録画人間の末路 -

人は記録をしながらじゃないと生きていけない

Core i7 11700の能力を改めて考える

2021-04-28 11:51:09 | 意味なしレビュー
前回、購入前の予想以上に性能が振るわなかったCore i7 11700。このままだと買った甲斐がないので(一応それまで使っていたCore i7 8700と同等以上程度はあるのでゼロ価値ではないですが)、なんとか性能を引き出せないか、もうちょっとテストをしてみます。性能が出るかどうかなのでデータが正確かどうかは二の次の手抜き調査になりますが、ご了承願います。

1.BIOSをアップデートしてみる
まずはマザーボード、H570 Phantom Gaming 4 のBIOSのアップデート。前回調査したときは購入時の1.3でやっていたんですが、すでに1.7が出ていますので、そちらを充てて使ってみます。テストは前回と同じ、約49分の1440x1080MPEG2-TSとHandBrake。フレームレートのみ同じに合わせ、x264でVerySlow。

(1.3)57分36秒 →(1.7)57分00秒

一応上がっている、と言えば上がっているんですが、この環境は性能のブレが大きいのでこのくらいだと誤差の範囲と言えちゃうんです。それでも、上がったとしておきます。もちろん満足のいく性能になった、とは言えませんが。

2.BIOSでAVX512を切る
TMPGEncでAVX512を使わないようにすると、H.265だけの調査しかしていませんがエンコード速度が向上していました。バージョンアップしたBIOSによってAVX2とAVX512がセットではなくなり、AVX512だけBIOSで無効にできるようになりましたのでそれでやってみましょう。この項目だけx265のSlowもやってみます。ただ、そちらは1.3での動作したものとの比較になります。

x264
57分00秒→1時間37分35秒

x265
1時間51分45秒→1時間52分56秒

むしろ遅くなりました。特にx264利用時の遅さはかなりひどく、念のため二回やってみたのですがほとんど同じでした。まぁIntel側としてみればAVX系の無効はあくまでオーバークロックのためにやる作業であり、性能アップのためではないらしいので仕方ありませんが。機能的には生きているソフト側の対応と違ってBIOSレベルだと性能の低下が著しくなるんでしょうね。だからこそx265時ではわずかな性能低下に収まっているのは何かおかしいですが、今回は性能アップを狙った手抜き調査ですので性能アップにつながらない検証はやめておきます。

3.コアを減らしてみる
TDPは総合的発熱量ですから、8コア入っているというのはそれだけで電力を多めに消費し、TDPを守ってパフォーマンスを上げるのは難しくなります。それなら、コアを減らせば1コアあたりに振り分けられる電力は増え、むしろ使わないコアが熱を吸ってくれるのでクロックが上がり、性能の逆転現象が起きるのでは? と思いついたので6コア12スレッドに落としてみました。

(8コア)57分→(6コア)1時間7分15秒

逆転はおきませんでした。まぁこの予想が当たっていたらCore i5の方がi7より性能が上がってしまう場面が出てきてIntelも商売に困ることになるわけですが。ただ、1コアあたりのクロックは同じTDPでも上昇していましたのでその点だけの予想は当たっていました。ただ、TDPを80W以上に上げた時と同程度のクロックに収まってしまっていて性能は上がらなかったのですが。

4.TDPをもっと上げてみる
前回は性能上昇が空回りしているとみてTDPのアップを95Wでやめておきましたが、思い切って125Wまで上げてみました。UEFIに掲載されているデータシートによるとTDP65WのCPUはPL2動作の際最大129W、約2倍までTDPが上がります。ならばそれに近い値まで上げてみれば、常時PL2に並の電力が使われ、クロックが上がるのではないか、という予想です。かなり危険な域にも見えますが、11700のCPUダイ自体はTDP125Wの11700Kと同じもののはず。選別は行われているでしょうが、ギリギリなんとかいけるかも。参照用の80Wおよび95Wは旧BIOSで調査したものです。

(65W)57分00秒→(80W)51分39秒→(95W)50分29分→(125W)51分05秒

誤差の範囲と言えますがむしろ落ち、完全に速度が空回りしていることがうかがえます。CPUの熱量が増えただけでクロックは95Wと比べても全く上がりませんでした。

5.PL2のTDPを上げてみる
最後の手段です。PL1は125Wに、そしてPL2のTDPを調整して、これまでの"自動"からデータシート上最大表記の224Wに設定してみました。結果は

51分49秒

落ちました(笑)。まぁ、この結果になりそうなのはエンコード開始直後に分かりました。今まで以上に早く、わずか数秒で4.4GHz状態から3.5GHz前後に落ちてしまったからです。多分一瞬で安全装置が働くレベルの高熱に達してしまったんでしょう。エンコード中のクロックはほぼ同等だったのでその分遅くなったというわけです。


