3月11日
「ホーホケキョ♫」
松平郷園地ではウグイスのさえずりが聞こえるようになりました。
寒さのせいでしょうか、例年に比べ2週間くらい遅い鳴き始めでしょう。
陽射しもずいぶん春らしくなり、野鳥のさえずりにも季節の移り変わりを感じますね。
●オスのウグイス
ウグイスの民話 ~うぐいすひめ~
はるのうららかなある日、川へ釣りに来た太郎は、ポカポカの陽気につられて歩くうち、
道に迷ってしまいました。ふとどこからか、美しい歌声が聞こえてきます。
声の方へ歩いて行くと、女の子が洗濯をしながら歌をうたっていました。
辺りは梅の花がいっぱいで、良い香りがしました。
太郎は、女の子の家で休ませてもらうことにしました。女の子の家はとてもきれいで、
家の中にまで梅の香りが漂っていました。
女の子は太郎に留守番を頼み、町へ買物に出かけました。
出かける前に、二人はひとつの約束をしました。
「そのたんすの引き出しの中は、絶対に開けて見ないでください。」
「わかりました。決して開けたりいたしません。」
けれど太郎は・・・・
「ちょっとぐらい、いいだろう・・・」一段目には一面に緑の苗代が、風にそよそよ、
そよいでいました。
「次の引き出しは何だろう・・・」
そこでは小さな小さなお百姓さんが、稲を植えるために、田を耕していました。
「次は何だろう・・・」
あまりの不思議さに、太郎は約束などすっかり忘れ、次々と引き出しを開けて見て
しまいました。最後まで見てしまったあと、太郎はハッと気がつきました。
「大変なことをしてしまった。見ないと約束をしたのに・・・」
女の子は帰って来ると、両手を顔に当てて泣きました。
「秘密のたんすを見られては、もうここには居られません」
女の子はそう言うと、外へ駆け出して行きました。
太郎が女の子を追って外へ出ると・・・
女の子の姿は消え、ほう ほけきょ、ほう ほけきょ」
一羽のうぐいすが、遠くの空へ飛んで行きました。
「ほう ほけきょ、ほう ほけきょ」太郎はハッとして目が覚めました。
釣り糸を垂れたまま、眠っていたのでした。
全てが夢でした。
はるのうららの、川のほとりで見た、一時の春の夢でした。
昭和42年 小学館「日本の民話」より
ーーーーーーーーーーーBY 中根 重吉ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー