地球の裏からまじめな話~頑張れ日本

地球の裏から日本頑張れ!の応援BLOGです。
証券関係の話題について、証券マンとしての意見を述べていきます

「今さら人に聞けない質問」シリーズへのお答え

2005-12-30 07:52:15 | CB教室
またまた拙BLOGでは間が開いてしまいすまぬ。
さて、前回の記事にてコメント欄にやまどらさまからお寄せいただいたご質問、CBを理解する上では非常に大事なご質問であるので、ここで頑張ってお答えしてみようと思う。
上手くポイントを付いた回答が示せるとは、恥ずかしながら思えないのであるが、何かのご参考になれば幸甚であるね。

さて、まずはご質問・・・

『CB=社債と株式のコール・オプションの同時保有、ということだから、その価格は社債の格付け(社債の価値)とコール・オプションの価格、及び株価に依存する、と認識しています。
然らば、コール・オプションとしての価値、即ち転換価格も重要な価値の要素となるかと。これは、Black-Scholesの公式を用いて計算されましょう。

そこで、発行時に変動し得る未確定な要素は、ボラティリティσだけだと思います。

これらを踏まえると、CBの価格形成&転換価格決定スキームでは、
1.幹事会社がその時点で持っているσで、転換価格の仮条件を一旦算出し、
2.投資家が、独自のσから独自の妥当な転換価格を設定し、割安である限り、購入のbidを入れる
3.投資家同士が競合し、妥当なσから妥当な転換価格が形成される。
であるべきなのかなと思います。

しかし、仮に発行前(公表前)に転換価格が最初に決められているとするならば、もっと単純にCBの価格そのものが上がったり下がったりするだけになるのかと思います。
然らば、
主幹事会社の選定においては、設定する転換価格が大きなポイントとなる、と考えます。いかがでしょうか。
もちろん、もうひとつの要素として、スプレッド分(一般に2.5%程度?)の多寡もありますが。』

いやはや実に良くご存知ではないか!!

これに対するお答えに関してまずは実際我々がある銘柄においてCBの単独主幹事を獲得した場合の流れをご説明してみよう。
またそのCBは、ではアルパイン(スイスにての発行)とし、通貨は円としてみる。発行会社を仮にA社とする。

まずは主幹事獲得の前段階として当然の事ながらある種のコンペが行われる。
A社に資金需要がある場合、各証券会社はその調達方法を提案する。A社は当然彼らの意向に沿った調達方法(この場合はCBによる資金調達としよう)を提示した証券会社を何社か選定し、今度はそこで選定された証券会社による条件コンペが行われる。A社としては当然自社に一番有利な条件を提示してくれたところ、またユーロやアルパであった場合、海外においてきちんと販売を行える証券会社を選定することになる。
この段階でまずは現地の我々に東京のECM(引受部、Equity Capital Marketの略)の担当者から軽いヒアリングがある。

「実は○○業界(当然会社名は出さない)で規模は中規模の会社がアルパを検討しているのですが、条件はどんな感じなら販売出来そうですか?」

ここで言う条件とは何か?これがやまどらさまへのお答えの一つになるかなぁ。

発行総額
発行価格、オファー価格
クーポンの有無
年限
PUTオプションの有無
ソフトコールは120%か130%かどの程度か
イニシャル・プレミアム
下方修正条項の有無、あれば何年後でフロアーはどの程度か
グリーンシューの有無

