NHK の集金人と 喧嘩した

我が家の家訓に、「NHKの受信料の支払いを口座振替にするな。集金人に取り
にこさせろ」というのがある。過去に揉めたことがあるからだ。過去、と言っ
てもかなり昔、なにせわたしが生まれる前のことなので、相当気合の入った
因縁がNHKとの間にあることになる。
当時も、NHKはさかんに受信料の支払いを口座振替にさせようとしていた。
狙いはもちろん集金人の削減による出費を抑えるためと、思想の問題などで、
急に受信料の支払いを拒否しはじめるのを防ぐためと思われる(生まれてない
ので詳しいことは知らん)。で、当時存命だったわたしの曽祖父(祖父はすでに
他界)は、NHKの言うことにハイハイと従い、銀行に口座振替の手続きを行った。
にもかかわらず、NHKの集金人はウチに受信料を取りに来たのだ。詳しいことを
知らなかった祖母は、いつも通りに受信料を渡した。結果、その月は集金人に
手渡した分と、銀行から引き落とされた分の、受信料の二重払いになってしま
った。当然、我が家はそのお金を取り返そうと思い、その役を曽祖父より命じ
られたのが、わが父だった。通帳の記載もある、NHKの領収書もある。手続き
は少し面倒かも知れないが、証拠はあるのだから返却自体は簡単に認められる
・・・と、誰もが思っていた。しかし、それに対するNHKの返答は
「一度いただいた受信料は、如何なる理由があっても返却できません」
という、とんでもないものだった。こっちは二重に取られた分だけを返して
くれ、という誰が聞いても正しい主張をしているだけなのに、NHKは全く聞く
耳を持たなかった。
だが、わが父は常識を超えたしつこさを持つ人間だ。何度あしらわれようとも
あきらめず、それから1年半もの間、毎日NHKに通い詰め、二重払いの受信料の
返却を求め続けた結果、ついに返却はなされた、ただし、NHKからの謝罪は一切
なし、支払いもそっけない銀行振り込みによるものでしかなかったが。
もちろん二重払いが発覚した直後に口座振替は解約し、それ以降、現在でも
NHKの受信料の支払いは、集金人への支払いしか行っていない。
ところがところが、NHKはまたしても口座振替を要求してきた。集金人シス
テムを終わらせるためだという。以前の事件の当事者の父はもちろん、幼い
ころからこの話をたびたび聞かされてきたわたしも反対だが、集金にはもう
こない、口座振替で受信料を払わなければ滞納者とみなすとされている。
最近、NHKは受信料滞納者を法的に訴えることもも考慮に入れている。思想的
に過激な人間ではない、それまではキチンと支払っていた我々など、法的手段
を使って一般人を脅すための、格好のイケニエになりかねない。また、わたし
自身NHKの番組は頻繁に録画しているので、受信料の支払い自体を拒否する
わけにはいかない。家族会議の結果、仕方が無く口座振替に応じることにした。
それが今月の半ばごろ。

