デイトレーダー「運命の4分間」／9

引き続き、COURRIER JAPONから。


乱高下する市場で売り抜けろ！
デイトレーダー「運命の4分間」9

“普通”の投資家なら、混乱する市場から逃げ出してもおかしくはない。恥ずかしくもない。だが、ミルマンは違う。「波に乗る」ほど、痛快なことはないのだ。／FROM　ニューヨーク・マガジン


チャートではもう一度上昇があると彼は読んでいた。だが、モメンタムを失い、ミルマンの投資した資金も同時に消えた。

ミルマンは、上がれと強く念じる。まるで、株価に彼の声が伝わるとでも思っているかのように。

「おら、ゴールディー!行け!さっさと、このふざけたポイントを超えるんだよ!」

彼は大急ぎで売り、損失を出し、怒ったようにゴールドマンのチャートを画面から消す。これで600ドルの損失だ。

「マジかよ、ゴールドマン?恥ずかしくねえのか!」

「これは僕らが、取り引きずるなかでも優良銘柄のひとつなんだ」

とミルマンはあとで、ゴールドマン・サックスについて説明する。

「大量だし、価格も変動する。今も一番高い銘柄のひとつだ」

そして、何よりも重要なこと。

「今も生き残っている、数少ない投資銀行のひとつだしね」

近づくモメンタムの予感もうひとつ、ミルマンがトレーディングで重用するのが、プロシェアーズ・ウルトラショート・ファイナンシャルズという金融商品だ。取り引き上の略語が「SKF」と表示されるので、“スキッフ"と呼ばれている。金融銘柄の株価が下がるときに利益を挙げる上場投資信託(ETF)だ。

レバレッジ型なので、ゴールドマン・サックスなどの企業が急落すると価値が劇的に上がるのだ。

ミルマンの妻ジェニーがメールで連絡してきた。ミルマンは彼女に、出来が悪いことを報告する。しばらくすると、彼女から返信メールが届く。

「愛してる、このバカ」

ミルマンはため息をつくと、ガックりした姿に戻る。次の波が来るのを待つしかない。来る、と信じるしかないのだが、本当に来るのか?それは誰にもわからない。


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