等々である。(もちろんダイリューション、全額転換所要日数等もあるが、ここでは基本部分のみ書いておく)
この段階で当然ECMはA社のボンド価値を類似会社と比較して仮定し、さらにインプライド及びヒストリカルなボラを出して、様々な組み合わせを考慮している。
我々サイドとしてはとにかくそれを顧客であるCB投資家に販売するわけであるから、なるべく我々の顧客寄りになるような条件が欲しい。つまりプレミアムは低けりゃ低いほど良いし、PUTは無いよりある方が良いし、下方修正条項だって無いよりある方が良いし、さらにある場合はフロアーは低けりゃ低いほど良いわけであるね。
対するECMとしては、当然他社とのコンペをやっているわけであるから、彼らにとっての顧客、すなわちA社寄りの条件を提示したいわけであり、条件面では全て我々の反対になればなるほどこのディールが取れる確率が高まる。
ここでECMと現地セールスサイドが条件面で様々なせめぎあいをする。
我々もECMもお互いプロだから、そうは言ってもある程度の落とし処みたいのは心得ている。と言うのはいずれにせよこのディールを取れなければお互い金にならない、つまり会社として儲からないわけであるから。
ECMとしては、ここまでは現地に譲歩出来る、と言うモノを持っているはずで、それよりも譲るとディール自体を取れない、と言う感触はあるようだ。

さて、そのせめぎあいの末に、弊社としてA社に提示する条件が固まり、そしてそれがA社に承認された。
そして、ローンチ当日にそのアナウンスが我々に初めて来る。
この段階で日本は午後2時としよう、スイスは冬時間として朝6時。
「例のA社の件、決まりました。本日東証の引けに合わせて取締役会にて発行が承認されて、引け後に公表されますので、それでローンチとなります。条件は・・・」
(注~この段階では発行が承認される、そして東京時間の本日中つまり夜中の12時までに最終条件が決まった段階でそれも承認を受ける)

東証の引けは午後3時、スイス時間で朝7時である。この段階で正式にスイスでのA社のスイスでのCBの発行が公式発表され、我々の出番が来る。

さてその際の条件であるが、

発行総額→ほぼ決定
発行価格、オファー価格→ほぼ決定
クーポンの有無→ほぼ決定(但し現在はゼロが当たり前なので)
年限→ほぼ決定
PUTオプションの有無→有無はほぼ決定、ある場合はPUT価格に幅
ソフトコールは120%か130%かどの程度か→ほぼ決定
イニシャル・プレミアム→?
下方修正条項の有無、あれば何年後でフロアーはどの程度か→?
グリーンシューの有無→ほぼ決定

しかしながら「?」の部分も上限下限はそれぞれインディケーションがあるので、?とは言っても大体の枠は決まっている。それでECMとA社は握っているわけだ。

さて我々セールスサイドは一斉に顧客に詳細を連絡する。例えば、

銘柄はA社
発行総額→65億円
発行価格、オファー価格→発行価格@100、オファー価格@102.50
クーポン→ゼロ
年限→4年
PUTオプション→有、2年後@100
ソフトコールは120%か130%かどの程度か→130%で連続30日以上
イニシャル・プレミアム→5~15%
下方修正条項の有無→2,3年後でフロアー70%OR80%
グリーンシューの有無→有、5億円

これらの条件を顧客に提示して、我々は一斉に需要を積んでいく。
例えばある顧客の反応は、
「プレミアム5%~10%なら10億、それ以上なら5億」
「プレミアム10%までなら10億、下方修正フロアー70%ならさらに5億」
「10億@MKT(これは全ての条件が上限で決まっても10億買う、の意)」
などなど。

大体スイス時間の午前中2~3時間程度でわぁ~~っと需要を積んで、それを元にECMはA社と最後の条件の詰めに入る。そしてスイス時間の昼過ぎ頃(日本は夜8時頃)に最終条件が決定され、そして我々サイドにて投資家への配分会議が開かれて、何処へ1億、あそこへは5千万・・って感じに配分を決めて、自己に残す分やら東京や他店への配分も決めて、そして配分の連絡を顧客に一斉に行う。
その段階でこのCBは正式に世の中に流通を開始し、私がずっとやっていたマーケットメイクが始まるのであるね。(私は個人的にドンパチと呼んでいるが)


