新刊の森

人文分野を中心に、できるだけその日に刊行された面白そうな新刊を、毎日三冊ずつ紹介します。役立ちそうなレシピにも注目。

ユニークな視点から世界史を読み直す「共通語の世界史:ヨーロッパ諸言語をめぐる地政学」

2018年11月27日 | 新刊書
共通語の世界史:ヨーロッパ諸言語をめぐる地政学 単行本 – 2018/11/27
クロード・アジェージュ (著), 糟谷 啓介 (翻訳), 佐野 直子 (翻訳)


人間を言語を話すホモ・ロクエンスという観点から考察しながら
世界史を新たな視点で捉え返す一冊。
クロード・アジェージュの本はこれまで読んだことがないので
ぜひ新たな視点での考察を読んでみたいと思います。



単行本: 380ページ
出版社: 白水社 (2018/11/27)
言語: 日本語
ISBN-10: 4560096597
ISBN-13: 978-4560096598

内容紹介
ホモ・ロクエンス全史と商業・宗教・軍隊

ヨーロッパに息づく少数言語から、世界中で息まく連合言語まで!
ホモ・ロクエンス(話すひと)の驚くべき多様性がおりなす人類史をめぐり、ことばの「シェア」に秘められてきた三大要素をときあかす。
「アメリカ合衆国からオーストラリアやニュージーランドまで、南アフリカからカナダまで、さらには、インドのように、英語が国民語ではないまでも公用語の地位に就いている国々が同じくらいのひろがりを見せていることも考えに入れるなら、英語が商業と軍隊によって地球上の津々浦々にまでもち運ばれて、広大な空間を占めるにいたったわけである。[…]ヨーロッパでは、言語が愛国意識を高めるきっかけとなることがよくある。そのヨーロッパにおいて、言語による自己主張の渇望は、共通語の必要性をなきものにしないまでも、共通語の圧力を減らそうとする性質をもっている。こうしてみると、ヨーロッパは、英語に開かれていると同時に、言語的多様性を守ろうとする明確な態度を示していると言える」(本書より)。
社会言語学の泰斗による名著、待望の邦訳。巻末に、言語分布地図・言語名索引付。

著者について
1936年生まれ。フランスの言語学者。著書に『ホモ・ロクエンス』、『言語構造と普遍性』(白水社)、『絶滅していく言語を救うために──ことばの死とその再生』(白水社)ほか多数。

「デリダと死刑を考える」

2018年11月27日 | 新刊書
デリダと死刑を考える
高桑 和巳 (著, 編集), 鵜飼 哲 (著), 江島 泰子 (著), 梅田 孝太 (著), 増田 一夫 (著), & 2 その他



死刑の問題は、デリダが晩年にセミナーで集中的に考察したテーマです。
すでに白水社から『死刑I 』(ジャック・デリダ講義録)が刊行されていますが、
このたび、この問題について日本の論者たちの文章がまとめて書物になりました。
死刑の問題について、ニーチェ、カミュ、ユゴーなどの文章をデリダの観点から考察するもののようです。
どんな議論が展開されているか、楽しみです。


単行本(ソフトカバー): 270ページ
出版社: 白水社 (2018/11/27)
言語: 日本語
ISBN-10: 4560096716
ISBN-13: 978-4560096710

内容紹介
ソクラテスからオウム真理教まで!

デリダで/とともに考えるのは、ソクラテスからオウム真理教まで! デリダの脱構築を手がかりに、政治と宗教と権力の力学をあぶりだし、死刑を考えるためのハンドブック。編者の緒言をはじめ、六人の執筆者による書き下ろし。
本書のタイトルは、〈仮に英語にするならば「Thinking Death Penalty with Derrida」とでもなるが、「with」は「……を用いて」という意味にもなる。デリダについて考えながら、デリダを伴走者としつつ、デリダを用い、あらためて死刑制度を考えよう、というわけである〉(「はじめに」より)。