したら今日、まさにそれを待ってましたとばかりに来やがったのだ、NHKの
集金人。いつもより早い。用件はもちろん、「受信料払え」
ｋ「前にそっちが口座振替以外はやめるって言うから、もう手続きしたよ？
　 そっちから受信料落ちるから、集金人のあんたには払わなくていいはず
　 だろ？」
Ｎ「いえ、今日来るということは、電話してありますから。」
・・・電話したからなんだ、というのだろうか。
ｋ「じゃぁ、今月は受信料落ちないわけね？　来月からの支払いなわけ？」
Ｎ「とにかく、電話してありますんで。」
ｋ「じゃあ今月も落ちるかも知れないってこと？　前に二重に受信料取られて
　 取り返すのにとんでもなく時間がかかったことがあるんだよ。二重に取ら
　 れたらすぐに返してくれるのか？」
Ｎ「電話してありますから。」
いい加減ムカムカしてきた。こっちが何聞いても「電話してある」「電話してあ
る」と、それしか返答がない。しかも、気のせいかもしれないが、「電話して
ある」というとき、妙に誇らしげに、胸を張って言っているように見える。
電話したのかどうか知らないが、それがそこまで偉くてすごいことなのだろう
か。電話なんてしょせん「一方的な通達」の手段でしかなく、約束の仕方として
も軽くて地位が低いものだと思うのだが、多分この集金人の頭の中では「電話
した」が最上級の拘束力があるものらしい。
ｋ「こっちは二重取りされるのはゴメンだから、今月は絶対に口座振替が行わ
　 れないか、二重取りが発覚したら速やかに返却すると、NHKの名のもとに
　 約束してよ。そうでなきゃ大事なお金を渡せないよ！」
さすがに声に怒気が含まれるのを抑えることができなくなってきた。が、それ
を知っての上での無視か
Ｎ「とにかく、電話してあるんですから、払って下さい。」
さすがに頭にきた！　あまりに横暴な態度。そうでなくてもわたしは電話が嫌
いなのに、もう我慢なら無い。
ｋ「電話した、電話したって、他に言うことないのか！　わたしが一番嫌いな
　 人種は、たかが電話したことをまるで錦の御旗を掲げるがごとく持ち上げて
　 それに従わせようとする連中だよ。電話がそんなに偉いのか！？　電話さ
　 れたらこっちは必ずお金払わなくちゃならねぇのか！？　電話さえすりゃ
　 金が手に入って当然なのか！？　お前らはオレオレ詐欺の集団か！？」
Ｎ「でも、電話してあるんで・・・」
ｋ「まだ言うか！　おんなじことばかり言いやがって。電話した、電話したって
　 繰り返すだけならインコだってできるわい、鳥頭！　哺乳類なみの脳みそ
　 持っているんなら、たまにゃぁ別のこと言ってみろ！　さぁ言ってみろ！
　 お前の頭は鳥か？　犬か？　詐欺師か？」
Ｎ「わたしどもはあらかじめ電話をして、来ることを言ってあるわけですから。」
ｋ「もう頭来た！　同じことしか言わねえんなら、こっちが代わりに言ってやる。
　 電話した電話した電話した電話した電話した！　おおそうだ、電話さえすりゃ
　 した方の思い通りになるんだったっけ。じゃぁこっちからNHKに電話して、
　 受信料払わなくてもいい永久権を主張してやるよ。電話さえすりゃいいんだ
　 ろ？　電話した電話した電話した電話した電話した電話した電話した電話した
　 電話したぁ！」
もうわたしの口は、あらん限りの罵詈雑言が飛び出す修羅と化した。
Ｎ「でも、電話をして・・・。」
ｋ「電話した電話した電話した電話した電話した電話した電話した電話した電話した
　 電話した電話した電話した電話した電話した電話した電話した電話した電話した
　 電話した電話した・・・・・・・・・」
Ｎ「・・・今日のところは引き上げます。」

集金人は、最後にはじめて「電話した」以外の発言をして帰っていった。
たびたびお見苦しいところを公開して申し訳ありません。ただ、こっちは別に
受信料を絶対払わないと言っているわけではない。二重払いがイヤだ、と言って
いるだけで、当然の主張だと思う。確かに、口座振替に変更したその月は、
手続き上口座振替が行われない可能性はある。集金するならば、その旨をキチン
と説明し、二重払いになったら返金してくれることを約束してくれれば何の
問題もない。それを「電話してある。だから受信料払え」の一言だけで約束も説明
も一切なしで押し通そうとする態度は、如何に親方日の丸のNHKとは言え、
許されるものではない。過去の件といい、今回の件といい、NHKの集金人の間には
「口座振替への移行によって支払いの空白ができるくらいなら二重に取れ。説明
や約束をすると言質を取られて後で面倒なことになりかねないから"電話をした"
で押し通せ。取った金は絶対返すな、受信料未払い者の口実になりかねない」
と、書いてあるマニュアルが存在するとしか思えない。なお、我が家の人間は、
誰もNHKからの電話を取った覚えがないという。単に覚えてないだけかも知れない
のでそれだけで「電話した」、が嘘ということにはならない。が、NHK集金人の口か
ら、電話口で受信料の支払いについて説明した、などの発言はとうとう聞くこと
は出来なかった。国民のNHKに対する不信感は、そういう"金取れ"主義の積み重ね
からも来ているのだ、ということはNHKは自覚して欲しいもんである。
受信料を払わないとか、払わなくていいとか、少なくともわたしらは本気で主張
しているわけではないのだから。

また来て二重払いを要求するようなら、口座振替解約の予定。