と、いうわけでいろいろあがいてみましたが、11700で前回以上のパフォーマンスを出すのは無理でした。ここまでやってみて分かったのは、11700はTDPによるクロック縛りの他、負荷時によるターボ機能の縛り、クロックの限界を持たされている、ということです。何度も書いているように11700はエンコード開始直後には4.4GHzにクロックが上がり、この時点では猛烈なfpsを稼ぐのでRocket LakeのIPC上昇の高さを感じます。ただ、それが終わってしまうとTDP65W時で3GHz、95W以上時で3.5GHz前後に収まってしまい、エンコード作業が終わるまで4GHz以上に上昇することはありませんでした。TDPを上げてもクロックはそれ以上上がらないので意味はなく、ただCPU温度が上昇するのみです。ここから一つ断言できるのは、わたしの環境では4.4GHzまでクロックが上昇するのは、アイドル時やそれに近いほど負荷が少なく、クロックが低い時からのみ、ということです。実際、エンコード途中にポーズを入れて一時停止し、クロックが下がったことを確認してから再開すると再び4.4GHzに上昇します。ひょっとしたら1分ごとに5秒くらいの割合でエンコードを一時停止するようにしたらエンコード速度は速くなるかも知れません。面倒くさすぎるのでやりませんが。一部商業サイトで、たかが2~3分で終了する動画エンコード結果を掲載し、「第11世代は動画エンコードも速くなっている」と評していますが、あの短さでは開始時のブート効果の影響が大きすぎ、我々のような数十分以上の長さの動画エンコードのデータの参考にはなりません。

そこそこ負荷のかかっている3.5GHz時でもまだ発熱量には余裕があるように思えます。ならば適度にターボを解放してくれれば少なくともエンコード速度は上がるのでは・・・と思うのですが、実際にはやってくれません。その理由はどこにあるのか。
一番に考えられるのがCPUの思想、初めからそういうものとしてコア設計が行われたという点。ベンチマークのスコアやゲームのfpsを稼ぐことを第一とした場合、このやり方は決して悪くありません。それらGPU処理の多いソフトの場合、CPU処理の負荷が少なくなる瞬間が必ずあるので、その間にクロックを落とし、負荷がかかったと同時にクロックをマックスにする、これで総合消費電力は少し抑えながらCPU能力を1ランクアップさせることができるのですから。いまだ古い14nmを引きずり、7nmのRyzenに比べて発熱量・消費電力において不利なのが現行のCoreですから、そうするのもやむを得ないかと。だとすると、ブランド面でも価格面でも上ながら同じ8コア16スレッドのi9、特にTDP65Wの11900の挙動が気になりますが。

そこで第二の理由として考えられるのが、CPUの差別化という点。i7は低負荷からでないとクロックがマックスになりませんが、i9は発熱状況などを見て適度にクロックをマックスまで上げるよう調整されているかも知れません。この予想が正しいとしたらi9 11900のエンコード速度は大きく上昇し、4750Gを上回るかも知れません。そうでもないとi7のi9の価格差が納得いかないものですし。もっとも、この妄想が正しいとするとi9がi7に比べて特別な機能を持たせて優秀というよりi7が性能を抑えることで相対的にi9の上位をはっきりさせて価格を上乗せする理由にした、という消費者にとってうれしくない差別化ということになってしまいますが。ベンチマークでは出づらい結論なのですが、一度確かめてみたいです。

第三の理由として考えてみたのがチップセットの差別化。わたしは今回ミドルクラス向けのH570を使用しましたが、第11世代向けにはよりハイクラス向けのZ590が存在します。チップセットの差別化のためにH570はCPU性能が出にくいように調整、とまではいかなくてもGPU性能維持のためにCPU性能は抑えられた状態でしか使えないようになっているかも知れません。前回も書いたA10-7800とロークラスのチップセットを組み合わせたときの挙動がまさにそれでして、ハイクラス向けのチップセットではcTDPを使ってTDPを低下させるとCPU・内蔵GPUとも適度に性能が低下したのに対し、ロークラス向けではゲームを重視したのかGPU性能やゲームのベンチの性能はほとんど低下せず、CPUの負担ばかりが高いソフト(もちろん動画エンコード)では大幅に性能が低下する、という動きになっていました。IntelのCPUでCPU性能より内蔵GPU性能を重視する仕様のチップセットにして誰が喜ぶんだ? という疑問もあるでしょうが、チップセットを作っているのもIntelですし、ディープラーニング向けとしてXeグラフィックを今後重視するのが同社の戦略ですから、あり得ない話ではありません。

