新刊の森

人文分野を中心に、できるだけその日に刊行された面白そうな新刊を、毎日三冊ずつ紹介します。役立ちそうなレシピにも注目。

これまで書かれていなかったのが不思議な「情報がつなぐ世界史 」

2018年11月22日 | 新刊書
情報がつなぐ世界史 (MINERVA世界史叢書)
南塚信吾 (編集)


世界史は文字で書かれた歴史ですので、実際に起きた事件そのものではなく、あくまでも
そうした事件を報道し、その報道からひとつの物語を読み取る人間が作りだすものです。
それだけにそうした事件を伝える媒介がどのようなものであったかということは、
歴史を構成する重要な要件になります。
世界史を、それを構成する情報という観点から見直そうとする野心的な書物です。
これまでこうした書物がなかったのが、不思議なくらいです。




単行本: 322ページ
出版社: ミネルヴァ書房 (2018/11/22)
言語: 日本語
ISBN-10: 4623084701
ISBN-13: 978-4623084708

内容紹介
世界をつないだ「媒体」の意義と役割
写本からインターネットまで、メディアの変遷を辿り世界史に与えたインパクトを多角的に読み解く。

世界をつなぐ重要な担い手、「情報」。本書では、印刷術発明以前の「写本」「世界図」「人物図」にはじまり、「書籍」「新聞」「雑誌」など
印刷物による伝達手段を経て、さらに19世紀以降のマスメディアの展開として、「電信」「映画」「テレビ」「インターネット」を取り上げる。
それぞれの媒体がいかにして情報を伝え、世界をつなぎ、どのような世界史像を生み出したのかを検討するとともに、どのように世界の一体化を促進し、世界史に新たな問題をもたらしたのかについても読み解く。


[目次]


序 論 情報がつくる世界史(南塚信吾)


 第Ⅰ部 文字と図による伝達

第1章 写本が伝える世界認識(大塚 修)
 1 イスラーム史研究と写本
 2 普遍史書における世界認識の図表化の萌芽
 3 普遍史書における世界認識の図表化の成熟
 4 『選史』が後世の普遍史書に与えた影響

第2章 世界図はめぐる(応地利明)
 1 プトレマイオス世界図と中国発同時代地理情報
 2 古今華夷区域揔*要図──中国王権思想の正統図
 3 イドリースィー図と古今華夷区域揔*要図──地図情報の東西交流

コラム1 地図屏風に見る世界像(三好唯義)


 第Ⅱ部 印刷物による伝達
 
第3章 書籍がつなぐ世界──『千一夜物語』(杉田英明)
 1 写本から書籍へ
 2 さまざまな翻訳
 3 異文化を見る窓
 4 非ヨーロッパ世界での受容

コラム2 書籍商としての長崎屋(片桐一男)
 
第4章 近代的新聞の可能性と拘束性──日露戦争の時代における新聞のメディア的変容(加藤裕治)
 1 「出来事を知らせる」ことの変容──日露戦争における新聞報道への熱狂
 2 初期新聞から近代的新聞へ──新聞報道の「誕生」とその意味
 3 新聞が報道する戦争と戦場(1)──「瞬間」と「俯瞰」から伝える
 4 新聞が報道する戦争と戦場(2)──「人」への興味から伝える
 5 日露戦争の新聞──初期新聞の時代と疑似環境化する時代の狭間で

コラム3 新聞の世界的ネットワーク(澤田 望)

第5章 イギリスのイラスト紙・誌が見せた19世紀の世界(東田雅博)
 1 イラスト紙・誌とは
 2 世界をどう見せたか──大博覧会
 3 アジアをどう見せたか
 4 アフリカをどう見せたか
 5 イラスト紙・誌が見せた世界

コラム4 世界をつなぐ郵便制度(星名定雄)

第6章 反奴隷制運動の情報ネットワークとメディア戦略(並河葉子)
 1 イギリスにおける反奴隷制運動
 2 『奴隷貿易廃止の歴史』にみる奴隷貿易廃止運動
 3 運動の広がり──西インド産砂糖ボイコット運動


 第Ⅲ部 信号・音声・映像による伝達

第7章 海底ケーブルと情報覇権(有山輝雄)
 1 「文明開化」とコミュニケーション
 2 海底電線をめぐる日本・清国・朝鮮三国関係
 3 朝鮮・清国陸上線と漢城・釜山線問題
 4 東北アジア地政学の中の朝鮮半島電信線
 5 東アジアにおける二重の情報覇権

