新刊の森

人文分野を中心に、できるだけその日に刊行された面白そうな新刊を、毎日三冊ずつ紹介します。役立ちそうなレシピにも注目。

歴史と音楽の組み合わせが巧みな「ベートーヴェンを聴けば世界史がわかる」

2018年11月20日 | 新刊書
ベートーヴェンを聴けば世界史がわかる (文春新書 1191) 新書 – 2018/11/20
片山 杜秀 (著)


タイトルはいかんせん誇大広告にみえますが、
歴史と音楽を巧みに組み合わせて
リーダブルな本に仕上がっていると思わせます。
ほんとうに「クラシック音楽を知れば世界史がわかる!」のでしょうか。



新書: 240ページ
出版社: 文藝春秋 (2018/11/20)
言語: 日本語
ISBN-10: 4166611917
ISBN-13: 978-4166611911


内容紹介
ベートーベンが「市民」をつくった?
「近代+土着」でドイツを勝利させたワーグナー。
歴史の流れがするすると頭に入る、斬新な音楽史&世界史。

「歌は世につれ、世は歌につれ」と言いますが、これは流行歌だけに限った話ではありません。
一般大衆から遊離したハイカルチャーに思えるクラシック音楽も、実は社会、経済と
深いつながりがあるのです。
19世紀に質量ともにピークを迎えたクラシック音楽は、
大都市の市民階級という新しい消費者に向けられた最新の文化商品でもあったのです。

誰が注文し、いかにして作られ、どのように演奏され、どこで消費されたか。
クラシック音楽を知れば世界史がわかる! といっても過言ではありません。

博覧強記の片山杜秀さんが縦横に語りまくる本書を読めば、
激動の近代ヨーロッパの歴史が楽しく頭に入ります。

・音楽が時代の影響を受けやすい経済的理由
・宗教改革で音楽は「簡素」になった
・「時代遅れ」だったバッハ
・トルコ軍楽隊が西洋に与えた影響
・なぜモーツァルトは就活で苦しんだのか?
・革命の騒音が音楽を「爆音化」した
・産業革命が楽器を一変させた
・ベートベン最大のヒット作は「戦争の再現ドラマ」
・世界中が真似たワーグナー・システム ほか


片山杜秀さんには次のように、音楽と歴史の分野での多彩な著作があります。




■「五箇条の誓文」で解く日本史
片山杜秀著
NHK出版 2018.2 NHK出版新書 543
■平成史
佐藤優, 片山杜秀著
小学館 2018.4
■憲法が変わるかもしれない社会
高橋源一郎編著 ; 長谷部恭男 [ほか著]
文藝春秋 2018.7
■現代語訳近代日本を形作った22の言葉 : 五箇条の御誓文から日本国憲法まで
片山杜秀, 荻上チキ著
朝日新聞出版 2018.10
■近代天皇論 : 「神聖」か、「象徴」か
片山杜秀, 島薗進著
集英社 2017.1 集英社新書 0865A
■「超」世界史・日本史 : 大学入試問題で読み解く
片山杜秀著
文藝春秋 2016.12 文春新書 1111
■ポストモダンを超えて : 21世紀の芸術と社会を考える
三浦雅士編 ; 芳賀徹 [ほか述]
平凡社 2016.3
■ジャーナリズムは甦るか
池上彰 [ほか] 著
慶應義塾大学出版会 2015.3
■大東亜共栄圏とTPP
片山杜秀著
アルテスパブリッシング 2015.6
■見果てぬ日本 : 司馬遼太郎・小津安二郎・小松左京の挑戦
片山杜秀著
新潮社 2015.11
■クラシックの核心 : バッハからグールドまで
片山杜秀著
河出書房新社 2014.3
■伊福部昭 : ゴジラの守護神・日本作曲界の巨匠
片山杜秀責任編集
河出書房新社 2014.5 KAWADE夢ムック , 文藝 別冊
■現代政治と現代音楽
片山杜秀著
アルテスパブリッシング 2013.10
■国の死に方
片山杜秀著
新潮社 2012.12 新潮新書 500
■線量計と機関銃
片山杜秀著
アルテスパブリッシング 2012.7
■未完のファシズム : 「持たざる国」日本の運命
片山杜秀著
新潮社 2012.5 新潮選書
■日本の作曲
片山杜秀 [ほか] 著
サントリー芸術財団 , アルテスパブリッシング (発売) 2011.3
■思想としての音楽
片山杜秀責任編集
講談社 2010.11 別冊「本」 . ラチオ||ラチオ ; special issue
■クラシック迷宮図書館 : 音楽書月評
片山杜秀著
アルテスパブリッシング 2010.1
■日本思想という病 : なぜこの国は行きづまるのか?
中島岳志 [ほか] 著 ; 芹沢一也, 荻上チキ編
光文社 2010.1 Synodos readings
■ゴジラと日の丸 : 片山杜秀の「ヤブを睨む」コラム大全
片山杜秀著
文藝春秋 2010.12
■音盤考現学
片山杜秀著
アルテスパブリッシング 2008.2
■音盤博物誌
片山杜秀著
アルテスパブリッシング 2008.5
■片山杜秀の本
片山杜秀著
アルテスパブリッシング 2008.2-
■近代日本の右翼思想
片山杜秀著
講談社 2007.9 講談社選書メチエ 396


