甘い生活 since2013

俳句や短歌などを書きます! 詩が書けたらいいんですけど……。

写真や絵などを貼り付けて、二次元の旅をしています。

長崎のサンマ 2022年冬

2022年01月26日 21時42分03秒 | 海と水辺と船と

 サンマは目黒で取れるだろ、という落語がありましたっけ。ちゃんと聞いたことはなかったけど、サンマはどこから来たのか、いつも訊かれる魚でしたね。

 十年ほど前、太平洋フェリーに仙台から名古屋まで夏に乗ったことがあったけれど、太平洋のなんにもない海を見ながら、太陽や月、星なんかをぼんやり見ていたはずですが、あの時くらいから、「ああ、太平洋って、こんなに海藻がフワフワしてたんだな」と改めて思ったんでした。

 ゴミみたいに見えた黒い影も、よく見てみたら、海藻のようなものでした。どこから生えたのか、もともと海を漂うものなのか、そういうものがあちらこちらに浮かんでいました。

 そして、それらはサンマたちの住みか兼隠れ家のようなもので、サンマたちはその浮遊する海藻たちと一緒に黒潮を旅しているようでした。

 ずっと夏は北上して、北海道あたりから少し太平洋の真ん中に進み、また寒くなってきたら、今度は千島海流に乗って(冬の千島海流って、勢いがある気がします。もう怒涛の勢い!)三陸沖、銚子沖、焼津あたり、そして、熊野灘あたりまでやってきたら、もうスマートになっていて、脂分はなくて筋肉質になっていたものでした。

 冬に熊野あたりで水揚げされたサンマたちは、余計な脂がないから少し干したら、何とも言えない実の詰まった、味わい深い干物になりました。そのはらわたの味が独特で、はらわたを食べるわけではないんですが、その味が病みつきになったものでした。

 そういうサンマの丸干しという加工品が昔はありました。

 でも、今は熊野灘で水揚げされるサンマはいなくなりました。五匹で二百円くらいだった干物は、とてもサンマそのものが高級過ぎて干物ではもったいないし、よほどマニアの人でない限りは食べられなくなりました。あったとしても、それが熊野のサンマではないかもしれないし、よそから来たサンマをわざわざ干物にしても、本末転倒という気がしたものです。



 サンマはどこへ行ったんでしょう。

 北海道には水揚げされてるようです。一匹三百円とか、それくらいかな。ホイホイ食べる庶民の味ではなくなりました。それに、若い子はサンマなんて、わざわざ食べたいなんて思わないんだろうな。

 さあ、南に行こう。三陸や関東、遠州灘、熊野灘と小さい頃に通った黒潮を遡ろうじゃないの! と思ったところで、中国の大船団にさらわれて、みんなふるさとに戻ることもできず、中国大陸まで冷凍されて連れていかれるのかな。

 日本の漁業が自然のサイクルに合わせてやってた、というほどのものではないだろうけど、とりあえず長い歴史の中でサンマと付き合ってきたような気がするんですけど、そういう私たちの付き合い方をまどろっこしいと、誰でも操業できるところまで大船団を送り、根こそぎ持っていくというのは、発展的というのか、合理的というのか、とにかく金になるなら何でもやろうという拝金主義というのか、自然なんて関係のない、ガムシャラな中国方式によって、私たちのサンマとの付き合い方は変わってしまいました。

 でも、ここ何日か、JAのお店に「長崎のサンマ」というのが売られてるとかで、続けて食べさせてもらいました(かば焼きと塩焼き!)。

 脂はそんなになかったけれど、それなりに身はあって、鍛え方がいつもと違うサンマたちになっていました。

 ひょっとして、黒潮に向かわないで、対馬海流に乗って、五島列島あたりまで泳いできたサンマがいたのかもしれないな。そういうサンマたちが、わざわざこの時期に三重まで連れてこられたのかぁ。変われば変わるものだ。とかなんとか思ってしまって、「目黒ならぬ長崎のサンマだ! 2022年の冬はそうなってるんだ、そういう何かのめぐりあわせなんだな」と思ったところです。

 また、サンマ食べたくなりました。そして、太平洋をフェリーで浮遊したいです。いつになることやら……。

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