デイトレーダー「運命の4分間」／7

引き続き、COURRIER JAPONから。


乱高下する市場で売り抜けろ！
デイトレーダー「運命の4分間」7

“普通”の投資家なら、混乱する市場から逃げ出してもおかしくはない。恥ずかしくもない。だが、ミルマンは違う。「波に乗る」ほど、痛快なことはないのだ。／FROM　ニューヨーク・マガジン


「この点辺りで止まれば、そこが買いのポイントかもしれない」と彼はハンドルの模様が出始める箇所を指さしている。だが、全然違うかもしれない。

「だって、これには科学的な裏付けがないわけだから」とミルマンは焦って付け加える。

彼は、10月に10万ドルの損失を出したときのことを凹んだ様子で振り返る。

「底を打ったと確信して攻めに出たんだ。ところが、予想と正反対でね。まいったよ。そのあと、全額取り戻したけど、かなり厳しい一日だった。終わったあと、飲まずにいられなかったね」

午前11時。S&P500はまだ下落を続けている。「カップ・アンド・ハンドル」ではなかった。ミルマンは聞違えたことを恥じているようだ。ライトスピード社のインターコムからニュース短信が流れる。ジョージ・ソロスがコメントしている。

「深刻な景気後退はもはや避けられず、恐慌になる可能性も否定できません」

近くのトレーダーが吐き捨てる。

「うるせえよ」

動きが止まらない午後午後1時49分。携帯電話、財布、食べかけのべーグル、冷めたコーヒーが机の上に並ぶ光景は、朝と変わらない。違うのは、ミルマンが下着のシャツ一枚になっていること。そして、室内の空気に汗と焦りのにおいが感じられること。

ミルマンは現時点で43ドルしか損失を出していないが、朝いちばんの1万2000ドルの損失をとり戻すのは大変だったようだ。彼の顔は青く、動揺しているように見える。隣のトレーダーにタバコをもらい、横のドアから外に出る。

これまで、単発的な株価の上昇は見られたが、下落のほうが遥かに長かった。CNBCの報道によると、S&P500は08年の最安値を下回った。CNBCを数時間も見ていると、場外馬券売り場のモニターのように見えてくる。


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