コラム5 通信社の世界史(里見 脩)
 
第8章 アメリカの政府広報映画が描いた冷戦世界──医療保健援助船「ホープ号」をめぐって(土屋由香)
 1 USIS映画と冷戦
 2 USIS映画の概要
 3 『ホープ計画』とアメリカの対アジア医療保健援助
 4 USIS映画が描いた「世界の中のアメリカ」「アメリカから見た世界」

第9章 サイゴンの最も長い日──ヴェトナム戦争とメディア(生井英考)
 1 情報とヴェトナム戦争
 2 プレスとメディアの戦争
 3 アプ・バクからテト攻勢へ
 4 残された傷

第10章 衛星テレビのつくる世界史(隅井孝雄)
 1 宇宙衛星時代のあけぼの
 2 宇宙に架ける対話の橋
 3 戦場からの生中継
 4 新しい情報通信時代への胎動

コラム6 インターネットとモバイル革命(大森義行)

人名・事項索引

著者について
《責任編集者紹介》*本情報は刊行時のものです
南塚信吾(みなみづか・しんご)
1942年 生まれ。
1970年 東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。
1967年 国際学修士(東京大学)。
現 在 NPO歴史文化交流フォーラム付属世界史研究所所長、千葉大学・法政大学名誉教授。

日本論というテーマで書評をまとめた松岡正剛 「千夜千冊エディション 面影日本 」

2018年11月22日 | 新刊書
千夜千冊エディション 面影日本 (角川ソフィア文庫)
松岡 正剛 (著)


長年にわたって長文の書評を書き続けてきた松岡正剛さんの書評は
インターネットでも読めますが、このように文庫として、
テーマ別にまとめられると、また別の視点から眺めることができるようになって
さらに興味が掻き立てられます。
集積が大きな力となる重要な一例ですね。




文庫: 432ページ
出版社: KADOKAWA (2018/11/22)
言語: 日本語
ISBN-10: 4044003556
ISBN-13: 978-4044003555

内容紹介
「常世、鳥居、正月、翁、稜威」という覗き窓をモチーフに面影を考察。

第一章面影の原像へ
谷川健一『常世論』一三二二夜
萩原秀三郎『稲と鳥と太陽の道』一一四一夜
大林太良『正月の来た道』四五一夜
山折哲雄『神と翁の民俗学』一二七一夜
山本健吉『いのちとかたち』四八三夜
丸山真男『忠誠と反逆』五六四夜

第二章をかし・はかなし・無常・余情
清少納言『枕草子』四一九夜
和泉式部『和泉式部日記』二八五夜
西行『山家集』七五三夜
堀田善衛『定家明月記私抄』一七夜
鴨長明『方丈記』四二夜
吉田兼好『徒然草』三六七夜
唐木順三『中世の文學』八五夜
尼ケ崎彬『花鳥の使』一〇八九夜

第三章連鎖する面影
大隅和雄・西郷信綱ほか『日本架空伝承人名事典』四一五夜
三浦佑之『浦島太郎の文学史』六三五夜
石田英一郎『桃太郎の母』一二四四夜
近藤信義『枕詞論』一五九九夜
伊地知鉄男『連歌の世界』七三九夜
心敬『ささめごと・ひとりごと』一二一九夜
西郷信綱『梁塵秘抄』一一五四夜

第四章ニッポンを感じる
ドナルド・キーン『百代の過客』五〇一夜
渡辺京二『逝きし世の面影』一二〇三夜
ウィリアム・バトラー・イエーツ『鷹の井戸』五一八夜
アレックス・カー『美しき日本の残像』二二一夜
ロジャー・パルバース『もし、日本という国がなかったら』一五四五夜
イ・オリョン『「縮み」思考の日本人』一一八八夜

著者について
●松岡 正剛:編集工学者、編集工学研究所所長、イシス編集学校校長。80年代に情報文化と情報技術をつなぐ方法論を体系化し「編集工学」を確立し様々なプロジェクトに応用。2000年「千夜千冊」の連載を開始。同年、eラーニングの先駆けともなる「イシス編集学校」を創立。近年はBOOKWAREという考えのもと膨大な知識情報を相互編集する知の実験的空間を手掛ける。また日本文化研究の第一人者として「日本という方法」を提唱し独自の日本論を展開。著書に『フラジャイル』『ルナティックス』『自然学曼荼羅』『擬』ほか。

