会計業界戦線 異常アリ

インターネットの登場によって、顧客の流動化が進む会計業界。このブログでは、会計業界の変化を綴っていければと思います。

リーマン破綻のドキュメント5/「月曜日には経済が存在していないかもしれません」

2009-05-25 00:13:42 | 世界事情
引き続き、ニューズウィークの最新号より。


リーマン破綻のドキュメント5

崩壊を招いた「実行犯」とされたポールソン前財務長官が本誌に真相を激白。放漫経営に最後通牒を突き付けるまで/エバン・トーマス(ワシントン支局)


◆学者議長が経済を救った

事態の重大性はポールソンも認識しているつもりだった。

しかしその後の展開を予測できた高官は1人もいなかった。リーマンが破綻した後、金融市場は壊滅的な打撃を被り、世界規模で銀行の取り付け騒ぎが起きる可能性すら現実味を帯びて見えた。

それを救ったのは、パーナンキFRB議長の素早い判断だった。

バーナンキはもともと世界恐慌が専門の経済学者。その研究を通じて学んだ一番重要な教訓は、一刻の猶予もなく連邦政府が手を打つべきだというものだった。

バーナンキはリーマン破綻後すぐにFRBの貸し出し条件を大幅に緩和し、金融機関に惜しみなく資金を供給。融資額は1兆ドルに達した。

「(ポールソンと)あなたには『融資相談係』というあだ名まで付いている」と、下院金融委員会のパーニー・フランク委員長はバーナンキに言った。

ポールソンとバーナンキのコンビで表舞台に立つのはポールソンの役目だったが、初めのうちはつまずいてばかりに見えた。パーナンキに説得されてポールソンは大規模な金融機関救済案を打ち出したが、議会の同意を取り付けるのは至難の業だった。当初議会は救済案を拒否し、株式相場が暴落した後でようやく、修正を加えさせた上で了承した。

議員たちを説得するという点では、尊大なポールソンより、丁重だがストレートに話すバーナンキのほうがいい仕事をした。下院が救済案を拒否したままの状態でナンシー・ぺロシ下院議長が週末にワシントンを離れようとしていたとき、月曜日まで戻ってこないと言うぺロシに対して、バーナンキは冷静だがきっぱりした口調で言った。

「月曜日にはもう経済が存在していないかもしれません」

ポールソンは、自分とバーナンキがマネー・マーケット・ファンド(MMF)の元本保証のために為替安定化基金の活用を決めるなどの対策を施し、世界の金融システムの全面崩壊を防いだことを誇りに思っていると言う。

「あのとき私たちが手を打たなければ、恐ろしいことになっていた」

リーマンの元トレーダーのなかにはバークレイズに移籍した人も多い。だが、職場のムードは昔とだいぶ違う。新しい職場では誰もネクタイなどしないし、トレーディングルームで1回10ドルで靴磨きをするブラジル人の少年たちもいない。ただしいまだに「こちらリーマン!」と電話口で怒鳴る声は時々聞こえる。

ポールソンが執筆中の回顧録は10月に出版の予定だ。リーマン破綻にはあまりページを割かず、経済を救うために政府が取った対策を強調することになるだろう。

ある意味で彼は正しい。

リーマン破綻がその後しばらくアメリカの政策当局者と金融業界関係者に強烈な精神的ダメージを与えたことは事実だが、それは危機の本質ではない。フットボール場を離れれば、ポールソンは「ハンマー」というより、むしろハンマーでたたかれるくぎのように無力な存在でもあったのだ。


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