録画人間の末路 -

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逆輸入映画、怪獣王ゴジラ初DVD

2017-01-14 21:55:04 | 特撮・モンスター映画
開始当初はもう一つ購入する気がなかったのが、講談社発行のDVDマガジン「ゴジラ全映画DVDコレクターズBOX」。これは以前ディアゴスティーニから刊行されていた東宝特撮DVDコレクションがあったさいに作品のほとんどがすでにそちらで発売されており、内容としてダブる点や東宝チャンピオン祭り版の発売が巻数の水増しにも思えた点がそれらにあげられました。ところが、いざ刊行が始まってみるとなかなか中身が熱い! 映画のDVDは画質もさほど良くなく、それ自体は大したことはないのですが、ディアゴスティーニの付録が映画の制作過程などを特集した解説本だったのに対し、講談社は当時の宣材や雑誌の特集・コミカライズや復刻版パンフレットの収録となっており、見ていて涙が出そうなほどマニアにとっては持つ喜びがあるものに。DVDも当初は一部だけ収録予定だった東宝の5分特撮番組「行け!ゴッドマン」が好評につき全話収録が決定。以前発売されたDVDボックスの「行け!ゴッドマン」でも収録されていたのは映画に出てくる怪獣を中心した一部のものだけで、全話収録はないだけにうれしすぎます。ただ、そのゴッドマンDVDボックスには映像特典として「ゴジラ✖メガギラス G消滅作戦」などの手塚昌明監督による新作「行け!行け!ゴッドマン&グリーンマン」が収録されており、これは二大ヒーローの完璧なまでのヒーロー握手・"これがやりたかったんだ"感が画面からあふれてくる「プロの手による大人の怪獣ごっこ」と呼ぶのがふさわしいエンディング映像が大満足のものだったので買ったことに一片の悔いもないんですが。ゴッドマン全話収録というのならこの映像特典版ゴッドマンまで入れて完璧!とみなしたいところですがはてさてどうなるか。

本家東宝による怪獣映画の映像ソフトはどうも後手に回っている感があり、ゴジラ第一作やキングコング対ゴジラを4Kリマスター版が出来上がる前の映像のものしか今なおBD・DVD化されておらず、不満の残るラインナップとなっています。特にVHSやLD時代にはソフト化されていた海外版ゴジラが全く発売されていないのは噴飯ものであります。そしてとうとうゴジラ第一作の米国版、「怪獣王ゴジラ」初のDVDソフト化、という快挙は講談社のDVDマガジンによってなされてしまいました。

隔週刊 ゴジラ全映画DVDコレクターズBOX(14) 2011年1/24号【雑誌】
講談社
講談社


もちろん一怪獣映画ファンとしては発行した講談社および制作しただろう外注先の英断に拍手を送りたいところです。ちなみ米国版は当然英語タイトルとなっており、本来は「GODZILLA KING OF THE MONSTERS!」なわけですが、この日本語版は発売される時は「怪獣王ゴジラ」となるのは、このタイトルで米国版が日本に輸入され、日本語字幕をつけたうえで上映されたからです。
「怪獣王ゴジラ」は日本で作られた「ゴジラ」をそのまま上映したわけではなく、アメリカの監督によってアメリカ人を主人公として撮りたした部分を付加して再編集したものです。それでも基本的ストーリーは大体同じですが、なんとなく第三者的視点で遠くから見たゴジラ事件という印象が漂うものとなっており、継ぎ接ぎゆえの本編登場人物が話している言葉の内容と通訳された内容が全く異なるなどメチャクチャな部分があったりして「別物」と言われることも多いのですが、それでも取りたし部分の被害者や破壊されたビル描写などは「ゴジラ」の雰囲気を大きく損なうことのない、当時の米国怪獣・怪物映画とは全く空気の違うものとなっているあたり、変更は加えても可能な限り作風、特に特撮による破壊描写のもたらした空気を乱したくはなかったという配慮は見られます。米国製怪獣映画では、大勢の負傷者やそこから助け出される人々と言った"後の被害状況"を描くことはまずありませんからね。もちろん日本でもそこまでやった怪獣映画は少ないわけですが。
しかし、なぜわざわざ当時の東宝は逆輸入してまで「怪獣王ゴジラ」を上映したのでしょうか。改編されたとはいえ、「ゴジラ」は日本製映画としてはじめてメジャー配給によって全米公開された映画です。おそらく当時の東宝の映画関係者にとってそれは何よりも誇らしいことだったのでしょう。なので「凱旋、故郷に錦を飾ることこそ本懐」とばかりに米国版ゴジラの上映を決意したのではないでしょうか。おそらく取り寄せてみて、ちょっと唖然としたでしょうが。
なお、今回DVD収録されていたゴジラは厳密に言えば「怪獣王ゴジラ」ではなく、「GODZILLA KING OF THE MONSTERS!」に日本語字幕を付けたものです。「怪獣王ゴジラ」は日本公開の際にトリミングされ、シネスコサイズになって上映されているからです。そういう意味では完璧ではなく、やや残念感は残ります。なお、シネスコ化された「怪獣王ゴジラ」のフィルムは現存しますが、主にゴジラ特集の上映会で使いまわされたプリントしかないため状態は悪く、傷だらけの上、フレームが少なからず飛んでいたりします。一昨年日本映画専門チャンネルでやっと放送されましたのでもちろん録画保存してありますが、正直そこまでして日本公開版にこだわるほどのものでもないです。ただ、マニアとしては残念というだけです。「怪獣王ゴジラ」日本でBD化の暁には、ぜひ「スタンダート版」「傷だらけの残存フィルム版」「スタンダード版を日本公開版とおなじ画角になるようにトリミングして同じ日本語字幕を同じ場所に焼き付けた復元版」「同じ俳優が同じ役で再登場する”ゴジラ"1984年度版の米国版、ゴジラ1985」を同時収録してほしいものです。

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