エコロジーの枠組みを拡張する「自然なきエコロジー 来たるべき環境哲学に向けて」

2018年11月20日 | 新刊書
自然なきエコロジー 来たるべき環境哲学に向けて
ティモシー・モートン (著), 篠原 雅武 (翻訳)



「自然なきエコロジー」というのは衝撃のタイトルですね。
もちろんエコロジーですから、自然を否定したのでは始まらないわけで
わたしたちがふつうに自然として考えているものを見直すことを提案しています。
人工のものもまた、わたしたちにとっては「自然」なのものとなっていることは、都市を考えてみればすぐに分かることですから、自然の概念を拡張することが試みられているのです。
エコロジーの枠組みを拡張する重要な試みかもしれません。



単行本: 464ページ
出版社: 以文社 (2018/11/20)
言語: 日本語
ISBN-10: 4753103501
ISBN-13: 978-4753103508

内容紹介
従来のエコロジー思想を刷新する
「人新世」時代の来たるべき環境哲学! !

80~90年代に流行し、今日まであらゆるところで主張されているエコロジー思想や環境保護運動。特に地球温暖化や気候変動が問題視されるなかで、改めて注目が集まっています。
従来の環境思想のなかには、手つかずの「自然」を称揚する一方で、ディープエコロジーに至っては人間の存在をも否定するファシズム的発想を含みこんでいました。
本書では、こうした既存のエコロジー思想の基礎となる「自然」の概念について、コールリッジ、シェリー、キーツ、ブレイクといったロマン主義の詩やソローの『野生の生活』などといったネイチャーライティングの分析を通じて、その問題性を指摘します。
また、ブライアン・イーノのアンビエント・ミュージックやピンク・フロイド、ソニック・ユースらのノイズ音楽、アルヴィン・ルシエの実験音楽を取り上げ、「環境」や「アンビエンスなもの」に改めて注目。自然と人間を二項対立的に考える従来の思考枠組みから離れて、「とりまくもの」としての「自然」を提唱します。
「人新世」がホットワードとなった今日、人間や都市、テクノロジーを含みこむ新たな概念として「自然」をとらえ直すこと、本書は既存の概念枠組みを刷新し、共存の哲学を志向する、21世紀思想の幕開けを告げる思想書です。

出版社からのコメント
「INNOVATIVE CITY FORUM 2018」にて基調講演のため来日にしたティモシー・モートンの主著! ついに邦訳!

海軍提督の戦略書に注目。「海の地政学──海軍提督が語る歴史と戦略」

2018年11月20日 | 新刊書
海の地政学──海軍提督が語る歴史と戦略 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) 文庫 – 2018/11/20
ジェイムズ スタヴリディス (著), 北川 知子 (翻訳)


近年では、世界の政治情況の変動にともなって
地政学への関心が集まってきました。
政治学と地理学と歴史学が集約されるこの地政学という学問は興味深いもので
入門書も専門書も次々と登場しています。
この書物はマハンに次いで、海上権力という観点から地政学的な考察を展開した
ジェイムズ・スタヴリディス海軍提督の戦略書です。
注目! 文庫で読めるのもうれしい。



文庫: 400ページ
出版社: 早川書房 (2018/11/20)
言語: 日本語
ISBN-10: 4150505322
ISBN-13: 978-4150505325

内容紹介
「今日の安全保障環境における海洋の重要性と影響力を、
 スタヴリディス提督ほど理解している人物はいない……必読書である」
――ジョン・マケイン(元共和党上院議員)

「著者はその知性を総動員して、
 われわれが海の世界をクリアかつ鋭敏に理解することを助けてくれる。
 荒れ狂う世紀に不可欠な分析だ」
――ロバート・M・ゲーツ(元米国防長官)

古代ギリシャ・ローマの地中海覇権をめぐる海戦から、
コロンブスやマゼランらの大航海、
太平洋を舞台にした日米の艦隊戦、
台頭する中国、不透明な北朝鮮の動向まで、
古今東西の海事史に照らしながら、
世界情勢の鍵を握る海洋戦略を徹底解説する。
NATO軍最高司令官を務めた元米海軍提督が、
歴史への深い洞察と自らの経験をもとに記した、
海軍理論家マハンの系譜を継ぐ新たな「シーパワー(海上権力)」論。

解説/中西寬
著者について
James Stavridis アメリカ合衆国海軍大将(退役)。1976年、アナポリスの海軍兵学校を卒業後、35年以上を海軍軍人として過ごす。複数の駆逐艦や空母打撃軍などの指揮を執り、7年にわたり四つ星の海軍大将を務める。2009年から13年まで、米海軍出身者としては初のNATO(北大西洋条約機構)欧州連合軍最高司令官を務めた。退役後、2013年から18年までタフツ大学フレッチャー・スクール学長 。国際安全保障に関する論評を《ニューヨーク・タイムズ》《ワシントン・ポスト》《アトランティック》などに寄稿している。他の著書にThe Accidental Admiralがある。