第四の可能性としてわたしがド外れを引いて性能が出ないだけ、ってのも無きにしも非ず。なにせ中央のねじ止めをすると起動しなくなる謎のマザーだからなぁ。ただ、その場合はそもそも安定して動かないはずだし、限りなくゼロに近いけど100%の否定はできない、ということにしておきましょう。

いずれが正しいのか、これは試してみるしかありません。が、テストのためだけに高いCPUやチップセット搭載マザーボードを買うつもりはありませんし、経済的余裕もありません。当店の経営者が無能ということもありますが、このご時世のあおりを受けて店の経営は芳しくなく、会計事務所から「給料減らして経費削減も考慮に入れてみますか?」と言われているくらいです。最近投資に力を入れているのは、せめてたまに買うPC用のパーツ代くらいそこから賄えないか、という思惑もあるからなのです(実際今回のIntelセットはその利益から買っている)。実験のためだけのハイクラスを買う予算があるなら、近々来る予定のRyzen5000GなAPUや、次の世代のIntelCPUのために確保しておきたいです。個人じゃぁ当然そんなものでしょうし、だからこそ商業サイトは他と同じネタばかり掲載するんじゃなくて手を変え品を変えてやって欲しいんですが。


AMD派のわたしではありますが、別にIntelCPUの欠点を暴きたいために今回のCPUを買ったんじゃないんです。むしろ最新に相応しい性能を発揮し、次に買う予定の5000Gシリーズ(買えるかどうかはおいておいて)と堂々と渡り合うIntelCPUが欲しかったんですよ。最近のIntelCPUは一~二世代くらいは飛ばす、という買い方をしていたんですが、現状のこの性能では次もすぐ買わざるを得ません。ある意味イヤな商売の仕方だなぁ、儲かるやり方とはこういうことを言うんでしょうか( ..)φメモメモ。その代わり、次々世代のAPUはZen3でかつGPUがRDNAに変更らしいので多分飛ばすでしょうが。IntelとAMDの立場が私の中でも逆転しつつあります。
これ以上わたし程度のユーザーにどうこう言われることのないCPU、出してくださいよIntelさん。もちろんGPU性能も期待してますよ。
コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 第11世代Core検証編 ちょっ... | トップ | 「GODZILLA vs. KONG」日本版公... »

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (siinamon)
2021-04-28 12:26:23
2019年末にRYZEN3600に移行し損ねたのですが、なおさら今は新規一転するタイミングではない気がしてきました…

AMD -> AM4の打ち止め間近そうで手を出しにくい
インテル -> 商業ベンチはもちろん、こちらでの結果も踏まえると手が出ない。そもそもインテルはプラットフォームをちょくちょく変え過ぎでNG。

しかもこの不景気でPCにお金もかけにくい…本当に2019年が乗り換えタイミングとしてはベストだったんだなと今更後悔。
幸い自分はハードウェアキャプ運用メイン、AMD FXでも全然問題ないので焦ることもないのですが。
むしろHDDがマイニング関係で値上がりしつつあるとかの方が焦ります;;
返信する
Unknown (krmmk3)
2021-04-28 15:57:06
>siinamonさん
今ほど移行のタイミングが悪い時期もないですね。Intelも次はまたLGA変更だそうですし、性能面からみても一世代のためには薦められません。
それ以上にいまだに続くマイニング需要の悪影響・・・。楽しみでPCを使う人間にとては本当に迷惑な話です。落ち着いてほしい。
返信する
Unknown (メカウサギ)
2021-04-30 16:29:43
検証お疲れ様です。

Rocketlakeがベンチマーク以外振るわないのは何なんでしょうかね…。
インテルが宣伝してたゲーム系も前世代と同等かちょっと負けてるのもあるみたいですし;;
うちは3900Xから5950Xに変更してゲーム性能爆上がり&エンコード性能が1.5倍になり
エンコード時の消費電力も3900Xから30W~40Wも落ちて大満足してたりしますが。

なんか申し訳ない気持ちになりました…。
返信する
Unknown (krmmk3)
2021-05-01 11:10:52
>メカウサギさん
ベンチマークの数字がいいのは、テストの合間にCPUの休息時間があるのでブーストが効きやすくなっていること、商業サイトで使われているのがK付きばかりなので場合によってはOCで対応していること、があると思います。
わたしの場合狙いはあくまで8コアでTDP65Wなので問題はないです。ただ、確実に登場するRyzenのそれに対抗させるには11700は完全な力不足だったのが発覚したのが残念です。
返信する

コメントを投稿

意味なしレビュー」カテゴリの最新記事