さて、ここでやまどらさんへのお答えである。
『主幹事会社の選定においては、設定する転換価格が大きなポイントとなる、と考えます。いかがでしょうか。』

設定する転換価格の絶対値と言うよりも、イニシャルプレミアムがいくらか、が焦点になる。
A社の本日の引け値が仮に1000円とした場合、5%プレミアムなら転換価格は1050円、15%なら1150円になる訳であるから、意味は同じであるが。
但しCBモデル等においては「プレミアム何%」と言う風に入れるのが通常であり、我々もプレミアムにこだわる、と一応付記させていただこう。

やまどらさんの決定スキームの1と2はまさにその通りの事を我々は通常行っている訳だが、3に関しては少々見方が異なる。
もちろん当該株価のボラから妥当なプレミアム等が算出される、或いはこのCB価格の理論価格が、ボラやプレミアムから算出されるわけであるが、これは投資家同士の競合によっては決定されない。
もちろん我々販売サイドが投資家の需要を積む段階で、余りプレミアムが高すぎると需要が極端に減ってしまう、と言う様な結果が出た場合、それに基づいてプレミアムが5%になることもあるので、そういう意味では合っているが。
と言うのは、このイニシャルプレミアムの幅は5-15%と言う感じに当初は成っている、成っているが実際は大体が上限で設定されるようになっているのだね。
万が一を考えて幅を持たせている、と考えて頂いた方が実態に近い。

ちなみにやまどらさんのおっしゃる、
「仮に発行前(公表前)に転換価格が最初に決められているとするならば、もっと単純にCBの価格そのものが上がったり下がったりするだけになるのかと思います。」
に対しては、新規発行の場合は、公表前に転換価格が決まっていると言うのは一般的には無い。第3者割り当て方式等の場合はその限りではないのであえて「一般的には」と付けさせて頂いたが、通常のCBではそのケースは無い。
前にも書いたかも知れないが、発行公表後、転換価格を即日決定出来るのが、ユーロなりアルパの魅力であり、東証上場のCBの場合は公表から転換価格決定までに約1週間程度掛かる。それは単に有価証券発行届出書だかの効力発生にそれくらいの時間が掛かる、と言う事であって、これが改善されなければこれからも一般企業がCBを発行する場合はユーロやアルパが主流になる。
何故ならば、CB発行を公表した途端株価が動き出すわけで、1000円程度の株価での発行を目論んでいたA社、しかし1週間後にはその発行が嫌気されて株が下がって結局900円程度にての発行となってしまえば、彼らの当初の計画にずれが生じるからであるね。
但し転換価格が決まった後のCB値段の値動きは当然ある意味その株価の変動によってCB価格も上がったり下がったりする単純な動きになる。

さて、最後に、発行会社においての主幹事選定ポイント(と言う理解で宜しいでしょうか?)は、設定する転換価格が大きなウエートを占めるか?とのご意見であるが、単に大きな意味での主幹事選定のポイントと言うのは、如何に当該会社にとって有利な条件を提示出来るか?と言うのが基本です。
またそれまでの付き合いだの何だのって言うある種日本的な部分も相当に絡んで来るのは想像が付くでしょう。
仮に転換価格、つまりプレミアムが大きなポイントを占めるとすれば、その他の条件を大甘にする、なんて事も可能になってしまう訳で。

ロンドンの私の尊敬する(勝手に私は彼をロケット博士と呼んでいるが)K氏によるとCBモデルってのは生株に比べて遥かに不確定な要素が多く、非常に難しいそうで・・・


と、つらつら書いてみましたが、果たしてやまどらさま、答えになっているでしょうか??
また何かありましたらどうぞ遠慮なくお願いしますね!(但しご周知のようにお答えまでこの頃少々時間が掛かっておりますが・・・汗)

またみなさんも、どうぞ遠慮なく、特にこの「今さら人には聞けない」シリーズ、私自身非常に勉強になり、かつまたそれをこのBLOGの一つの売りにしていきたいなぁなんて思っておりますので、どしどし待ってますぜ!!




