新刊の森

人文分野を中心に、できるだけその日に刊行された面白そうな新刊を、毎日三冊ずつ紹介します。役立ちそうなレシピにも注目。

「クルアーン:神の言葉を誰が聞くのか」

2018年11月18日 | 新刊書
クルアーン:神の言葉を誰が聞くのか (世界を読み解く一冊の本)
著者 : 大川玲子


「コーラン」は奇跡のようにして生まれ
奇跡のように人々の信仰心に訴えかけた書物ですが
イスラム圏の外部の人々にとってはなかなか近づきにくい本です。
本書は作者論と読者論の観点からこの問題に取り組む興味深い著作です。
「世界を読み解く一冊の本」という新しいシリーズも楽しみですね。



単行本: 216ページ
出版社: 慶應義塾大学出版会 (2018/11/17)
言語: 日本語
ISBN-10: 4766425553
ISBN-13: 978-4766425550


作品紹介・あらすじ
▼シリーズ「世界を読み解く一冊の本」(第1期・全10巻)、第二弾!

生きている聖典にふれる
極めて難解とされるイスラームの聖典『クルアーン』。
ではどう読めばよいのか? 
聖典を読む困難と楽しさを、丁寧に解説。
信徒のみならず、人類にとっての「聖典」となる可能性を問う

紹介
▼シリーズ「世界を読み解く一冊の本」(第1期・全10巻)、第二弾!

生きている聖典にふれる
極めて難解とされるイスラームの聖典『クルアーン』。
ではどう読めばよいのか? 
聖典を読む困難と楽しさを、丁寧に解説。
信徒のみならず、人類にとっての「聖典」となる可能性を問う。

目次
序 この聖典は誰のもの?

生きている書物
誰がクルアーンを読むのか――読者のタイプの六分類
本書の目指すこと

Ⅰ 「作者」は神か人か?

1  「作者」をめぐって――ムスリムと非ムスリムの間
 「聖典」としてのクルアーン
 ムスリムからみたムハンマドの生涯
 神の声を聞く
 ヒジュラ(聖遷)――メッカからメディナへ
 啓示が下された状況
 身の回りの状況の反映
 非ムスリムにとってのムハンマド
 ムハンマドの同時代人
 神の言葉の「創造」という神学問題の難しさ
2 議論を生む書物としての成立と展開
 ムスリム伝承の伝える編纂経緯
 「ウスマーン版」の誕生
 クルアーン編纂の研究史
 初期の写本を読み解く
 書承媒体の変遷││
 写本から印刷、そしてデジタルへ
 印刷はヨーロッパから
3 異文化との邂逅――翻訳と受容
 「翻訳」の是非
 西洋諸言語への翻訳
 アジア諸言語への翻訳
 日本語への翻訳
 西洋社会と日本社会での受容

Ⅱ 生の言葉による「説得」

1 生なまの言葉が訴えること
 構成と文体
 クルアーンは退屈か?
 言葉の「まとまり」として読む
 飲酒は完全に禁止?
 クルアーンの章構成
 散文と韻文の間
 メディナ期の文体の特徴
 頻繁に変化する人称
 井筒俊彦のクルアーン研究の意義
 ムスリム側からの学問アプローチ
 クルアーンの主要なテーマ
 唯一神アッラー
 九九の美称をもつ神
 ムハンマド以前の預言者たち
 預言者たちが遣わされた理由
 ムハンマドの周囲の人物たち
2 「神の言葉」が開いたもの
 格差社会メッカから平等社会メディナへ
 努力としてのジハードと戦闘の容認
 ユダヤ教徒・キリスト教徒をどう認めるか
 アラビア語とクルアーンの相関関係
 クルアーンから展開する諸思想潮流
 イスラーム神学――神をどう把握するか
 イスラーム法学――神にしたがって生きる
 イスラーム神秘主義――神を心の内面で体得する

Ⅲ  「説得」から「共有」へ――二元論を超えて

1 「説得」のための時間軸
 警告と吉報
 アッラーによる天地創造
 来世のための現世――人はどう生きるべきか
 男女の関係性
 飲食などの禁止規定
 戦闘とジハード
 終末から来世へ
2 今なお解釈される書物として
 前近代のクルアーン解釈(タフスィール)
 伝承によるクルアーン解釈
 シーア派のクルアーン解釈
 個人見解によるクルアーン解釈
 スーフィー的クルアーン解釈
 近代以降のタフスィール――科学的思考とイスラーム主義
 英国支配下のエジプトとインド
 科学的クルアーン解釈
 文学的クルアーン解釈
 イスラーム主義的クルアーン解釈
 現代のクルアーン解釈――西洋文明の影響下で
3 見るクルアーン、聞くクルアーン
 日々のなかのクルアーン
 芸術作品のなかで



参考文献

著者プロフィール
大川 玲子 (オオカワ レイコ) (著/文)
大川 玲子
明治学院大学国際学部教授。イスラーム思想専攻。
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(学術)。
著作に、『イスラーム化する世界』(平凡社新書、2013年)、『イスラームにおける運命と啓示』(晃洋書房、2009年)などがある。