文庫になった永井均の西田論「西田幾多郎 言語、貨幣、時計の成立の謎へ 」

2018年11月22日 | 新刊書
西田幾多郎 言語、貨幣、時計の成立の謎へ (角川ソフィア文庫)
永井 均 (著)


ユニークな哲学を展開する永井均の西田幾太郎論が、
付論として「時計の成立「死ぬことによって生まれる今と生まれることによって死ぬ今」」を加えて
文庫になりました。
もとはNHK出版『シリーズ・哲学のエッセンス 西田幾多郎<絶対無>とは何か』ですが、
文庫で手軽に入手できるようになったのはうれしいですね。




文庫: 176ページ
出版社: KADOKAWA (2018/11/22)
言語: 日本語
ISBN-10: 4044001847
ISBN-13: 978-4044001841


内容紹介
西田哲学のエッセンスを永井流に丁寧に考察、あらたな付論を加えた文庫新版

私の底に汝があり、汝の底に私がある――。「私」と「汝」がともに「彼」に変容することが、言語の成立ということなのだ。西田哲学を他の哲学論と丁寧に比較、論じながら独自の永井哲学を展開。さらに文庫版付論・時計の成立「死ぬことによって生まれる今と生まれることによって死ぬ今」で、マクタガートの「時間の非実在性」の概念を介在させ、考察を深めた。無と有、生と死の本質にせまる圧倒的な哲学書。NHK出版『シリーズ・哲学のエッセンス 西田幾多郎<絶対無>とは何か』に新しく付論を加えて文庫化。

著者について
●永井 均:1951年生まれ。慶應大学大学院文学研究科博士課程単位取得。日本大学教授。専攻は、哲学、倫理学。著書に、『転校生とブラックジャック』『改訂版 なぜ意識は実在しないのか(以上、岩波現代文庫)、『翔太と猫のインサイトの夏休み』(ちくま学芸文庫)、『〈子ども〉のための哲学』『これがニーチェだ』『私・今・そして神』(以上、講談社現代新書)、『存在と時間――哲学探究1』(文藝春秋)、『世界の独在論的存在構造』(春秋社)など多数。訳書に、マクタガート『時間の非実在性』(講談社学術文庫)などがある。

