ハンナのかばん

2005-02-14 20:43:54 | 物語
第二次世界大戦中、アウシュビッツのガス室で
13年の生涯をおえたハンナ・ブレイディ。
半世紀後、偶然、ハンナが残した旅行かばんと
日本でであった、石岡ふみ子。
ハンナはどんな少女だったのだろう・・・・・?
どんな家族にかこまれ、どんな生涯をおくったのだろう?
そして、少女に何がおきたのだろう?
ふみ子のハンナ探しがはじまった。


ナチスのユダヤ人大量虐殺・・・
ホロコーストの歴史の犠牲になったユダヤ人少女をめぐって、
日本に住んでる一人の女性とボランティアグループ『小さなつばさ』の子供たち、
カナダに住んでいる老人とを結びつけた話です。


東京にある『ホロコースト資料館』の所長石岡ふみ子さん
一つの古い旅行カバンをもって全国の小学校を回っています。
ハンナのカバンにまつわる話で、子供たちの中から
いじめや差別をなくすきっかけになればと全国を回ってるそうです。

資料館を訪れる子供たちからこのカバンの持ち主について
いろいろ聞かれた事がきっかけで、少女について現地にまで行き調べました。


ハンナは3つ年上の兄と家族と一緒にチェコスロバキアのノブ・メストで平和に暮らしてました。
しかしヒトラーがナチスの首相になり、ユダヤ人迫害が始まります。
ユダヤ人を差別する法律が出来、公務員職からも追放され、市民権も奪われます。
ドイツ全土でユダヤ人教会や商店に火がつけられ破壊されます。
ユダヤ人はスポーツ競技場・映画館・劇場にも立ち入り禁止。
チェコのユダヤ人においては夜間の外出禁止・通学禁止になります。

ハンナの家族にも手がのび、母親が逮捕され立て続けに父親も逮捕。
ハンナ兄妹は叔父夫婦に預けられます。
ところが、ハンナと兄ジョージもテレジン収容所に送られてしまいます。

小さいハンナは収容所で同じ年頃の子供たちから可愛がられますが、
心の支えでもある大好きな兄とも離されてしまいます。
その後半年の間に、両親がアウシュビッツ(死の収容所)に送られ殺さてしまいます。

兄もアウシュビッツに送られる事が決まり、ハンナは寂しさでいっぱいになりますが、
兄ジョージの“必ずお前を連れて帰るって、父さんと母さんに約束したんだ。
 お兄ちゃんは必ず約束を守るよ。また家族みんなで暮らすんだ”
 
の言葉を信じて頑張ります。
兄ジョージがアウシュビッツに送られた一ヵ月後、とうとうハンナも死の収容所に。

ハンナは翌日のアウシュビッツの出発のため、カバンに荷物を詰め込みます。
兄との再会に胸を躍らせますが、その夜がハンナの最後の夜でした。


ふみ子さんは、日本の子供たちにハンナのことを伝えるために
何か資料が無いかとテレジン収容者博物館を訪ねました。
そこで、テレジン収容所からアウシュビッツに送られた約9万人の名前が載っている
名簿に出会う事が出来、収容者リストの中にハンナと
彼女の兄らしき人物の名前を見つける事が出来ました。
なんとその兄はホロコーストを生きのびてることがわかりました。

現在、ジョージ・ブレンディさんはカナダでご家族と一緒に幸せに暮らしているとの事。

ふみ子さんは早速日本に帰り、『小さなつばさ』の子供たちに
その事を伝えると、ブレンディさんにみんなで手紙をかきました。

日本にハンナのかばんがあること。
ハンナがどんな少女だったのか、どんなことを夢見ていたのか、
幸せだった日々の事を日本の子供たちに教えて欲しい。
ハンナの写真が残っていれば、貸して欲しい。
一人でも多くの子供たちにハンナの事を伝えて、
平和について考えてもらいたい。

ブレンディさんから返事が来て中からハンナの写真もでてきました。

手紙にはハンナが家族に愛されて幸せな日々をすごしていた事や
ブレンディさん自身も、今はカナダで子供や孫たちに囲まれて
幸せに暮らしている事などが書かれていました。

そして遂に、ブレンディさんが17歳の娘ララ・ハンナさんと一緒に
日本にやってくることが実現したのです。
そこでブレンディさんは57年ぶりに妹ハンナのかばんと再会できました。

もしかしたら、学校の先生になりたいと思っていたハンナの夢が
今ここで叶ったのかもしれないとブレンディさんは思いました。
ハンナの13年という短い一生を通して、人種が違えども
同じ人間としてお互いを尊重し認め、思いやりの心を持つという
大切なことを子どもたちは学んでくれてるのかもしれないと。

妹との約束は結果的には守れませんでしたが、
こうやってまたハンナのかばんに出会えたというのは
奇跡にも近いものだと思います。
それだけハンナの家族と一緒にまた暮らしたいという
願いが強かったのかもしれません。


ブレンディさんと娘のララ・ハンナさんは、広島にも訪れ
子供たちや先生たちに、妹ハンナの思い出話を語りました。
そして、ハンナのかばんは今も旅を続けています。