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グッドナイト・スリイプタイト

2008-12-28 | 観たものレビュー
三谷幸喜さんの新作舞台は2人芝居。
今日が楽日でしたね。三谷さんも舞台に上がったのかな?

さて。
主役の二人は中井貴一さんと三谷カンパニーの常連、戸田恵子さん。

今回の作品は、ある1組の夫婦の別れと出会いまでを描いたラブストーリーです。
ここで、あえて「出会いと別れまで」としないのはもちろん理由があります。

にしても、「コメディ作家の三谷さんがラブストーリー?!」などと言うなかれ。
笑いと涙の絶妙なバランスはそのままに、そのラストシーンに思わず心がキュンと切なくなってしまう、上質のラブストーリーが舞台上で展開していました。

脚本の妙と役者の技量が生み出した、ごくシンプルなストーリーなのに、一つ一つの台詞が観る側の心の琴線に響く、普通なのにドラマチックな舞台。

年の瀬にこんなすばらしい舞台を最後に観ることが出来たことは、本当にラッキーだと思いました。

ストーリーは、いきなり二人の別れのシーンから始まります。
舞台上には電光掲示板で「10220」の文字。
舞台上にはベッドが2つ、舞台の端と端に離れて置かれています。

結婚してから28年目の別れ。
荷物をまとめて出て行く準備を淡々と進める妻。
妻が分別した荷物の中から、二人の思い出の品を見つけて、そのときのことを話そうとする夫。
ぜんぜん覚えていない、と冷ややかな態度の妻。
二人の楽しかった思い出をなんとか思い出してもらおうと必死な夫。

暗転後、舞台は新婚旅行先のタヒチのコテージにと変化します。
2つのベッドが、それぞれのシーンにおける2人の関係に応じて、離れたり、近づいたり、くっついたり、2人の状況がわかりやすくて非常に面白い。

若い頃から28年後までの夫婦を演じる中井さんと戸田さんがとにかく見事。
時間の推移にまったく違和感を覚えることがなかったです。

現在と過去を交互に行き来しながら、ストーリーは「なぜ2人が別れることになったのか」を明らかにしながら、でも行き着く先はそこではないんですよね。
最後にたどり着くのは、幸せの頂点にいた頃の二人。
そのときに、ストーリーの途中で「なぞ」とされていたこともすべて明らかになるわけです。

何かしまってあるらしい宝石箱のダイヤル式暗証番号
もしも二人が別れることになったら、その最後の夜にしようと誓った約束

ああ、そうだったのか、とそこでようやく合点がいくわけです。
暗証番号のヒントなのだろうとは検討がついていたけど、なんだかさっぱり分からなかった別れの日の妻の鼻歌。
二人が別れる最後の夜に愛し合おうと無邪気に言う若い妻。
その可愛い姿に皮肉な未来の結末を思い、胸がキュンとさせられました。

ラストシーンのせつなさに思わずまぶたの裏が熱くなりました。
でもそれと同時に、心の奥がふわっと温かくなったのです。

なんでもないことの積み重ね
笑ったり、怒ったり、泣いたり、悩んだり
相手が発した些細な一言にすごく傷ついたり
それでも自分の本音をごまかしたり
自分をころしてひたすら我慢したり

本当に淡々とした日々の中に、思いもしないドラマチックな出来事が隠されていたりするんですよね。

「毎日が同じでつまらない」

という人は、本当にそうなんでしょうか。
まあ、私もそんな気持ちになることがないわけじゃないですが。
毎日同じ人生なんて、そんなことのほうが難しいし、基本的に不可能です。
朝、起きたときの調子だって毎日微妙に違っていたりします。
そして、そのときの体調で1日が左右されることだってあります。

きっと誰もが大なり小なりドラマチックな人生を送っているんですよね、ということを感じた舞台でした。



そう、私だって、私なりに、ちっちゃいけれどドラマチックな人生をリアルに生きているんですよ(笑)