会計業界戦線 異常アリ

インターネットの登場によって、顧客の流動化が進む会計業界。このブログでは、会計業界の変化を綴っていければと思います。

ある富裕層のコメント/「私が10億ドル寄付した理由」

2009-06-29 02:14:41 | 世界事情
最新のニューズウィーク誌に、ある富裕層の財産寄贈のコメントが掲載されていました。

アメリカでは膨大な財産を築いた富裕層を財団を設立し、寄付するケースが増えています。

その心理が非常にわかりやすく記しているのが、このコメントです。

私が1985年の設立時から事業拡大に努めてきた投資会社ブラックストーン・グループは07年、新規株式公開(IPO)で巨額の資金調達に成功した。当時81歳だった私は億万長者になった。

父が生きていたら真っ先に報告していただろう。ギリシャからの移民だった父は、人生の大半をネブラスカ州での食堂経営にささげた。億万長者になったと知れば、私が72年に米商務長官になり、ギリシャ系で初の閣僚になったときと同じくらい喜んでくれただろう。

私が少年時代を送った30年代は、ジョン・ロックフェラーやアンドルー・カーネギーといった「百万長者」が有名だった。私はその1000倍の大金持ちになった。

手に入れた10億ドルを何に使おうかと私は考えた。これを元手にさらに儲けようという気にはなれなかった。わずかな収入の大部分を貯蓄や寄付に充てていた父が「浪費家』を最も軽蔑していたことを考えると、ヨットを買うわけにもいかなかった。

今後の身の振り方についても悩んでいた。ブラックストーンを退社する予定だったが、まだ心身共に至って健康だった。携わる仕事が減るにつれ、電話もあまりかかってこなくなった。メールの数も減った。スケジュール帳は空欄だらけになった。

解放されて自由になったはずなのに、ちっとも楽しくない。このまま人生を終えていくのかと思うと悲しくなった。尊敬に値する人たちと親密な関係を結んでいた頃が懐かしくなった。他人から頼りにされる存在だった頃に戻りたかった。

私はほかの億万長者の人生に目を向けてみた。

尊敬する億万長者のほぼ全員が偉大な慈善家だ。ウォーレン・バフェットやビル・ゲイツ、マイケル・ブルームバーグ、ジョージ・ソロス―彼らは社会に貢献したいという情熱を持ち、喜んで私財を投じていた。

私も慈善活動に余生をささげようと思った。後は、どんな活動に財産を投じるかを決めるだけだった。


財政の健全化を第2の人生に

いまアメリカ人の大半が私と同様、ある問題に心を痛めている。

このままいけば、恐らく子供たちの世代は私たちほど豊かな生活を送れないという問題だ。

年金・医療保険制度は財政的に行き詰まっている。アメリカは外国資本に過度に依存し、国民の貯蓄率は恐ろしく低い。

医療費はどんどん膨れ上がり、エネルギーの浪費も目に余る。こんな事態を放置すれば、いつかアメリカは破綻するだろう。

問題の根底にあるのは政治システムの崩壊だ。連邦議員たちは政治をキャリアとしてしか見ていない。だから次の世代ではなく「次の選挙幅にばかり目を向けている。将来にツケが回る大問題があっても、政治家は私たちにその問題を忘れさせ、別のことに目を向けさせようと努める。

このままではアメリカの未来が危ない。子供たちが大きなツケを払わされる。一刻も早く改革に着手しなければならない。

そこで私は、アメリカの財政の健全化に取り組む財団を設立することにした。この難題に関しては、効果的な対処法がいくつもある。

問題は私たちに選択肢がないことではなく、解決する意思がないことだ。

私はこのピーター・G・ビータモソン財団の設立に10億ドル投じることに決めた。ブラックストーン時代の稼ぎのほとんどだ。

なぜそんな大金を寄付するのかって?

かつて作家のカート・ボネガットは、金持ちのヘッジファンド・マネジャーが海辺の別荘で開いたパーティーに出席し、居合わせた作家ジョセフ・ヘラーにこう聞いたという。

「この家の主人の1日の稼ぎが、君が『キャッチ=22』で得た収入よりはるかに多いことを考えると気分が悪くならないか」

ヘラーはこう答えた。

「そんなことはない。私は彼と違って、“十分”という言葉の意味を知っているからね」

私が10億ドル寄付することにしたのは“十分”という表現では足りないくらいの富を手に入れたからだ。


3代で財産が消える税制の日本と同じ土俵で考えることはできませんが、「自分が手に入れた冨を国にではなく、財団を設立してそこで有効活用する」というメカニズムは、アメリカ資本主義の興味深いもう一つの側面です。


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