永井均さんには次のような多数の著書や訳書があります。

■今という驚きを考えたことがありますか : マクタガートを超えて
左右社 2018.6 大澤真幸Thinking 「O」 / 大澤真幸 [編著] 015
■『青色本』を掘り崩す : ウィトゲンシュタインの誤診
永井均 [著]
講談社 2018.2 講談社学術文庫 [2499]
■哲学の密かな闘い
永井均著
岩波書店 2018.3 新版 岩波現代文庫 学術 ; 379
■世界の独在論的存在構造
永井均著
春秋社 2018.8 哲学探究 / 永井均著 2
■時間の非実在性
ジョン・エリス・マクタガート [著] ; 永井均訳・注解と論評
講談社 2017.2 講談社学術文庫 [2418]
■明るい哲学の練習最後に支えてくれるものへ : 香山リカと哲学者たち
中島義道 [ほか] 著
ぷねうま舎 2017.3
■「仏教3.0」を哲学する
藤田一照, 永井均, 山下良道著
春秋社 2016.9
■存在と時間
永井均著
文藝春秋 2016.3 哲学探究 / 永井均著 1
■なぜ意識は実在しないのか
永井均著
岩波書店 2016.6 改訂版 岩波現代文庫 学術 ; 350
■哲学者に会いにゆこう = Take a walk to see philosophers
田中さをり著者代表 ; 永井均 [ほか述]
ナカニシヤ出版 2016.4-2017.8
■考える方法
永井均 [ほか] 著 ; 桐光学園, ちくまプリマー新書編集部編
筑摩書房 2015.2 ちくまプリマー新書 227
■哲おじさんと学くん
永井均著
日本経済新聞出版社 2014.9 日経プレミアシリーズ 268
■哲学の密かな闘い
永井均著
ぷねうま舎 2013.3
■哲学の賑やかな呟き
永井均著
ぷねうま舎 2013.9
■「自己」と「他者」
木村敏, 野家啓一監修
河合文化教育研究所 , 河合出版 (発売) 2013.1 臨床哲学の諸相 [4]
■ウィトゲンシュタインの誤診 : 『青色本』を掘り崩す
永井均著
ナカニシヤ出版 2012.8
■倫理とは何か : 猫のアインジヒトの挑戦
永井均著
筑摩書房 2011.1 ちくま学芸文庫 [ナ13-2]
■「私」の存在の比類なさ
永井均 [著]
講談社 2010.7 講談社学術文庫 [2000]
■なぜ人を殺してはいけないのか?
永井均, 小泉義之[著]
河出書房新社 2010.1 河出文庫 な25-2
■「私」の哲学を哲学する
永井均 [ほか] 共著
講談社 2010.10
■転校生とブラック・ジャック : 独在性をめぐるセミナー
永井均著
岩波書店 2010.5 岩波現代文庫 学術 ; 238
■子どものための哲学対話
永井均 [著] ; 内田かずひろ絵
講談社 2009.8 講談社文庫 [な-80-1]
■マンガは哲学する
永井均著
岩波書店 2009.4 岩波現代文庫 社会 ; 183
■道徳は復讐である : ニーチェのルサンチマンの哲学
永井均著
河出書房新社 2009.11 河出文庫
■なぜ意識は実在しないのか
永井均著
岩波書店 2007.11 哲学塾
■翔太と猫のインサイトの夏休み : 哲学的諸問題へのいざない
永井均著
筑摩書房 2007.8 ちくま学芸文庫 ナ13-1
■君はいま夢を見ていないとどうして言えるのか : 哲学的懐疑論の意義
バリー・ストラウド著 ; 岩沢宏和 [ほか] 訳
春秋社 2006.6 現代哲学への招待 / 丹治信春監修 . Great works
■西田幾多郎 : 「絶対無」とは何か
永井均著
日本放送出版協会 2006.11 シリーズ・哲学のエッセンス
■主体概念の再検討
永井均編
千葉大学大学院社会文化科学研究科 2005.3 千葉大学社会文化科学研究科研究プロジェクト報告書 第101集
■マンガは哲学する
永井均[著]
講談社 2004.8 講談社+α文庫
■私・今・そして神 : 開闢の哲学
永井均著
講談社 2004.10 講談社現代新書 1745
■倫理とは何か : 猫のアインジヒトの挑戦
永井均著
産業図書 2003.1 哲学教科書シリーズ
■転校生とブラック・ジャック : 独在性をめぐるセミナー
永井均著
岩波書店 2001.6 双書現代の哲学
■ニヒリズムからの出発
竹内整一, 古東哲明編
ナカニシヤ出版 2001.3 叢書倫理学のフロンティア 8
■なぜ悪いことをしてはいけないのか
大庭健, 安彦一恵, 永井均編
ナカニシヤ出版 2000.9 叢書倫理学のフロンティア 9
■マンガは哲学する
永井均著
講談社 2000.2 Kodansha sophia books
■なぜ人を殺してはいけないのか?
永井均, 小泉義之 [著]
河出書房新社 1998.10 シリーズ道徳の系譜
■これがニーチェだ
永井均著
講談社 1998.5 講談社現代新書 1401
■歴史と終末論
野家啓一 [ほか] 執筆
岩波書店 1998.8 岩波新・哲学講義 / 野家啓一 [ほか] 編集 8
■「私」の存在の比類なさ
永井均著
勁草書房 1998.2
■子どものための哲学対話 : 人間は遊ぶために生きている!
永井均著 ; 内田かずひろ絵
講談社 1997.7
■ルサンチマンの哲学
永井均著
河出書房新社 1997.5 シリーズ道徳の系譜
■「子ども」のための哲学
永井均著
講談社 1996.5 講談社現代新書 1301
■ウィトゲンシュタイン入門
永井均著
筑摩書房 1995.1 ちくま新書 020
■翔太と猫のインサイトの夏休み : 哲学的諸問題へのいざない
永井均著
ナカニシヤ出版 1995.12
■他者・関係・コミュニケーション
井上俊 [ほか] 編集
岩波書店 1995.11 岩波講座現代社会学 / 井上俊 [ほか] 編 3
■自己と他者
池上哲司 [ほか] 編
昭和堂 1994.2 叢書《エチカ》 3
■道徳の理由 : Why be moral?
安彦一恵, 大庭健, 溝口宏平編
昭和堂 1992.12 叢書《エチカ》 1
■「魂」に対する態度
永井均著
勁草書房 1991.2
■コウモリであるとはどのようなことか
トマス・ネーゲル著 ; 永井均訳
勁草書房 1989.6
■「私」のメタフィジックス
永井均著
勁草書房 1986.9