ウツウツ記

毎日の生活で感じたことを書いています。

そのうちいなくなる。

2020-09-29 15:06:41 | 読書
辻村深月さんの「ママ・はは」を読みました。
宮部みゆきさん、辻村さん、薬丸岳さん、東山彰良さん、宮内悠介さんが
ホラーをテーマに書かれたアンソロジー「宮辻薬東宮」の中の
一遍です。

引っ越しをする先輩を手伝いに行った私が
(二人とも教師です。)
ある母親との関係を悩みを先輩に相談します。
すると先輩は、成人式の写真をきっかけに自分と母親との関係を話していきます。
先輩は真面目過ぎるほど真面目な両親の下で育ちます。
特に母親には自分の子供は「こうあって欲しい」思いが強く
その狭い範囲のいい子像に当てはまらないと赦されなかった
と打ち明けます。
真面目な人は義務に強い。
自分が興味のないことは、子供も自分と同じく興味がないと勝手に思う。
でも、子供は自分の家しか知らないから
それがどこかしら他の家と違うと感じても
明確にはわからない。
いつしか、この人が継母だったらいいのにな、
何処かに本当のお母さんがいる、とまで思うようになる。
やがて、大学で反対を押し切って家を出て
世間に触れると、ようやく自由を手にして先輩の生活も少しずつ変わってゆきます。
そして成人式。
着物の予約をする際に、高いけれどとてもよく似合った藤色の着物と出会います。
高いから無理だろう、と思う先輩に反して
母親はせっかくだから、これを買いましょうと言ってくれます。
旅行をしても、旅先の美味しいものを食べるでもなく
スーパーの弁当を買って部屋で食べて終わり、のような母親が
綺麗な着物を買ってくれる嬉しさ、
母親にも好きなものがあったという嬉しさで
先輩の心は温かくなりました。
ところが。。
買ったその2日後、やはり高い買い物だったと。
親戚に貸せばいい、とも思ったが親戚に藤色が似合う子はいない。
今時、結婚式に着物を着る子もいない。
第一、レンタルでずっと安く借りられるではないか‥等々。
買った着物はクーリングオフして、差額で地元に帰った時には
車を買ってあげるから、と勝手にその着物を返してしまう。
しかも、開口一番には
当日作ったデパートのカードのポイントを、まだ使っていないだろうね、
と確かめる母親。
先輩は「似合う着物を買ってくれて嬉しかったんだよ」
と一言、母親に言います。
母親からの返事は覚えていない。
嬉しかった気持ちはないものにされ、その上、気持ちに傷までつけられる。。。
結局、成人式当日はレンタルしたピンクの着物で出席したのですが。。
それ以降、母親との距離を取るようになり接触をさけ
母親のことを考えても動じなくなります。
すると。
成人式の中の写真が、だんだんと藤色の着物に変わっていったのです・・・
写真が変わるように、現実も変わっていきました。
ホラーなので、ここは微妙なのですが(それが面白いところです)
母親も変わった。。。
先輩はいいます。
そういうお母さんはそのうち、いなくなるよ。

私にとっては、とても興味深い話でした。
「そのうちいなくなるよ」
これは実は私も常々、自分に言い聞かせている言葉です。
私も十分に自分の親との関係では悩みました。
本当に、この本で書かれているように
子供は親には逆らえません。
私の親も、自分の正義が絶対の人で自分がルールの人でした。
他人の気持ちなんてお構いなし。
子供の気持ちや人権なんて、考えたこともないと思いますよ。
自分がいい、と思ったらそれが一番の答えなのですから。
従わない相手が悪いと、罵詈雑言の嵐、暴力の嵐でした。
私も逆らわずに、粛々と家を出ることだけを考えて過ごしました。
家族の仲がいい人のことは、本当に羨ましかったですね。
でも羨ましいと思う自分が惨めでしたから
そう思う自分の気持ちは、無いものとしてきました。
ですから、いつも沸々と不満も怒りも湧いてきました。
そんな自分が、親と物理的にも心理的にも距離を取り
逃げてもいいとカウンセラーに背中を押されて
自由になってからは、不満や怒りが小さくなりました。
そして呪文のように「そのうちいなくなる」と考えるようになりました。

仕事をしている時も、好きな仕事でしたが
いつも人間関係が上手くいく訳でもありません。
ただ、当たり前なのですが、会社組織ですから
転勤や転職する人もいて
私がイヤだなと思う人は「そのうちいなくなる」
イヤな人に積極的にかかわらなくても
大抵は、相手の方から「いなくなる」
不思議ですよね、相手の方が音を上げるのです。

理不尽だな、とか
相手に正義の押し売りされて困ったな、とか
そんな時は何も正面から対峙するだけが方法ではない、と私は思います。
卑怯ですか。
でも生きる手段です。
拘わらずに距離を取ってゆく。
粛々淡々と自分のできることを実行する。
ただそれだけで「そのうちいなくなる」
そう思っていると、本当にいなくなります。
そして忘れる。
それでいいんじゃないかな。無責任でしょうか。
でも、心狭くキリキリ舞をして自分を苦しめるよりは
ずっとラクです。余裕も生まれます。
何ごとにも、ハッキリと答えを見出して成敗したい人はそうすればいいし
心の隅で「そのうちいなくなる」と呪文を唱える方がラクな人は唱えればいいし
結局は、自分がラクな方を選べばいいと思います。
本から、ズレちゃいましたね、すみません。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 結局、元に戻る。 | トップ | 購買意欲が戻った。 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事