大川 玲子さんには次のような著作があります。

■チャムパ王国とイスラーム : カンボジアにおける離散民のアイデンティティ
大川玲子著
平凡社 2017.2
■イスラーム化する世界 : グローバリゼーション時代の宗教
大川玲子著
平凡社 2013.5 平凡社新書 682
■イスラーム基本練習帳
造事務所編著
大和書房 2013.8
■歴史と現在
原武史編 ; 高橋源一郎 [ほか述]
河出書房新社 2012.5 明治学院大学国際学部付属研究所公開セミナー 4
■イスラームにおける運命と啓示 : クルアーン解釈書に見られる「天の書」概念をめぐって
大川玲子著
晃洋書房 2009.3
■図解これだけは知っておきたいコーラン入門
島崎晋著
洋泉社 2007.6
■コーラン
マイケル・クック [著] ; 大川玲子訳
岩波書店 2005.9 1冊でわかる
■図説コーランの世界 : 写本の歴史と美のすべて
大川玲子著
河出書房新社 2005.3 ふくろうの本
■聖典「クルアーン」の思想 : イスラームの世界観
大川玲子著

わたちたちの思考を制約する言葉についての考察「考えるための日本語入門」

2018年11月18日 | 新刊書
考えるための日本語入門
著者 : 井崎正敏


わたしたちは言葉を使わなければ考えることができません。
そしてわたしたちにとっては言葉とは日本語であり、わたしたちの思考は日本語で作られています(ほとんどの人にとってはですが)。
そんなわたしたちの思考を日本語という言葉の固有性がどのように影響しているのかということは
重要な問題ですがあまり検討されたことはありません。
もしかしたら、日本語の特性のために、わたしたちの思考は大きく制約されているかもしれませんし
あるいは隠れた優位をもっているかもしれません。
これまであまり考えられてこなかったこの問題に、この書物は取り組むようです。



三省堂 (2018年11月16日発売)
本 (228ページ) / ISBN・EAN: 9784385360973


作品紹介・あらすじ
日本語で考えるとは、具体的に日本語の文法とどういうふうにかかわりあうことなのだろうか。「そこ」と「それ」、助詞の「は」や「が」などをキーワードに、思考という観点から日本語の文法構造を探究する試み。

著者プロフィール
批評家。
一九四七年東京生まれ。東京大学文学部倫理学科卒業後、筑摩書房に入社。同社編集部長などを経て、批評活動に入る。
主な著書『天皇と日本人の課題』『ナショナリズムの練習問題』(洋泉社)『倫理としてのメディア』(NTT出版)『〈戦争〉と〈国家〉の語りかた』(言視舎)他


井崎正敏さんには次のような著書があります。


■吉田松陰 : 幽室の根源的思考
井崎正敏著
言視舎 2015.4 言視舎評伝選
■「戦争」と「国家」の語りかた : 戦後思想はどこで間違えたのか
井崎正敏著
言視舎 2013.11 飢餓陣営叢書, 6
■書物の現場
白百合女子大学言語・文学研究センター編 ; 篠田勝英責任編集 ; 津野海太郎 [ほか執筆]
弘学社 2013.11 アウリオン叢書 / 白百合女子大学言語・文学研究センター編, 12
■「考える」とはどういうことか? : 思考・論理・倫理・レトリック
井崎正敏著
洋泉社 2008.4
■倫理としてのメディア : 公共性の装置へ
井崎正敏著
NTT出版 2006.7
■ナショナリズムの練習問題
井崎正敏著
洋泉社 2005.4 新書y, 132
■天皇と日本人の課題
井崎正敏著
洋泉社 2003.9 新書y, 094
■天皇の戦争責任・再考
池田清彦 [ほか] 著
洋泉社 2003.7 新書y, 090

歴史の宝船を掘り当てる「海底に眠る蒙古襲来: 水中考古学の挑戦」

2018年11月18日 | 新刊書
海底に眠る蒙古襲来: 水中考古学の挑戦 (歴史文化ライブラリー 478) 単行本 – 2018/11/16
池田 榮史 (著)


蒙古襲来との関連では今年の夏に、アニメ「アンゴルモア 元寇合戦記」で楽しませてもらいましたが
嵐で沈んだ元寇船は、歴史学にとっては「宝の船」なのだと思います。
しかしなんといっても鎌倉時代のこと。並大抵の苦労ではないのでしょう。
現場の様子を再現しながら、水中考古学の手法を探る興味深い一冊です。



単行本: 253ページ
出版社: 吉川弘文館 (2018/11/16)
言語: 日本語
ISBN-10: 4642058788
ISBN-13: 978-4642058780
発売日: 2018/11/16


紹介
鎌倉時代の蒙古襲来時に沈んだ元寇船が発見された長崎県の鷹島海底遺跡。当時の造船技術や積荷などの解明に大きな期待が寄せられるが、水中という困難な環境でいかに調査は行われたのか。音波探査やダイバーによる発掘作業、映像撮影、実測図作成、船体保存など、試行錯誤で進められた現場の様子を紹介。水中考古学の手法と今後の可能性を探る。

目次

水中考古学とは―プロローグ/
鷹島海底遺跡と調査の歩み(鷹島海底遺跡/これまでの調査の問題点)/
蒙古襲来(蒙古襲来前夜/
文永の役/弘安の役)/
蒙古襲来の解明に取り組む―調査手法の模索(いざ、鷹島海底遺跡へ/
音波探査の試み/
水中考古学的調査手法の模索)/
鷹島一号沈没船と大型木製?の調査(元軍船の確認へ/
鷹島一号沈没船の水中発掘調査/
鷹島神崎遺跡の国史跡指定とさらなる調査へ/
鷹島一号沈没船の実像/
大型木製碇の調査と検討)/
鷹島二号沈没船の調査(鷹島二号沈没船の発見/
鷹島二号沈没船の構造と遺物)/
新たな研究ステージへ―エピローグ