(今月の人体実験)
RAPTOR(ハレオ)
(解説)
人体実験としては久しぶりなんですが、RAPTOR(ハレオ)です、商品名ですが、Rapid + mTORから来ているとのことです。Rapidは分かるとしてmTORってなんだと言うことなんですが、最初の"m"は"mammelia(哺乳類)"です。"TOR"は"Target of Rapamycin"で、ラパマイシン標的蛋白質と言うことです。ややこしいところを全部スキップして結論だけ言うと、mTORが活性化されるとリポゾームにおけるmRNAの翻訳を促進し、蛋白質合成(孔母リズム)を増加させると共に、オートファジーを阻害し蛋白質の分解を抑制します。
若干の記憶違いもあるとは思うんですが、時系列で説明します。アミノ酸の中に、BCAA(Branched Chain Amino Acid)と呼ばれる特殊なアミノ酸があり、いずれも必須アミノ酸で、バリン、ロイシン、イソロイシンの種類です。
トレーニング時には、糖質、脂肪酸、BCAAをエネルギ源とするんですが、持久的な運動を行うとこれらのエネルギ源が枯渇し、筋肉を分解してエネルギ源とするようになり、つまり筋力低下を招きコンディションに悪影響が出てきます。
このBCAAのうちで、特にロイシンの血中濃度が筋肉合成のスイッチになっているらしいと言うことはかなり以前から分かってたようで、ロイシンを主体とするサプリメントが発売されていました。
最近、話題になったのがHMBです。正式名称は3-ヒドロキシ-3-メチルブチレートです。3-ヒドロキシ吉草酸と呼ぶ場合の方が多いような気がします。このHMBはロイシンの代謝物なんですが、ロイシンのおよそ5~10%程度しかHMBに変換されません。HMBを3グラム/日を摂取したときのパフォーマンスが最大になるらしいのですが、そのためには30~60グラムのロイシンを摂取する必要があり、現実的ではありません。それならHMBを直接摂取してしまえとなるのは当然の成り行きでしょう。
話を戻して、ロイシンの血中濃度が筋合成のスイッチとなっている訳なんですが、ロイシンも同様に筋合成のスイッチとなっているようです。これは冒頭で説明したmTOR経路による蛋白質合成の促進です。これに加えて、ロイシンは筋分解を抑制しないんですが、HMBはユビキチン/プロテアソーム経路の抑制による蛋白質分解の抑制が行われることが分かっています。
HMBですが、これまでのHMBはHMBのカルシウム塩でした。カルシウム塩だと、胃で分解されるのに時間がかかりますが、今回のハレオの新商品ではフリーフォームのHMBが使われているとのことです。つまり、これまではトレーニングの30分以上前に摂取しておく必要がありましたが、新製品のRAPTORの場合は、ジムのロッカールームで摂取しても問題ないと言うことと、摂取後のHMB血漿濃度のピークの高さが2倍近く高い値を示すデータが公開されています。
RAPTORの、もう一つの成分がアルファGPC(グリセロフォスフォコリン)です。この名前を聞いたときに、そういえばフォスファチジルセリンというのがあったよなと思ったんですが、同じく大豆由来のサプリメントらしいです。アルファ・グリセロフォスフォコリンの名前からも分かる通りでアセチルコリンの原料となります。アセチルコリンは、筋収縮に関与する神経伝達物質ですから、トレーニング時のパフォーマンスアップに寄与することが期待出来ます。
アルファGPCは、アセチルコリンが促進するカテコールアミン分泌による成長ホルモンの分泌です。チロシンあたりも同様な効果があったと記憶していますが…。カテコールアミンが分からない人のために説明しておくと、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンのことだと思って良いです。トレーニング時のパフォーマンスアップが見込まれ、さらに成長ホルモン分泌による筋合成との相乗効果が期待出来るわけです。
ビタミンDが配合されているのは、強度の高いトレーニングを行うアスリートのばあい、ビタミンDが不足気味になるので、それをカバーするためかと思っていたんですが、アルファGPCとの相乗効果が認められるそうです。確かに、ビタミンDのレベルを高めると遊離テストステロンが増大するという研究結果は出ていたと思うので、そのあたりが関係しているんでしょう。
ということで、一ヶ月後の結果発表をお楽しみに…。