楽園の復活―マイ・コールド・プレイス― ⑧
私が惹かれるたぐいの抒情詩を作る人間はみなおのおのの「冷めたい場所」に立っているように思う。これもこのごろ出会ったD・G・ロセッティのつぎの詩などは、まさしく自分が「冷めたい場所」に立っていることに気づいた瞬間の心を描きとめた作品であるように感じる。
I have been here before,
But when or how I cannot tell
I know the grass beyond the door,
The sweet keen smell,
The sighing sound, the right around the shore.
You have been mine before, ――
How long ago I may not know;
But just when at that swallow’s soar,
Your neck turned so,
Some veil did fall, -―I knew it all of yore
わたしはむかしここにいた
いつかも どうかも知らないが
たしかに知っているのだ
戸口の向こうの草はらを
あまい するどい芳香を
ため息めいたこの音を 水辺のまわりの煌めきを
むかしあなたを手にしていた
どれほどむかしか知らぬまま
けれど つばめが立ったとき
あなたの首がふりかえり
なにかのとばりが落ちて――ただみな過ぎたことと知る
(D・G・ロセッティ「ふいに光が」)
伊東静雄がその背を見送る「私が愛し、そのため私につらいひと」が、ここではただ「あなた」と呼ばれる。いったいこの「あなた」とはだれか? 作者たちが男性であるからにはやはり女性であろうか?
続
私が惹かれるたぐいの抒情詩を作る人間はみなおのおのの「冷めたい場所」に立っているように思う。これもこのごろ出会ったD・G・ロセッティのつぎの詩などは、まさしく自分が「冷めたい場所」に立っていることに気づいた瞬間の心を描きとめた作品であるように感じる。
I have been here before,
But when or how I cannot tell
I know the grass beyond the door,
The sweet keen smell,
The sighing sound, the right around the shore.
You have been mine before, ――
How long ago I may not know;
But just when at that swallow’s soar,
Your neck turned so,
Some veil did fall, -―I knew it all of yore
わたしはむかしここにいた
いつかも どうかも知らないが
たしかに知っているのだ
戸口の向こうの草はらを
あまい するどい芳香を
ため息めいたこの音を 水辺のまわりの煌めきを
むかしあなたを手にしていた
どれほどむかしか知らぬまま
けれど つばめが立ったとき
あなたの首がふりかえり
なにかのとばりが落ちて――ただみな過ぎたことと知る
(D・G・ロセッティ「ふいに光が」)
伊東静雄がその背を見送る「私が愛し、そのため私につらいひと」が、ここではただ「あなた」と呼ばれる。いったいこの「あなた」とはだれか? 作者たちが男性であるからにはやはり女性であろうか?
続
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