地図のいろいろ

半世紀も地図作りに携わっていましたので、この辺で振り返って地図を見直してみようかな~・・・。

治水地形分類図

2008-02-22 11:14:53 | Weblog
国土地理院が発行している1:25,000「治水地形分類図」は、
国が管理する河川(一級河川で国の直轄区間)の治水対策のために、昭和51年度から53年度にかけて作成された地図です。

扇状地、自然堤防、旧河道、後背低地などの詳細な地形分類を図示し、1mまたは2.5m単位の標高を表した地盤高線(等高線)、及び河川工作物等がしるされています。

昭和51年(1976)の台風17号による長良川の破堤で大きな被害を受けたのを契機に作成されました。
この台風は4日間にわたるわが国最大といわれる記録的な集中豪雨で、長良川の堤防が決壊し、安八町、墨俣町一帯が湛水しました。

上の図は、茨城県北部を流れる久慈川の下流部の治水地形分類図ですが、
この地図を例に、内容を纏めると
①、氾濫平野(薄緑)は、河川の氾濫により形成され、主に水田に利用されていて洪水被害を比較的受けやすく、建物の立地には注意が必要です。
②、自然堤防(橙)は、地盤高線から読み取れるように氾濫平野より相対的に地盤が高く、比較的洪水の被害を受けにくいため、古くから集落や畑に利用されており、建物の立地に適しているといえます。
③、旧河道(青)は相対的に地盤が低く、現在は主に水田に利用されていますが、比較的洪水の被害を受けやすく地盤も軟弱な場所であり、建物を建設する際には注意が必要です。
④、東部の砂丘(クリーム)は、風の作用で形成された海岸沿いの地形で、森林、荒地が主で、一部建物も立地しています。洪水の被害は比較的受けにくいのですが、砂の地層が主体であるため、砂丘の縁辺部では地盤の液状化に注意が必要です。
⑤、台地部は、台地(朱)と浅い谷(黄)に区分されています。
台地は平野部から約20m高いので洪水の危険性は殆どなく、崖の近くを除けば建物の立地に適しています。
一方、浅い谷は周囲に比べ地盤が低く、水害や場所により軟弱な地盤に対する備えが必要です。
⑥、また、昭和50年代の河川工作物や堤防の整備状況等も記されているそうですが、これはちょっと古いですね。

このように治水地形分類図から、洪水や地盤災害の危険地域を知ることができ、インフラ施設、建物の建設や開発計画、防災計画などに役立っています。