買ったはいいんですが、どうもパッとしないCore i7 11700。さすがにそれまで使っていた三世代前のCore i7 8700よりはコアが新しくなっているしその数も多いし、マルチコアが生かせるCPUの動画エンコードなら早くなっているだろうと思いきや大して変わらず、ヘタすれば遅いという結果しか出ていません。
電源周り(ATX12Vの4ピンx3を必要とするマザーボードなんですが手持ちの電源は4ピンが2つしかないので3つ目は変換コネクタを使って挿しているため、供給電力が安定していないという可能性もあります、Ryzen 7 PRO 4750Gも同じですが)、個体差で外れを引いた、チップセットがミドルクラス、ドライバが未成熟、Windows10が最適化されていない、いろいろ原因は考えられますが、現状速度に不満があるのは事実。世間的な評判で言えば第11世代は「消費電力は上がったが発熱はそこまででもなく、ベンチマーク上ではRyzenといい勝負くらいはできる」というものだと思いますが、手持ちの環境で実感できるのは発熱が少なめなことくらい。まぁ世間の評価はもっぱらK付きのTDPの高いCPUばかりで、TDP65Wの8コア11700のようなCPUは評価対象外ですけど。じゃぁもう少しK付きに近づくまで消費電力を上げてみようか、とOverTDPを限界に近いところまで上げてみます。具体的には以下の設定にしています。
Dual Tau Boost 有効
MSR PL1 95W
MSR PL2 224W
MSR TAU 448s
MMIO PL1 125W
MMIO PL2 224W
MMIO TAU 448s
MSR PL1 95W
MSR PL2 224W
MSR TAU 448s
MMIO PL1 125W
MMIO PL2 224W
MMIO TAU 448s
正直設定の意味、特にMMIOの意味はよく分からないのですが、ここをデフォルトの"AUTO"にするとどうも発熱とクロックが抑えられる動作になるようなので、ここも手動設定で数字をあげてみます。この設定とCPUクーラーの虎徹 MarkIIで一部コアが限界の100度に到達する時があったため、このくらいが限界でしょう。水冷のような強力な冷却システムを使えばもう少し上げられるかも知れませんが、そういう人は無印11700は買わないでしょうし。さて、これでまたまたHandBrakeでUltrafastとVeryslow、x264でのエンコードという以前と同じ条件をやってみます。
Ultrafast
11700(今回) 7分23秒
11700(デフォ) 9分17秒
4750G 7分36秒
Veryslow
11700(今回) 49分11秒
11700(デフォ) 57分36秒
11700(80W) 51分39秒
4750G 45分37秒
最速設定のUltrafastでついにHandbrakeでZen2超え! とちょっとだけ狂喜しましたが、やはりVeryslowだと失速・・・。比べ物にならなかったデフォルト設定に比べれば比肩できるところまで来ているとはいえ、ここで手持ちの11700の限界が見えました。今回の設定にすると、まず最初のターボ状態4.4GHzをかなり長く保ちます。一応設定では最大448秒まで継続、にしてありますが、そこまで持ちません。ちなみにVeryslow設定では開始から3分キッチリで一部のコアが100度に達し、クロックが落ちたのを見て、実にわたしの手持ちらしい動作とちょっと感心。その後も3GHz台後半を維持し続けたので、これはVeryslowでもZen2超えあるか? と期待したのですが、さらに時間がたつと65W時並の3GHz前後にまで失速、上がらなくなってしまったため、80Wらと大差ない結果になってしまいました。
どうやら虎徹が11700の発熱を放熱しきれてないようです。測定ソフトのCore Tempでは今回の設定のターボ時を除いてそれほど発熱は高くなっていないのですが、ソフトで測定できない部分で熱が溜まり、そのためクロックをあげられない、そんな動作をしているように見えます。確かにウチのケースの吸気ファンの前にはHDDが立ちふさがっているため、CPUクーラーにスムーズに新鮮な空気が届いていない可能性はあります。排気は虎徹と並行する位置にファンをつけてあるので、それなりにできていると思いますが、不足なんでしょうか? 念のため、ケースの蓋を開けてCPUクーラーにUSB扇風機で風を充てる、などの悪あがきもやってみたのですが、49分7秒とほとんど変わりませんでした。ちなみに、11700の熱を虎徹が処理しきれないというのはあくまでTAU BOOSTをいじって目いっぱい発熱量をあげてパフォーマンスを出そうとした場合の話で、デフォルトで使うなら多分付属リテールでも賄いきれると思います。
なお、条件は4750GのPCも同じかそれ以下です。こちらはRyzen 7 1700付属のリテールクーラーを使っているのでトップフロー型であり、排気用のファンにスムーズに排熱が行っていない可能性もあるのですが、Core Temp計測で常時70度となってはいるものの長時間の作業でも負荷があるかぎりクロック約4.2GHzで落ちません。もちろん吸気ファンの前はHDDが数台そびえたっての環境で、です。Ryzenの方が熱処理に関しては格段に優秀と感じます。
第11世代Coreもブースト時にはパフォーマンスでますし、低発熱の時は低発熱なのですが、その切り替えが全然うまくできてません。例えるなら短距離走向けのアーキテクチャを使って全部を補おうとしたCPUと思います。よく言えばゲームには良いCPU、悪く言えばベンチマーク特化型CPUです。エンコードはQSVを使えばいい、というのが当然Intelの言い分にはあるでしょうが、それなら8コアも要りません。第11世代Coreなら安くて上位機と同じGPUで性能的に無駄のないCore i5の11500が一番じゃないでしょうか。と、言っても多分わたしは次も無印なi7を買うんだろうなぁ、GPUが下位にならない限り。
コア外周に放熱用のシリコン面積が広く取れればもっと冷やせるのだが 矛盾した考えかな
今回のCPUはヒートスプレッダーの厚みや面積が大きくなっている、という話もありますし、冷却には気を付けていると思います。が、熱に余裕があるか冷やしきれないか、のどちらかにしか触れないあたり、やはり14nmの限界かも知れません。次あたり冷却の仕方が少し変わってくるかもしれないですね。、BTXみたいに。
https://gvfm.net/core-i9-9900k-kotetsu/
Kだと冷やしきれないでしょうね。ただ、あくまで定格ならば虎徹どころかリテールでも冷やしきれると思います。むしろそれを重視してパフォーマンスが犠牲になっているというorz