まど

細く開いた窓を覗いてみると、そこにはNikonD70Sを前に困惑している女がひとり・・・

さようなら、銀河。

2008-03-14 23:36:53 | Weblog

間もなく午後11時、寝台特急「銀河」が東京駅を出発、最後の旅に出るそうです。

 

はるかな昔、夜中の京都駅から寝台に乗ったことがあった。
何故わざわざ寝台列車に乗ったかというと、目一杯京都にいたかったのと、若くてお金がなかったので、少しでも安いほうが良かったからだ。

今、娘がちょうど同じ年頃だが、彼女たちが寝台列車に一人で乗るなどど言ったら、「やめなさいっっ!」となるのだが、私の場合、止めてくれる人がいなかった。
当時父は仕事で家を空けており、祖母と母ときたら寝台列車などに乗ったことなどなく、二十歳そこそこの娘が一人で乗るものではない、ということを知らなかったのだ。
もちろん、当の本人である私も。

京都駅出発は午前0時をまわるので、それまでどこに居ようか。
実際に日が暮れてから、私は途方に暮れた。

駅前で一番遅くまで営業している喫茶店は10時まで。
今ならもっと遅くまで営業している店があるのだろうが、なにせ20年以上も前のことだ。
それ以降は駅の待合室で過ごすしかなさそうだ。
夜行以外の電車はどんどん最終が出てゆき、あとは夜行に乗る乗客ばかりが残る。
私くらいの年齢の人は殆どいない。女性もカタギに見えるような人はいない。
私は女で、半分子どもで、カタギである。
やばい・・・・・・。
しかし、なめられてはまずいし、家出娘に間違われてもコトだ。
私は「寝台列車なんか、乗りなれてます~。旅行の足はいつもコレだもん。」と顔にかいてあるように見えるよう、精一杯の虚勢を張った。

やがて時計は0時をまわり、緊張の時は過ぎた。寝台列車に乗り込む。
・・・・・・、オッサンばっかりじゃん!(当たり前だ)
新しい緊張感よ、ようこそ~。
誰も話しかけるなよオーラを暴発しながらきっちりカーテンをひく。
自分で、播いた種は自分で刈り取らなくてはならぬ。朝まで頑張るんだ!

でも、わりとちゃんと寝たのよ。なんちゅう度胸。

やがて、朝が来て、小田原駅に降り立ったときの嬉しさ。
あとは勝手知ったる小田急線、目をつぶっていても帰れる。
この話を祖母と母は知らない。言えませんて!

私の乗った列車はなんだったのだろう。
調べてみたら、昭和55年当時、大阪発23時10分東京行き寝台急行「銀河」というのがある。私が京都に行ったのは昭和55年ではないので、多少のダイヤ変更があったのかもしれないし、銀河ではなかったかもしれない。
昔は寝台列車の数も多かった。
時の流れとともに寝台列車はゴージャスになり、私のように節約目的で乗る列車ではなくなった。

あ、いつの間にか11時がすぎ、もう銀河が東京を離れたな。
東京駅ではさぞかし大勢の鉄男くんたちが見送ったことだろう。

 

 

今、横浜、大船間を走っているそうです。そこ、神奈川県はわたしが青春時代を過ごしたところですよ。
さようなら、銀河。


持ち合わせのない記憶を揺さぶられる!

2008-03-14 13:08:43 | Weblog

展示開始を指折り数えて待っていた、川瀬巴水の版画、見て来ました。

http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/about/josetsu/dai2/2008/0219/0219.html

一瞬、「写真は負けた、こんなに実物以上に美しく光と水の表現ができるのなら、写真という手法はいらない」と思った・・・・。

写真は実際あるものを与えられた条件の中でどう切り取るか、限られた手法で無限の表現を模索するのだから、負けたと思っちゃいかんのだ、と思いなおしましたが・・・・。
ここで、もっと写真の擁護が出来ればよいのですが、なにせ、まだ私が写真の素晴らしさを得るに至らないので仕方ありません。

 

展示作品は「江戸東京博物館」ですから、東京の風景です。

原画と版画、なかには試摺りまで並んでいるものもあって、その対比もおもしろく、倍楽しめます。
肉筆をこれだけ描けるのに、なんでわざわざ版画?となりそうですが、版画には版画の素晴らしさがあるのだということを思い知らせてくれます。
クリアな光を表現するとき、原画はどうしても濁りが生じるのは、絵の具が混じるためでしょうか。
上の「神田明神境内」ではちょっとそれがわかりにくい(これは雲の表現の違いですから)のですが、展示作品のなかに明け方・夕暮れの空を描いたものが数点あり、空気の清明さまで感じられるようでした。
ふっふっふ、わざと載せていません。
実際に見に行って初めて見る喜びを味わえますように!

 

1920年頃の東京、私は勿論のこと、親だってこの世に影もかたちもありません。
だのに、この懐かしさ。

ロートレックのときも感じたのですが、絵には客観的に見られる絵とその空間へ連れて行ってくれる絵がある。
ロートレックは写実っぽくはないけど、あっと言う間にパリへ連れて行ってくれる。
川瀬巴水は大正から昭和初期の東京に連れていってくれます。
持ち合わせていない記憶を揺り動かされるという不思議な、でも幸せな感覚を是非味わって下さい。

ただし、出来れば平日に。
常設展の中にある部屋で展示されているので、一歩部屋を出るとワルガキたちが遊園地と間違えて走りまわっています。こらっ!

 

追加。
会期が終わりましたので、図録の一部を追加します。
もとの図が小さいので奇麗に出ませんでしたが、雰囲気だけでも。