米国防長官 ベトナムで中国けん制
アジアの3か国を歴訪しているアメリカのパネッタ国防長官は、シンガポールに続いて3日、ベトナムに到着し、南シナ海に面した南部のカムラン湾に停泊しているアメリカ海軍の補給艦で兵士や乗員およそ80人を前に演説しました。
この中でパネッタ長官は、ベトナム戦争中、アメリカ軍がカムラン湾に駐留していたことに触れ、「ベトナム戦争以来、カムラン湾を初めて訪問するアメリカの国防長官となった。これは歴史的なことだ」と述べ、国交正常化から17年がたち、両国関係が順調に発展していると強調しました。
このあと行われた記者会見で、パネッタ長官は、南シナ海の領有権問題を巡り中国と周辺国との間で緊張が高まっている現状について、「アメリカは問題を平和的に解決するための行動規範の策定や、南シナ海での航行の自由を確保するため、ベトナムと共に取り組んでいく。ベトナムとの関係をさらに強化していく」と述べ、海洋進出を活発化させる中国をけん制しました。
パネッタ長官は4日、首都ハノイでタイン国防相らと会談し、防衛面での関係強化について協議することにしています。
ベトナム高官 中国の対抗措置に警戒
南シナ海の島々の領有権を巡って、中国と周辺国との間で緊張が高まっている問題について、ベトナム政府の高官は、NHKのインタビューに対し、「経済的な制裁など、軍事力以外の手段にも警戒する必要がある」と述べて、名指しは避けながらも、中国が経済的な対抗措置などで圧力を高めることへの警戒感を示しました。
南シナ海では、スカーボロー礁という浅瀬の周辺で、フィリピンと中国の監視船などが2か月近くにらみ合いを続けていて、この間、中国政府はフィリピン産のバナナの検疫を強化するなどしていて、フィリピンをけん制する事実上の対抗措置とみられています。
こうした状況について、南シナ海の領有権問題で同じように中国と対立するベトナムのグエン・チー・ビン国防次官は2日、訪問先のシンガポールでNHKのインタビューに応じ、「われわれは軍事力の使用に反対するだけでなく、経済的な制裁など軍事力以外の手段で目的を遂げようとする行動にも警戒する必要がある」と述べ、直接の名指しは避けながらも、中国が経済的な対抗措置などで圧力を高めることへの警戒感を示しました。
そのうえで、ビン次官は「排他的経済水域や大陸棚など、国際法に基づく各国の権利は尊重されなければならない」と述べて、南シナ海のほぼ全域の領有権を主張する中国をけん制しました。
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1.人の物でも「俺の物だ」と言い出す中国に対する対策がどうすればいいのでしょうか。
2.弱者は一致団結して対抗するしかない。
3.対中国連合軍を組織するしかない。
4.それと敵(中国)の敵(アメリカ)を引き込み共闘するしかない。
米国防長官“海軍艦船6割太平洋へ”
パネッタ国防長官は、シンガポールで開かれているアジア安全保障会議で、2日、アメリカがことし新たに打ち出した、アジア太平洋地域を重視する新たな国防戦略について講演しました。
この中で、パネッタ長官は「現在、太平洋と大西洋に半分ずつ配置している海軍力を見直し、2020年までにその6割を太平洋に集中させる」と述べ、急速な軍備増強と海洋進出を進める中国を念頭にした具体的な戦略を明らかにしました。
そのうえで、日本や韓国など伝統的な同盟国と軍事面の技術開発も含めた新たな関係を築くとともに、インドネシアやベトナム、インドなど、各国との演習などを増やすことでアメリカ軍の展開力を強化することを強調しました。
一方、南シナ海の領有権問題を巡り中国と周辺国との間で緊張が高まっている現状について「中国は、この地域で国際的なルールに従い、平和と繁栄を発展させるための役割を担うべきだ」と述べ、中国に対し、国際法に基づいて外交的に解決するよう求めました。
そのうえでパネッタ長官は、中国に対して国際法による問題解決を求めるうえで、アメリカがこれまで拒んできた海洋開発の権利などを定めた「国連海洋法条約」の議会での批准を年内に目指す考えを示しました。
パネッタ長官は、このあと中国の動きに警戒を強める各国の代表と相次いで会談したほか、3日からは中国と領有権などの問題を抱えるベトナムとインドを相次いで訪問し、協力関係の強化を強調することで、中国をけん制するねらいがあるとみられます。
中国は閣僚級代表は出席せず
ことしのアジア安全保障会議では、中国からは閣僚級の代表は出席せず、軍の研究機関からの出席にとどまり、公開の場での発言も予定されていません。
中国は、去年、梁光烈国防相が出席し、講演も行いましたが、ことしはレベルを下げて、人民解放軍の研究機関「軍事科学院」の任海泉副院長が出席するにとどまりました。
任副院長は、非公式の討論の場に出席する前、NHKの取材に対し、「今回の会議は相互に意思疎通を図るためのものだ」と述べただけで、閣僚級の出席が見送られた理由については言及を避けました。
一方、主催者側の説明によりますと、中国側は「国内事情を優先させるため」として、閣僚級の出席は難しいと伝えてきたということです。
ただ、南シナ海のスカーボロー礁の領有権を巡るフィリピンとの対立に注目が集まるなか、国際会議の場で、ことさら中国の立場を主張することで、関係国を必要以上に刺激したくないという思惑もうかがえます。
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