北岳山麓合唱団

ソウルジャパンクラブ(SJC)の男声合唱団です。毎週火曜日、東部二村洞で韓国の歌と日本の歌を練習しています。

懐かしき金剛(クンガン)山

2015年02月14日 10時10分52秒 | 合唱

2月10日は最初の練習日。

参加された方は、テナー、西ヶ谷さん、溝川さん、新しく参加された林さん、斉本さん、バリトン、私、バス、山本さん、柴田さん、新しい参加された木村さんの8名。皆様、お忙しい中、どうもありがとうございました。

第一回目は発声練習をかねて、韓国の歌曲の中から「懐かしき金剛山」と「故郷の春」を取り上げました。音程が高いテナー向けの曲で、初めての方やバスの方にはキツかったかも。

「懐かしき金剛(クンガン)山」と「故郷の春」はいずれも韓国歌曲を代表する有名曲。美しいメロディーで、韓国人で歌えない人は、まずいないでしょう。カラオケで韓国人の職員の方、あるいはお客様の前で披露されると、「うわっ、この人はスゴい!」と大きくアッピールするものがあると思います。東京でアメリカ人が滝廉太郎や山田耕作を歌うようなものですよ。

 

今回、この曲の意味やその背景について、韓国語資料で調べました。私にとっても初めての内容が多かったので、ご紹介しておきます。

「懐かしき金剛山」ですが、韓国語のWikipediaにはこうあります。

〈なつかしき金鋼山〉は韓相億(ハン サンオク)が作詞して崔永燮(チェ ヨンソプ)が作曲した韓国の歌曲だ。1962年初演されたカンタータ 〈美しい私の山河〉(詩:韓相億、曲:崔永燮)11曲の中に収められた。

作曲当時、韓相億は銀行員詩人であり、崔永燮は音楽教師だったが、故郷が同じ江華島だった二人は親しい間柄だった。KBSでは〈二週間のコーナー〉で毎週、創作曲を紹介したが、1961年、朝鮮戦争11周年で祖国の山河を主題にした曲を彼らに依頼した。〈なつかしき金鋼山〉は中国と旧ソ連の海外同胞に感動を与えられる歌として韓相億の詩に崔永燮が曲を付けた。歌詞は金鋼山の絶景と(南北)分断によって行けない心境を表現している。

国民歌曲

1972年、南北赤十字会談が進められると南北和解の雰囲気の中で放送でよく流され、国民的歌曲になった。1985年の南北離散家族故郷訪問芸術団の交換公演でも歌われ、北朝鮮の全観衆が立ち上がって拍手した。しかし歌詞の内容には「汚されてから何年」、「私が抱いた恨み」、「汚された場所」、「足もとに山海万里を見せないでくれ、我々皆が抱いた恨みが解けるときまで」といった北朝鮮の政権に対する敵対的な感情を現わしており、民族和合を造成する上で、ふさわしくないという指摘がある。それ以来、歌詞を変更して 「汚されてから何年」を「行けなかったその歳月」と、「我々皆が抱いた恨み」を「我々皆が抱いた恨み悲しみ」、「汚された場所」を「昔のままだろうか」と歌っている。北朝鮮では禁止曲に指定されている。

世界的認知度

なつかしき金鋼山は国内外の有名な声楽家、50余名の音盤に含まれている。プラシド・ドミンゴ、ルチアーノ・パヴァロッティ、ホン ヘギョンが共に歌ったアルバムにも含まれており、アンジェラ ゲオルギューの'My World'にも収録されており、ミーシャー・マイスキーのチェロ独奏曲にも含まれている。

この曲が韓国を代表する歌曲として、世界中で歌われていることは知っていましたが、北朝鮮では禁止曲に指定されているとは知りませんでした。でも、歌詞を見ると、確かにその通りなのです。オリジナル版を意訳したので見てみましょう。赤字で書いた部分がもとの歌詞、青字が現在の歌詞です。

 

