り心頭でぶちまけた。
いつも冷静で頭脳派として知られるウェストが、ここまで感情的になるのも極めて珍しい。
ただそれぐらい重大な、単にアンラッキーでは片付けられない出来事だったのだ。

セルティックスはさらに不憫だ。
万年ビッグマン不足に悩むセルティックスは、97年ドラフトの時にもリーグ最下位の成績でトップピックに最も近い条件にあったにもかかわらず、1位を引き当てることができなかった。
この時逃した大魚は、あのダンカンだ。
セルティックスは未だにその時の未練が忘れられず、「あの時ダンカンを獲れていれば・・・」と思いながら、スパーズの優勝を横目で見つつ、10年の月日が流れていた。

そして今年、あのダンカンの苦い思い出を払拭すべく、次なるビッグマン、オーデン獲得のためにあらゆる手段を使っていた。
オーデンされ獲れれば、ダンカンの悪夢を忘れられる。
しかしその願いは、またしても無残に打ち砕かれてしまった。
栄光のセルティックスに、光はまだ戻ってこない・・・・


「ワイワイ、ガヤガヤ」


運命のピンポン玉よ・・・・


「へへーん、やったぜい!」byブランドン・ロイ


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