地球の裏からまじめな話~頑張れ日本

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通常のCBの発行から流通まで

2005-05-31 05:18:52 | CB教室
さて、今回はMSCBではなくてごく普通のCB、ユーロ円CBとかアルパイン円CBとかがどのようになっているのかをざっと説明しておきたい。
この辺をきっちり押さえていないと、いざ投資している会社がCB発行、となった時に冷静な判断がくだせなくなる恐れがあるので、きっちり学んで下さい。

ちなみに東証が国内円CBをずっとないがしろに放置していたために、日経新聞の転換社債市場欄をご覧になれば分かるが、この国内円CBはずいぶんと数が減り、かつほとんどが「気配値」のみの記載となっていて如何に流通量が無いか良くお分かりになると思う。
東証で国内円CB(ドメ、と我々は呼んでいる。ドメスティックCBのドメ、である)を発行する場合、発行決議直後に値決めが出来ない。通常1週間程度時間を置いて転換価格を決定しなければならないので、これを発行体が嫌がっている。また流通量自体が極めて少ないため、発行後のマーケット(セカンダリーマーケットと呼ぶ)にあまり期待が出来無いのを、これは引受業者及び投資家が嫌がっている。
ゆえに引受業者はCB発行候補企業に対して、ユーロまたはアルパインCBでの発行を勧めているのが現状だ。
ちなみにユーロとはロンドン市場にて発行されるCB、アルパインとはスイス市場で発行されるものをそれぞれそう呼んでいる。

ユーロとアルパの違いは何か。
ユーロで発行する場合はそのCBは必ず何処かの取引所に上場することが義務付けられている。ロンドン市場でもルクセンブルグでもどこでも良いからとにかく上場する。もっとも実際の取引はその上場した取引所で行われるわけでも何でも無く、ほとんどが相対取引にて行われる。
一方、アルパの方は上場義務が無い。その分発行手続きが簡素化され、発行費用も安く済む。
しかしながら大きな発行体は上場する事に割とこだわったりするので、現在各引受業者は、総額100億円を一つの目処として、100億以下はアルパで、100億以上はユーロでの発行に誘導している。

ちなみにユーロもアルパも値決め(転換価格の決定)は、発行企業が取締役会で発行を決議した直後に決めることが出来る。
つまり本日の午後3時に取締役会にて発行が承認された場合、結局その日の終値を基準に後はプレミアムをどれほど載せるかが決定され、それがそのまま転換価格となる。
ちなみにプレミアムのインディケーションは引受業者よりレンジが発表され、それを元に需要を募り、その状況次第でプレミアムが決まる。
例えばA企業100億の起債が決定され、プレミアムレンジが15~20%、のようにアナウンスされ、それに基づいて引受業者(主幹事)は投資家に需要を募る。
投資家も、プレミアム15%なら10億、プレミアム20%なら3億、のような感じで主幹事に応募する。

それでプレミアムが決定されると、いよいよ100億円の投資家への配分が始まる。それと同時に「グレーマーケット」と言うのが勝手に立ち、A社CB現在103-103.25、のような気配値が続々と業者間を行き来する訳だ。
これは私のところにももう年中来ていて、顧客から注文があった場合、そういった業者にコンタクトを取って、出来る商売はやる事になる。

さて翌日はダイリューションの影響を受けて株価は大体下がるが、それをも既にグレーマーケットでは折込に掛かっているので、多少の株価下落では翌日のCB値段はそんなに下がらない。
この翌日からセカンダリーマーケットが開始され、現在約6社が値付け業務(マーケットメイク)を行っている。ここに私も入っている。
ちなみにある程度の強制的流動性を保つ、と言う観点からこの6社は「ノック フォー ノック(Knock For Knock)」と言う方法にてマーケットメイクを行っている。
これはこの6社はお互いにファームプライスの出し合いをしているのだ。
私がX社にこのA社CBの値段を聞く。
X社はそれに対して、例えば103-104、のような値段を私に出す。
私はX社に対して103なら2千万円売れるし、104なら2千万円買える。
と言う具合だ。

CBやワラントの発行が盛りし頃は、マーケットメーカーだけで20社近くあった事もあった。
ただそのやり方なりを規定する規則と言うものがいっさい存在しなかったため、当時各業者間で「紳士協定」を結び、それが現在も「マーケットルール」として踏襲されている。
かつて私がDでこのメイクをやっていたときに、N社の知り合いとさらなる追加協定を2人で決めて各業者に伝達してそれが採用になった、何てこともあったなぁ(遠い目~(笑))。
いやあの当時はNとDで決めた事に対して真っ向から反対できる業者が無かったって言うのもあるが(笑)。

このような過程を経て、ユーロなりアルパのCBはローンチ(発行)され、そして流通していくのだね。

ここまでは宜しいか?

ちなみにMSCBは一切流動性が無いので、マーケットメイクの対象になんてもちろんならない。
昨日書いたように、MSCBは全て引受業者が全額「がめる」ので、セカンダリーマーケットは存在しない。
業者間をさらにつなぐいわゆるインターミディエート・ブローカーと言うのがロンドンにはいくつもあるが、彼らは日本語が読めないので、どこかがCBの発行を決議すると何人かは私に聞いて来る。
「この詳細を教えてくれ」ってね。
それが仮にMSCBだったりすると奴らは「OK,Private Dealだね、じゃあもういいわ」ってな感じの反応になる(笑)。

続きはまた書く。