今日、fixstarsのサーバーからアクセスがありました。fixstarsと言ってもあまり聞きなれないかも知れませんが、CE-10の開発・販売元と言えばわかるでしょう。
やっぱり価格改定・契約方式の変更の世間の評判が気になるんでしょうね、当然と言えば当然ですけど。多分他のブログとかもいくつか回っているはず。でも、取り上げているところ少ないみたいです、残念ながら。
しかし、せっかくの価格改定およびキャンペーン価格。なら買おうか買わまいか、このギリギリになっても悩んでいる人もいるはず。と、言うわけで、少し考えをまとめてみましょう。なにせ、PCで録画する人間は、大なり小なりエンコードに興味が無いわけはありませんからね。タイムシフト的な録画視聴を行うだけなら、テレビ+レコーダーでも十分だし、確実性もPCより高いですから。デジタル放送の録画規制のために規模が小さくなる一方のテレビの録画市場ですし、録画した番組を保存という習慣も一般には無くなりつつあります。が、それでもなおPCで規制の影響を受けないチューナーを使い、番組を手元に残そうとしている人たちは、きわめて熱心な精鋭の集まりであるとも言えます。もうこの分野に一般向けの製品など不要、こういうよりコアな層に訴える魅力の提供こそ重要なのです。「速度」というのはその魅力の一つであり、それを掲げて、脱CPUエンコーダーがここに三種集いました。もちろんどんなに時間がかかってもCPUエンコードこそ至上と考える人もいて当然ですが、それでは間に合わない人にとって、速度の速いエンコーダーは別の輝きを持っています。CE-10は果たしてそれにふさわしい存在でしょうか。
CE-10の長所:
まず、他の脱CPUエンコーダー、CUDA/SpursEngineと比較して画質が良い点があげられます。厳密に言うと、わたしはCUDAのエンコーダーとCE-10の比較は行っておらず、両方をSpursEngineのものと比べた場合の相対比較となりますが、CE-10が同解像度・ビットレートの破綻が一番少ないようです(なお、他サイトは画質比較をアニメのみで行うのが通例のようですが、わたしは画質比較にアニメを基本的に使いません、よそでやってるので)。ちなみにATI Streamは現状では評価の対象にならない画質でしかエンコードできない、という話です。
第二に、エンコードのために導入した機械を、別の用途でも活用出来るという点では、少なくともSpursEngineには大きく勝ります。SpursEngineは本来はもっと多様な能力を持っているはずなのですが、当初の期待と違ってあまりソフトの対応が進まず、いまだにエンコード以外にほぼ使い道がない状態です。SpursEngineを多様に使うには搭載のノートPCを買うしかないので、我々としてはコストパフォーマンスがいいとは言えません。一方CUDAはといいますと、これはGeForceの持つ高度な3D表示機能が使えます。VGA機能はPCを扱うには絶対に必要なものですから、せっかく買うのなら、とCUDAがバリバリ使えるSPの多いGeForceを選べば、コストパフォーマンスは高くなる、ということにはなります。ですが、その高い3D機能を生かすゲームを、動画メインのユーザーはあまりやりません。動画の再生だけなら、ロークラスどころかチップセット内蔵タイプでも必要十分なものが出てきていますので、それらを使えば、結局GeForceはCUDAを使うためだけのものになってしまい、コストパフォーマンスが落ちてしまいます。その点、CE-10に必要なPS3は優れています。もちろん基本はゲーム機ですが、その優れた動画再生能力はゲームに興味の無いユーザーでも満足のいくものになります。BDやDVDの再生だけでも同価格世帯のプレイヤーに負けない性能を持っている上、PCに保存してある多くの動画ファイルをDLNAを経由してそのまま再生することが出来ます。もちろんPCと比べれば柔軟性は落ちますが、それでも他のプレイヤーよりは多彩なフォーマットに対応していますし、それらをまるでレコーダーで録画した番組のように、大型テレビで呼び出して視聴することが出来ます。DLNAのサーバーソフトも
PS3 Media Serverなら動画ファイルを放り込むだけ~たまに再起動したほうがいいですけど~なので、楽です。CE-10でエンコードしたものをPS3で再生という連動した活用になります。
第三には、国産のソフトエンコーダーであることです。SpursEngineはEngine内の専用チップがエンコードを行うため、大幅な改良はハードそのものが変わらない限りありません。CUDAは、こちらもソフトエンコードではあるのですが現状どのソフトもnVIDIAの開発したライブラリを使ってエンコードしているので、あまり柔軟な対応がなされていません。エンジン部分をソフトメーカーが自由に調整できるようになれば、将来の改良も期待が持てますが。
CE-10は国内の開発者によるエンジンなので、我々向きの柔軟な調整がなされるような小回りが期待できます。要望も、他と比べれば届きやすいでしょう。そういう意味でのサポートの期待も、CE-10の長所と言えます。
CE-10の短所:
比較すべき両者と比べて、特にHD画質において速度が速いとはいえない点でしょう。もちろんCPUと比べれば高速ですが、CPUエンコードに拘る人にとっては、仮に取って代わる存在があるとしたらそれはCPUの処理を全てエミュレートして、速度だけが単純に上昇するエンジンであり、それ以外の手段は全て眼中に無いものと思われます。CE-10も補助として使うCPUの速度が上がれば少しは速度上昇のありえるようですが、本末転倒でしかありません。画質も、特にアニメのエンコードを絶対と考える人にとっては、必ずしも良いものではないようです。
また、仮にPS3を買うことを考慮に入れない値段と考えたとしても、キャンペーン価格の15480円を持ってなお少し高く、先の長所に上げた「購入したハードのエンコード以外での活用」の長所を帳消しにする程度の値段になってしまいます。また、バリバリPS3を活用したい人にとってPS3を使うエンコーダーというのは使い方の難しいものです。なぜならCE-10を使っている間、PS3が使えないのですから。また、CE-10のモードからPS3の標準OSに戻すための作業(2回音が鳴るまで電源ボタンを押しっぱなし)や、その都度初期設定をしなおす必要があるなど、PS3の使い勝手を悪くする原因にもなります。エンコード終了と同時にPCとPS3の両方の電源をオフにして、PS3を次回立ち上げのときのモードを選ぶことが出来るようなバッチ処理が可能なら、ある程度勝手をあげることも出来ますが。
ただ、速度的な問題を除けば、今後の改良は十分ありえます。なにせ、バージョンアップの保守費用を用意しているということはそれだけ改良を長く行う気がある、という意思表示だからです。改良点を求めてユーザーの意見に対しては大いに耳を傾けてくれることでしょう。CE-10を選ぶとしたら、そういう将来に期待する、あるいはPC内部に余計なノイズの元となるボードを置きたくない、けどある程度速度のあるエンコードがしたいなどといった用途が主になると思います。ただ、最初に書きましたが、PC向け動画ソフトにはすでに一般向けの要素など不要ですから、こういうニッチ狙いのソフトでいいと思うのですよ。にしても、規制されないtsでの録画が出来て、本当に良かったと心から思います。そうでなければPCの動画は事実上絶滅させられ、こういうちょっとでも面白そうと思うソフトは、興味を持つどころか出ることすらなかったでしょうから。