海軍大将コルシンカの航海日誌

ロシアの作曲家リムスキー=コルサコフについてあれこれ

習作としてのフーガ

2020年05月05日 | ピアノ曲
リムスキー=コルサコフが、バラキレフの直感に重きを置き、論理性を軽蔑した作曲方法から決別し、基礎から自ら学び直して、訓練された職業作曲家として大成したことはよく知られるエピソードです。
彼がその転換期となった1873年頃から、対位法の勉強のためにノートにたくさんのフーガやフゲッタを書き残しました。
それらはソ連時代に刊行されたリムスキーコルサコフの楽譜全集において、ピアノの作品としてまとめられています。

これらの曲は文字どおり習作ですので、独立した音楽作品としては演奏や評価の対象とはほとんどなっていません。
しかし、ディレッタントの作曲家の成長の過程を知る上では、貴重な材料を提供してくれるものとなるでしょう。

こうしたフーガやフゲッタとして残された作品のリストは、文献によっては多少の混乱がみられ(まあ、重要ではないから適当なのでしょう)、例えば手元にある三省堂『クラシック音楽作品辞典』*では、漏れている曲がある一方で存在が確認できないもの(作品17とは別の作品番号のない《6つのフーガ》)が登場していたりするのです。
(*第3版では訂正されていました。)

そこで、楽譜全集に基づき、改めて整理してみると以下のとおりとなります。

4声のフーガ ハ長調(1875)〔のち四手に編曲〕
2つの3声のフーガ(1875)
 1.ト長調  2.ヘ長調 〔→op.17-2〕
3つの3声のフーガ(1875)
 1.ホ長調 〔→op.17-4〕  2.イ長調 〔→op.17-5〕  3.ハ短調 〔→op.17-1〕
3声のフーガ ニ長調(1875) 〔異稿あり〕
ロシアの主題による3つのフゲッタ(1875)
 1.4声のフゲッタ ト短調  2.4声のフゲッタ ニ短調  3.3声のフゲッタ ト短調
3つの4声のフーガ(1875)
 1.ハ長調 〔→op.17-3〕  2.二重フーガ ホ短調 〔→op.17-6〕
 3.二重フーガ ト短調(BACH)
3声のフーガ ト短調(1876)

なお、上記の作品の中でも作曲者は出来映えが良いものを6曲選んで、作品番号17を付けて出版していますが、楽譜全集では重複を避けるため、「作品17」としてのまとめ方はされておりません。
この作品17の6つのフーガは、オルガンで演奏したものがYouTubeにアップされていました。
オルガンでの演奏は雰囲気があってよいですね。
(1曲目は《熊蜂の飛行》でびっくりしますが、その後に演奏されます)

Rimsky Korsakov orgue (Fugues)
Jean-Pierre SILVESTRE

***

さて、このリストの最初に挙げたハ長調のフーガは気に入ったのか、作曲者自身により四手ピアノ版に編曲されています。
もともとのソロと印象が変わるものではありませんが、DTMで入力した四手版をご紹介します。

  Nikolai Rimsky-Korsakov : Fugue in C Major for 4 Hands
  ♪リムスキー=コルサコフ : フーガ ハ長調 四手編曲版 MP3ファイル


変なクセもなく、明るく正しいハ長調、といった作品ですね。