親子で街デビュープロジェクト

親子で街デビュープロジェクトは、子育て世帯と商店街が交流することから始まる新しい消費者参加型の商店街活性化を目指します。

【坪田知己さんの寄稿から】「共感社会」を創りたい ・・・コトバノチカラを知ったママさんパワーで・・・

2012年04月06日 | @和田商店街

文章講座の盛り上がりを受けて、講師を務めてくださった坪田知己さんから熱い原稿をいただいておりました。

プロジェクトの実行委員を務めてくださったマドレボニータ東高円寺クラスを主宰されている白石あすかさんが描いた「和田商店街の街並み」イラストとともにご鑑賞ください

「共感社会」を創りたい

・・・コトバノチカラを知ったママさんパワーで・・・

2012/3/13 坪田知己

 

 リーマンショック、中東の春、東日本大震災・・・世界がいま、曲がり角に立っている。市場原理主義、効率一辺倒の社会から、絆を大事に、人間らしく生きる時代へと。

 新しい時代へのテーマは「共感」だ。そのベースとして、コミュニケーション(言葉)を豊かにすることが肝心だ。その小さな入口に立って、20年後を夢見た。

 

 文章講座が成功した

 

3月12日、第3回目の杉並区和田での文章講座が終了した。

2月13日に第1回を開いてから、この講座はエキサイティングだった。

狙いは、東京・杉並区の和田商店街を活性化するため、商店の魅力を紹介する新聞を作ろうということだった。

毎回6-8人のママさんたちが参加してくれた。

この講座は、私の事前予想をはるかに上回る盛り上がりになった。

主に産休中のママさんたちは知的刺激に飢えていた。 

  

文章を書いても、それが上手か下手かもわからない。伝えたいことがあっても、それを形にできないもどかしさ・・・文章講座はその闇を払った。

「こう書けばいい」「私にはこういうセンスがあるんだ」という気付きと自信が生まれた。

「もっと書いてみたい」「伝える面白さがわかった」。

私へのメールやtwitterに書かれたメッセージに、そのワクワクした気持ちが出ていた。

 

ママさんの力を街の力へ

 

和田の文章講座のきっかけは、川崎市・新丸子で商店街振興のプロジェクトに関わっている西本則子さんと昨年夏に出会ったことだ。私は秋に渋谷区代官山で文章講座を開いた。新丸子では同僚の宮島真希子が講師になって開いた。いずれも大好評だった。

和田で進行中の「親子で街デビュープロジェクト」は、ママさんたちが子供と一緒に商店街に足を運ぶことで、商店街の活性化をしようというもの。

従来の商店街振興は、商店会が中心になってイベントをやったり、アーケードなどの設備をつくるというものだった。つまり、店主とお客さんの2者関係だった。供給側と需要側とがはっきり分かれていた。

ところが親子で街デビューは、そこにママさんたちが入ることで、供給と需要の橋渡しをしようというものだった。

西本さんは、それにはママさんたちのコミュニケーション能力の向上が必須だと考え、私に声をかけたのだった。

この商店街活性化の発想は、だれも考え付かなかったものだった。

 

面白さを知ったママさんたち

 

 文章講座の最終は、ママさんたちが商店街に出て、店主にインタビューするというもの。和田商店街でも、食料品店、洋品店、銭湯、楽器屋などが取材対象になった。

 取材を終えたママさんたちは、目をキラキラ輝かせていた。

 食料品店の奥さんから「一生分どころか二生分働いた」という話を聞き、洋品店では「お客さんの顔を思い浮かべながら仕入れをする」という話を聞いた。

 

 「安い」を前面に出したスーパーに対して、古い商店には、長年受け継がれたこだわりがあり、お客さんを思う心がある。世の中が「心よりお金」に流れていった結果、商店街は寂れてしまった。

 でも、高齢化・少子化の中で、私たちが取り戻さなければならないのは、その「心」ではないか。

 商店もチラシを作ったり、無料誌に広告を載せたりする。長年の慣習となったそのことは、消費者の心を動かさない。注目されるのは値段だけだ。

 「心を伝える」――コミュニケーションはそのためにある。大量宣伝のために流される広告のコピーは「心」を伝えない。

 本来、消費者であるママさんたち。子供たちが地域の中で心豊かに育ってほしいと願っている。子育てにはいろんな人の助けが必要だし、お返しもしなければならない。

 そういうママさんたちが、商店主の心に「窓」を作った。それが文章教室の成果だった。

 

 心の通う商店街と地域へ

 

和田の文章講座は、次に「新聞0号を作ろう」のステップに進む。商店街の魅力を伝える新聞を、ママのセンスで作ろうというのだ。

これは、在来の無料紙(フリーペーパー)ではない。ビジネスになるかどうかもわからない。ただママさんたちは、自分たちが発見した「心」を商店街の人たち、地域の人たちに知ってもらいたいのだ。

私は自分のことを「メディアデザイナー」と名乗っている。それは、新しい時代のメディアデザインが必要だからだ。新聞やテレビのビジネスモデルは衰退に向かっている。ネットを主役にした新しいメディアが成功するかどうかは、「心」を乗せられるかどうか・・・だと思う。そういう意味で、今回の挑戦では「メディア」は「ママさんたち」だったわけだ。つまりメディアデザインとは、私の中では「人間づくり」と同義語だ。

 

和田の文章講座が盛り上がった原因は、「文章にはお手本がない」ということを私が強調したし、受講したママさんたちがしっかりと理解したからだ。

新聞記者やコピーライターは「こういうのが上手な文章だ」と、彼らの基準を押し付ける。そんなのは大ウソだ。

「上手な文章」は他人の基準に自分を直していくことではない。自分自身の思い、センスをストレートに伝わるように、「自分の文章」を磨くことであって、それ以外に文章が上達する道はない・・・と、私は断言した。

貴女は夏目漱石になれない、逆に、夏目漱石も貴女になれない・・・だから、誰もが名文家になるチャンスを平等に与えられている。

 

日本を変えよう

 

 少子・高齢化、アジア各国からの経済の追い上げ、震災復興――今の日本は難題だらけだ。しかし、必ず道はある。

 震災の時、略奪も暴動も起きなかった。被災者は辛さをじっとこらえ、被災地に多くのボランティアが入った。世界中がこれに驚嘆した。

 つながりを大事にする、礼儀正しい人々・・・それこそがこの国の財産だ。欧米流の拝金主義から目覚めて、「ありがとう」「一緒にがんばろう」の気持ちを取り戻さなければならない。それが「共感社会」だ。

 親子で街デビュープロジェクトは、「これからの日本はこうあるべきだ」というモデルを作るスタート地点にいる。

 いままでの常識を振り捨てて、本当に大事なものを見つめなおし、人と人の心を丁寧に結んで、「すべては和田のママさんたちから始まった」と言われるような、成果を出していきたい。

 20年後、子供たちが大人になって、笑顔がはじけ、声をかけあう商店街が地域の中心にしっかりと存在している・・・それを演出したい。

 


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