おおお、木村剛さん効果でヒット激増だぁ!!

2005-12-20 06:44:38 | マスコミ、企業
と言うわけで、久々に木村剛さんにお送りしたTBが彼の記事にて採用されまして、有難うございます!
やはりプロ中のプロの方のご説明が加わると、あのようなあっしの拙駄記事でもちょっと立派に見えちゃって、感無量でございました。

さて、拙日記にも書かせて頂いたが、あの利益返還の動きがここへ来て小康状態な気がするが。
毎日株価やらアナリストレポートやらのチェックと共に欠かしていないのが、みずほとJ-COMに関する記事なのだが(あの情報端末BBと言うのは各企業ごとにニュースが時系列でざぁ~っと出るので便利なのである)、『利益を返還しました』と言う記事にはまだぶつからない。

日記にも書いたが、要は世論がここまで来てしまうと、もうどうしようもないのであろう、と思う。つまり今さら返したって誰も「おお、結局返して良くやったぁ!!」なんて誰も誉めてくれないでしょ?世論はもう「返して当たり前」になっちゃっているわけで。。
当事者のみずほだって、誰ももう「ああ返してもらって本当に良かったね♪」なんて思わないよね。

もっと言えばあの朝日やら日経でも書かれていたけど「寄付はどうよ?」って奴。
これも新聞が書いちゃったからはっきり言ってここで寄付に動いても、もう誰も「おお!なかなか偉いやんけぇ」なんて思わなくなっていると思うんだよね。
寄付をするなら大新聞の世間におもねる百戦錬磨の記者諸氏の一歩先を行かないと効果は無かったと思うな、いまさらだけど。
(決して寄付する必要なんて無い、って言っているのでは無いので念のため。あくまで寄付と言う行為に付随する一種の宣伝効果が全く望めませんね、と言う事なのであしからず)

かつてトマト銀行が出来たときのあるコメントだけはずっと覚えている。それは、『もう2番手は出ませんね』と言うもの。つまりトマトが出ちゃったら、その後セロリ銀行だとかじゃがいも銀行ってネーミングは駄目ね、ってコメントだった。

その辺まできちんとした戦略的プロデューサーが各証券に付いているのなら、まだ可能性はあるけれど、証券会社にそんな広告代理店的要素のかけらもあろうはずも無いので、それは望めないだろうね。
やはりここは、証券マン独特のダラダラ作戦で時間を稼いで、世間がもう忘れちゃった頃に『やっぱりかえすのや~めた』ってのが正解でしょう。
だって返したってそれらの極限のリスクの結晶が何にも役立たないんだし。そりゃあみずほは多少救われるかも知れないけれど、あそこは非上場会社だからね、利益が減って配当が減って困るのは基本みずほホールディングだけですから。(まあそうなるとみずほホールディングの株主の方は少々迷惑するかもしれぬが)
一般の株主、すなわち投資家の方々には、返されようが返されまいが何ら関係がありませんから。
それだったら、リスクの結晶の利益を6社がそれぞれ社内で役立てて個人や法人のハートをつかむ一助にするなり、口座獲得くじ引きキャンペーンでもやって、当たった人には「ビジネスクラスで行く、スイスのプライベートバンクを巡る6日間の旅」にでも使った方がよっぽどインパクトがあるよ。
どうせならどっか1社くらいそういう事をやらないかなぁ、とちょっと期待したりしているが。