誰のものなのか? 清く美しい山 懐かしい万二千峰 言葉はなくとも

今こそ自由万民が襟を正し、その名をもう一度呼ぶ 我々の金剛山

数々万年 美しい山 汚されてから何年行けなかったその歳月

今日こそ 訪れる日が来たのか 金剛山は呼んでいる

毘蘆峰(1) その峰は汚された場所(そのままだろうか) 白い雲 そよ風も何気に過ぎていく

足もとに山海千里を見せないでくれ 我々皆が抱いた恨み(悲しみ)が解けるときまで

数々万年 美しい山 汚されてから何年(行けなかったその歳月)

今日こそ 訪れる日が来たのか 金剛山は呼んでいる

(1)毘蘆(ピロ)峰:金剛山の主峰(1638m)。

 

合唱には歌詞に対する理解が不可欠。そのために色々調べたのですが、要は、我々の金剛山が自由万民を呼んでいるという内容です。上記の記事には「北朝鮮の全観衆が立ち上がって拍手した」とありますが、ホントかな?パン先生は「歌詞を変更してから、北朝鮮でも歌われるようになった」と話しておられました。

読めば読むほど意味深長な内容ともとれますが、今や韓国を代表する歌曲です。ドミンゴやパバロッティになったつもりで、明るく美しく歌いましょう。

 

ソウルセントラル男声合唱団による演奏

ベルリン放送交響合唱団による演奏

チョ スミ氏による独唱

 

余談になりますが、韓国に滞在されている日本人の方のために、トリビアをいくつか。

金剛山は日本時代から著名な観光地でした。かっては、朝鮮半島で初めての電車である金剛山電気鉄道が敷設され、1926年、金剛山を訪れたスエーデン国王グスタフ6世は、その美しさに感嘆し、「神様が世界を創造されたとき、1日は金剛山を造られるために使ったはずだ。」と言われたとのことです。名前からも分るように仏教と深い関係があり、高麗時代には大小180を超える寺院があったとのこと。ところが、儒教を重んじた李氏朝鮮時代の仏教抑圧で4つ(金剛山4大寺, 금강산 4대 사찰)に減り、その4大寺院も朝鮮戦争で大部分が破壊されました。

金剛山の自然美は今も健在とのことですが、目につく岩石や岸壁に北朝鮮の為政者を讃える文言が赤い文字で刻み込まれているとのことです。南北が統一された暁には、本来の景観の復元について議論されると思いますが、岩石や岩盤に文言を刻み込む行為そのものは半島古来の伝統で、北朝鮮の専売特許(?)ではありません。韓国でも景勝地に行けば、いにしえの文人が残した即興の漢詩とか、その地にまつわるロマンチックな愛の伝説とか.....いろいろあります。もっとも、それなら風情があるんですけど......

実のところ金剛山は韓国に近く、軍事境界線からの距離は20kmばかりです。韓国を代表する山を3つ挙げよ、というと、多くの人は漢拏山(ハラサン、1,950m)、智異山(チリサン、1,915m)、そして雪岳山(ソラクサン、1,708m)を挙げるでしょう。多くの韓国人から聞いた話によれば、かつて雪岳山は、金剛山への玄関口で「格下」の存在であったとのこと。高麗王朝の首都でもあった古都、開城(ケソン)と並び、朝鮮戦争の時にもう少し頑張っていれば韓国の領土になっていたのに、と惜しむ声を何度も聞きました。

そんな心情も含めて、改めて歌詞を読みなおすと、ウーン....。重い歌詞ですねえ......。最近、統一がらみのイベントがあると必ずといってもいいほど、頻繁に歌われる曲です。どうか心をこめて、歌い上げてください。

金剛山4大寺院(금강산 4대 사찰)

表訓寺(ピョフン寺、표훈사 現存)

長安寺(チャンアン寺、장안사 焼失)

神溪寺(シンゲ寺、신계사 焼失)

楡岾寺(ユジョム寺、유점사 焼失)

ありし日の金剛山電気鉄道

金剛山電気鉄道の内部。何となく阪急京都線の特急電車みたいな雰囲気ですね。これに乗って、金剛山観光に行きたかったです。


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