やさしい芸術論

冬が来たなら、春はそう遠くない

絵のない絵本

2021年01月24日 | アンデルセン

現代社会では頭を柔らかくする必要があるように思います。

 

有名な「千夜一夜物語」の内容は、大雑把に言うと、

人間不信に陥った王に対し、たくさんの話を知っている娘が一日毎に物語を話します。

それが千夜一夜繰り返されて、王は話に夢中になり、冷静になって、正気を取り戻します。

 

この話と似ている点がある本が、アンデルセンが書いた小説「絵のない絵本」です。

 

 

この本の主人公は、孤独な貧しい青年です。

その青年に対し、毎晩月が物語を話して聞かせます。

月が言います。

 

「私の話すことを、そのまま書いてごらん、きっと美しい絵本が出来るよ。」

 

絵にすると千夜一夜物語のような話になるのですが、ごく簡単に、

即興的に、月からの33個の話を並べたのがこの「絵のない絵本」の内容になります。

 

頭が堅い人は、月が話す訳がないといい、33個の短い話も無意味に思えるかもしれません。

 

しかし、千夜一夜物語の王様のように、何が正しいのか分からなくなった時には、

頭を柔らかくして、自分の直感に素直に従う事も大切なのです。

 

現代社会は、お金が無いと生きていけません。

ほとんどの場合、お金は会社に勤めないと得られません。

その勤め先は都会や地方のビルの中が多く、

エアコンによって気温は制御され、利便性を追求し、

人は合理的な行動をとります。

つまり、頭で物を考えて生きているのです。

 

しかし、そのような現代において、病気が増え、子供が減り、

ストレスが増え、将来への希望があまり感じられない現状になっています。

過労死という言葉は世界中で日本しか無いそうですが、

過労死まで行かなくても、心身共にストレスを感じながら、

これが現代の当たり前なんだと自分を納得させて出勤する方がいます。

 

養老孟子さんはこのような現代人に対し、「森に行くこと」を勧めます。

つまり自然を知り、自然に寄り添うという事です。

 

合理的に頭で考えて行動していても、自分のバランスが崩れている事に

気が付かない場合があります。

バランスが崩れていても、無理に生活を維持しようとすると、

医者が薬を処方します。

薬を飲むと依存になったり、体がますます弱くなったり、

体の悲鳴のサインを打ち消してしまう事にもなります。

体が悲鳴を無視して、子供も作らず、辛い人が多い世の中になると、

次世代が育ちません。自殺者も絶えません。

つまり、社会の常識や社会の仕組みそのものが破綻しているとも言えます。

 

ですので、あまり頭だけで考えすぎず、自然に寄り添う時間を作り、

心身共になるべくストレスが無いような生き方を模索するべきです。

 

自然とは「頭で考えても分からない事」です。

予測不能な、コントロールの出来ないものです。

 

 

例えば、世の中にファイナンシャルプランナーという仕事があります。

顧客の収支・負債・家族構成・資産状況などの情報提供を受け、

それを基に住居・教育・老後など将来の人生設計に合った資金計画やアドバイスを行う人の事です。

 

これなどは、現代社会、つまり人工の考え方の典型で、

毎月の生活を頭で考えて、お金の計算や家族構成などの将来設計を立てますが、

そもそも人生は、頭で考えて分かるものでは無いんです。

 

明日、事故にあうかもしれない。

明後日、病気にかかるかもしれない。

明明後日、両親が離婚するかもしれない。

さらに、リストラや死の問題もいつ起きてもおかしくありません。

 

何がいつ起きるかも分からないのが自然であり、当たり前なのですが、

ファイナンシャルプランナーは頭で考えて最善の生き方のアドバイスをします。

現代人的発想とも言えます。

 

それを鵜呑みにして生きていくとなると、

自分自身の本心はどこにも存在しなくなります。

 

社会の駒となって、人生ゲームのように、不本意な毎日が連続しても、

途中で引き返す事が出来なくなるかもしれません。

 

以上の考えは多少、偏った見方ですが、

社会の落伍者も相当数いる現状から見て、あながち間違いでは無いと思います。

 

常識に囚われず、頭を柔らかくして、

「絵のない絵本」っておかしなタイトルだと思わず、

子供のこころのように、無邪気に、

あるがままを受け入れるこころが大切です。

 

王が人間不信になりながら、それでも毎晩の話に耳を傾けたように、

一般常識や、大勢の人と違う生き方を選択する事になる場合でも、

自分のこころや、体のサインに耳を傾けて、

その人に合った生き方が出来たらいいな、と思います。

 

それが自然です。

 

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