新刊の森

人文分野を中心に、できるだけその日に刊行された面白そうな新刊を、毎日三冊ずつ紹介します。役立ちそうなレシピにも注目。

アーレントとともにアイヒマン裁判を傍聴していた村松の「新版 ナチズムとユダヤ人 アイヒマンの人間像」

2018年11月10日 | 新刊書
新版 ナチズムとユダヤ人 アイヒマンの人間像 (角川新書)
著者 : 村松剛
KADOKAWA (2018年11月10日発売)


====作品紹介・あらすじ
アイヒマン裁判を、ハンナ・アーレントらと共に傍聴していた「日本人」作家がいた!
裁判の現場にいた著者による、生々しき傍聴記とアイヒマンの評論。
絶対に許してはならない優生思想と排外主義。その負の歴史を語り継ぐために、当時ベストセラーとなった本書を復刊する。

人類史に残る、恐るべきナチスによるユダヤ人絶滅計画。
その実態と、その背景にある思想は何か、またこの計画の実際的推進者であったアイヒマンの思想はどのようにして形成されたのか。
当時、イスラエルに赴いてアイヒマン裁判を直に傍聴してきた著者が、この謎に独自の光をあてたものである。
まだハンナ・アーレントが著名になる前、裁判の翌年(1962年)に刊行された本書には、「凡庸な悪・アイヒマン」と、裁判の生々しき様子が描かれている。
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アーレントの「イエルサレムのアイヒマン」はすっかり有名になったが
アーレントとともに村松が裁判を傍聴していたのは知らなかった。
どのような見地から「凡庸な悪」が語られているのか、ぜひ確認してみたい。




ジェンダー論の必読書「他者の影――ジェンダーの戦争はなぜ終わらないのか」

2018年11月10日 | 新刊書
他者の影――ジェンダーの戦争はなぜ終わらないのか
著者 : ジェシカ・ベンジャミン
制作 : 北村 婦美
みすず書房 (2018年11月10日発売)


====作品紹介・あらすじ
〈他者は「私」の影でしかないのでも、「私」が他者の影でしかないのでもない。他者はその人自身の影を持つ、もう一人の人間なのだ〉
フロイトのエディプス・コンプレックス論にも見られるとおり、草創期の精神分析では、男性を主体(=能動)とし、女性を客体(=受動)とする構図で理論が積み上げられた。しかし、時代とともに女性をとりまく環境と女性のあり方が変化し、フロイトの女性論は今日まで多くの対立を生んできた。
ベンジャミンはこうした精神分析の男性中心主義の乗り越えに、女性固有の優位点を謳い上げ、女性の権利を振りかざすことはない。問題の根源は、精神分析の「一人の人間がどのように環境や周囲の人間を利用し、うまく折り合いをつけ、最終的に自分の欲望を満たすか」という一者心理学的な基本姿勢にあるのである。
フロイトの女性論、そしてそれに向けられたフェミニズム思想の批判的言説を再検討し、対立を乗り越える共通の基盤を切り開く。精神分析における「ジェンダーの戦争」の終結への序章となる重要書。
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「愛の拘束」(青土社 , 1996.5)の訳書のあるジェシカ・ベンジャミンの二冊目の訳書。
「愛の拘束」は精神分析の立場から人間の愛について掘り下げた好著だった。
精神分析によって「ジェンダー戦争」が終わるとも思えないが、この問題に関心のある人には、必読書だろう。



つい読みたくなる三浦しをんのエッセイ集「お友だちからお願いします」

2018年11月10日 | 新刊書
お友だちからお願いします (だいわ文庫)
著者 : 三浦しをん
大和書房 (2018年11月10日発売)


ダ・ヴィンチの紹介インタビューがよく内容を表している。
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さて、早速ページを開いてみよう。まずは、『お友だちからお願いします』から。エッセイ集は意外なことに3年ぶり。『人生激場』など数々の名著を世に送り出し、現代を代表するエッセイストの一人でもある三浦だが、今回は少し逡巡があった。
「エッセイは難しいなと改めて思いました。以前はあまり何も考えずに書いていたんですが。今はネット文化も発達して、日常を綴った文章は巷にあふれている。敢えてお金を出して読んでいただくほどの価値が私のエッセイにあるのか? そのジャッジがすごく難しいですよね。まあ、私は自分に対するジャッジはユルユルなので本にしちゃったわけですが(笑)」

 ユルユルなんてとんでもない。世の中の隠れたマナーや三浦流の旅行のこだわりなど、厳選されたネタばかりが盛りだくさんに並んでいる。本人曰く、コンセプトは“よそゆき仕様”!
「新聞などに掲載されたものを集めているので、当時の読者層に合わせてオタク話は少し控えめだったりします。でも結局、以前とあまり変わらない仕上がりですね。いつもシモがかったこと考えてるし(笑)」 

 このエッセイ集、電車の中で読んだら危険だ。絶対に爆笑を抑えられない。保阪尚希を知らないという女子大生の会話に自らの加齢を実感し、世にはびこる相づち“そうなんですね”の功罪を考察。『THEワイド』観たさに蕎麦屋を行脚する……。ヴィゴ・モーテンセンへの恋など、おなじみの“妄想”も健在だ。“私も!”と激しく共感し、同時に“なるほど!”と鋭い視点に感心する。三浦作品は初めてという人にも読みやすく、以前からのファンにも愛される。そんな美味しい一冊なのだ。
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三浦しをんの小説はどれも読みやすく、楽しいものだし
エッセイ集もぜひ読んでみたい。