収録論考は「ギロチンの黄昏──デリダ死刑論におけるジュネとカミュ」(鵜飼哲)、「ヴィクトール・ユゴーの死刑廃止論、そしてバダンテール──デリダと考える」(江島泰子)、「デリダの死刑論とニーチェ──有限性についての考察」(梅田孝太)、「定言命法の裏帳簿──カントの死刑論を読むデリダ」(増田一夫)、「ダイモーンを黙らせないために──デリダにおける「アリバイなき」死刑論の探求」(郷原佳以)、「デリダと死刑廃止運動──教祖の処刑の残虐性と異常性」(石塚伸一)。

著者について
慶應義塾大学理工学部准教授。専門はフランス・イタリア現代思想。著書に『アガンベンの名を借りて』(青弓社、2016年)、編著書に『フーコーの後で』(共編、慶應義塾大学出版会、2007年)、訳書にジャック・デリダ『死刑I』(白水社、2017年)、ミシェル・フーコー『安全・領土・人口』(筑摩書房、2007年)、イヴ゠アラン・ボワ&ロザリンド・E・クラウス『アンフォルム』(共訳、月曜社、2011年)、ジョルジョ・アガンベン『ホモ・サケル』(以文社、2003年)、同『思考の潜勢力』(月曜社、2009年)、同『王国と栄光』(青土社、2010年)など。


アルヴァックスの古典的な名著「記憶の社会的枠組み」

2018年11月27日 | 新刊書
記憶の社会的枠組み (ソシオロジー選書)
モーリス・アルヴァックス (著), 鈴木 智之 (翻訳)


わたしたちの記憶というものは、たんに個人的な部分もありますが
実際にはわたしたちが属している集団や、生きている社会から強く影響されたものです。
何を特に記憶するかというのは、わたしたちが暮らしている生活のうちで決められているものだからです。
ブーヘンヴァルト収容所で亡くなったアルヴァックスの記憶論としては、
すでに晩年の『集合的記憶』が翻訳されていますが、
前期の『記憶の社会的枠組み』の翻訳が新たに刊行されることになったのは、うれしいことです。



単行本: 416ページ
出版社: 青弓社 (2018/11/27)
言語: 日本語
ISBN-10: 4787234439
ISBN-13: 978-4787234438

内容紹介
エミール・デュルケムの集合意識論を批判的に継承し、フランス社会学派第2世代の中心を担ったアルヴァックス。近年、海外でも再評価が進むアルヴァックスが1925年に執筆した「記憶の社会学」の嚆矢が本書である。 社会のメンバーがみずからの過去を想起するとき、「記憶の社会的枠組み」がいかに機能するのか、過去の出来事の記憶を社会のメンバーはどう組織化し、「集合的記憶」を形成するのか、「集合的記億」は社会にどのような影響を及ぼすのか――。 アルヴァックスは本書でまず、個々人の夢や記憶などを論じるベルクソンやフロイトなどの哲学や心理学を緻密に検証する。そのうえで、「家族」「宗教」「社会階級」などを切り口に、社会集団にとって記憶が、人々を統合するばかりでなく、ときに分断もするというその社会的な機能を析出する。 記憶をどう継承するのか、歴史と社会の関係をどう考えていくのかが様々な局面で問われる今日にも、集合的記憶という視点から問題提起を差し向けるアクチュアルな古典的名著。

前言

第1章 夢とイメージ記憶

第2章 言語と記憶

第3章 過去の再構成

第4章 思い出の位置づけ

第5章 家族の集合的記憶

第6章 宗教の集合的記憶

第7章 社会階級とその伝統

結論

訳者あとがき――鈴木智之

人名索引

事項索引

著者について
1877年生まれ、1945年没。フランスの社会学者。デュルケム学派第2世代の中心的存在の一人として、社会階級論、記憶論、社会形態学、集合心理学など多岐にわたる領域で研究をおこなった。ストラスブール大学、ソルボンヌ大学、コレージュ・ド・フランスの教授を歴任するが、1944年、ナチスドイツに捕らえられ、45年にブーヘンヴァルト収容所で病死する。著書に『労働者階級と生活水準』『自殺の諸原因』『社会形態学』『聖地における福音書の伝説的地誌』など、邦訳書に『社会階級の心理学』(誠信書房)、『集合的記憶』(行路社)がある。