万葉集ブログ・1 まんえふしふ 巻一~巻八

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0534 安貴王

2007-06-18 | 巻四 相聞
安貴王歌一首(并短歌)

遠嬬 此間不在者 玉桙之 道乎多遠見 思空 安莫國 嘆虚 不安物乎 水空徃 雲尓毛欲成 高飛 鳥尓毛欲成 明日去而 於妹言問 為吾 妹毛事無 為妹 吾毛事無久 今裳見如 副而毛欲得

遠妻(とほづま)の ここにしあらねば 玉桙の 道をた遠み 思ふそら 安けなくに 嘆くそら 苦しきものを み空行く 雲にもがも 高飛ぶ 鳥にもがも 明日行きて 妹に言どひ 我がために 妹も事なく 妹がため 我れも事なく 今も見るごと たぐひてもがも


安貴王の歌一首(ならびに短歌)

「八上釆女は遠くに、ここにはいない。“玉桙の”(彼女の古里までの)道のりは遠い。思いは募り、心は休まらない。嘆いても苦しいばかりだ。空を流れる雲になりたい。空高く飛ぶ、鳥になりたい。明日にでも(八上釆女の元に)出かけて、彼女に言葉を伝えたい。私のために、彼女は無事で、(かつ)彼女のために、私は無事でいたい。今も(彼女の夢を)見るたび、ふたり寄り添っていたいのだ」

●安貴王(あきのおおきみ):養老7年(西暦723年)もしくは養老8年(西暦724年)、因幡八上采女(藤原麻呂の妻で長男・浜成を出産した)を娶った。藤原麻呂への「不敬の罪」で、本郷に退却した