ヤスパースの「魔法」経験
2023年01月14日(土) 16時09分19秒
きょう訳した処(ヤスパース『哲学』第三巻112頁「昼の法則と夜への情熱」中):
《 魔物は、実存の現象が、実存自身の超越者のなかで溶けるに任せる。〔この場合〕実存は自らの運命を求めてはいなのである。既に子供は苦痛に満ちた魔法を知覚することが出来、この魔法を放射することさえ出来る。その場合この魔法は諸々の変化〔の現象〕を起こすにちがいないものであり、これらの変化を子供は自ら成熟した〔精神〕段階になっても、否定も肯定もしないで、理解できないながらも受け入れているのである。運命の成り行きは、魔物に従った実存が、〔運命の〕路の途上で、知っても欲してもいないような無慈悲で非情なものの中に陥るに任せる〔ことがある〕。実存は、容赦のない必然性を経験し、この必然性を実存は、蒙るのと同じ位、〔自ら〕作りもするのである。(つづく)》
ヤスパースは、マルセルの魔法的世界を、子供期の不思議経験に遡って知っており、さらに、集合的容喙現象の無慈悲な不可解さまで知っていたように思われる。想像以上に深い人生経験をしていると思わざるをえない。やはり精神病理学者だ。