1991年製といまから24年前の戦前中アニメイション映画『うしろの正面だあれ』が視聴可能なローカル局で放映されたので、最初から最後まで観てみた。
戦中の東京都内東部の街(今の都営新宿線沿線な感じ)が舞台で始まるが、描かれていた人間模様の中に、今にはないようなあたたかさがあった。戦中だから、もっと殺伐としているのかと思いきやそうでもないような感じであった。殺伐としだしたのは、終戦を迎える歳あたりからなのか、或いは、太平洋戦争が激化したあたりからなのか解らない。しかし、戦中初から中期は、割合普段通りだった感じがするのは私だけだろうか?
近所付き合いが今以上に活発だったり、子供の遊びも、今より少し多くの人がかかわり、孤立化しないような感じが見受けられたのは私だけだろうか?或いはたまたまそんな話だった――に過ぎないのだろうか?少子化なんて考えられない世の中が描かれていて、道行けば普通に道端や公園で遊ぶ児童の姿が見受けられる感じであった。習い事はあったにしても、今みたいに、学習塾がひしめき合うような感じはなかった様に思えた。テレビゲームにインターネットもテレビもパソコンもない時代、様様と言う感じで、今より生きやすさがあったようにさえ思うのは私だけだろうか?私友達居ません、は、よっぽどの事情がない限りはあり得ない、そんな感じがしたのは私だけだろうか?人の間、と書いて、人間。それがありありと描かれていたように思うのは私だけだろうか?太平洋戦争の激化と敗戦でそれまであった、あったかい、人間模様や街の雰囲気が戦後の発展と共に消えていったのか?と言う感じがするのは私だけだろうか?発展は発展で素晴らしくあるが、人間のあたたかみや人と人とのあたたかみのある繋がりが薄れ行ってしまったのではないか?と思うのは私だけだろうか?何時かに、戦前生まれの著名人が「世の中に空虚感が漂う」と口した訳が見えてくるような感じが、今回最初から最後まで物語をおってみて、気づいた事だった。
戦争は良くない、してもさせてもならない、平和は尊いものである、それらを啓蒙するアニメイション映画であるにもかかわらずだれど、そう言うのはこれまでの短い人生の中で散々見聞きしてきたからこそ、見えたような感じだった。今の日本からは薄れつつある或いはなくなってしまったような、戦前・戦中初中期の良い側面を垣間見られる作品であった。