木村氏の拙記事のご紹介記事に寄せられているTBをずっと読んだが、当然私の論調が気に入らない方も居るわけだけれど、それはそれで良いと思う。
ただ一つだけ気になったのは、この部分です。(本来ならばその方のBLOGのコメント欄にでも行って、きちんと書くべきでしょうが、まあ勘弁して下さいな、さらに一応ここからは”ですます”調になります)
「金融関係者は、自由という、ちょっと歩き回っただけでは、どこに柵があるのか分からない檻の中で、自分たちがプレイしていることを忘れてしまったのではないですかね」
はっきりと申し上げましょう、金融関係者にとっての柵の外は「刑務所」ですから。これだけは忘れようにも忘れられません。金融業界と言うのはずっと護送船団方式で守られてきた歴史があって、それが崩壊後も結局は余り変わっていないのは皆さんがご存知のところ。むしろ護送してくれる官庁の存在が薄れている今、ゆえに余計その手の事には物凄くナーバスです。ちょっと間違えば(特にこれは対個人投資家において顕著ですが)すぐに社内の売買監査だのコンプライアンスだのってのが飛んできます。これは本当に異常なくらいです。
つまりそういったスタンダードに照らし合わせても、今回の件はそれには引っ掛かっていない、って事が根本にあるわけで、ゆえに利益を返す必要なんて無いよ、と言うのが一般的証券マンの心情なのですね。
サッカーの試合に乗じた例を言えば、相手のプレイヤーが怪我をしてその隙にゴールを入れたのではなくて、相手の凡ミスに乗じて得点をした、と考えるべきだと思っています。それはどの世界でも一緒でしょう、と。

本日はこれにて。

J-COM、今日のポイント記事

2005-12-16 06:24:23 | マスコミ、企業
せっかく吼えながら書いたのに全部消えちゃった、、
全くこれだからPC素人は困るよなぁ。。。
仕方が無いので、今日引用した記事をもう一度引っ張って、簡単なコメントを付記して、今日の私の印象とさせていただく。

『みずほ証券の株の大量発注ミス問題で、業界団体がジェイコム株売買で利益を得たすべての証券会社に対し、利益を自主的に返上するよう異例の要請をする方針を固めました。
利益を自主返上するよう要請をするのは業界団体の 日本 ( にほん ) 証券業協会で、個人投資家の株式投資への関心が高まる中で、株の発注ミスに乗じて証券会社が多額の利益を得た問題で、業界全体のイメージが悪化することを心配して、事態収拾に乗り出したものです。今月20日の日本証券業協会の会合で、今回の問題への対応策として打ち出す見通しです。』

元証券OBの「わしがあの頃は一番じゃった」って言いくさってるじーさん方の集団の証券業協会さん、だから証券業界の年金も破綻するんですぜ。
こんなことしたらもっとイメージが悪化するっつーの。それに百歩譲ったってもう遅きに逸してるっつーの。

ついでに今日のJ-COMの引け値は、122万円のストップ高。ちなみに買い残り株数は10159株。
良いですか、善良な普通の投資家、この株が当たらなかったから、寄り付きで買おう、って思った投資家、今まで持ってりゃ結構な利益が出たんですよ。それを「決済が出来ない」って理由で91万2千円で強制的に決済しちゃったんですよ。彼らの逸失利益はどうするんですか?
今まで普通にもってりゃ、さらに1株約30万円の利益になっていたはずの投資家に対する不公平感はどうするんですか?

それにね、ヒューマンエラーってのはこの世界恒常的に起きるわけです。それらも今後はきちんと面倒見てくれるのか、証券業協会!
一見公平に見える、実は物凄い不公平の典型例じゃん。

『ジェイコムの谷間高・取締役経営管理部長は、大阪の本社で応じ、日興シティの同社株取引について「非常に不快だ」と心境を語る。現在、日興シティがこれまでとった対応について、説明を求めているという。さらに、「今後は資金調達などを実施する場合の新たな相手を探したい」という。
また、谷間氏は、引受部門と自己売買部門との分離を背景に、こうした取引があったのは仕方ないとしながらも「取得事実の開示がほかの証券会社より遅かったばかりか、自らの主幹事で公募し、株を手にした一般投資家の株が値下がりしているなかで、多額の利益を上げるとは遺憾だ」などと述べた。』

これは昨日も書いたように、まあ納得出来るね。
もちろんここでは「主幹事としてストップ安の状態を放置できず、買い向かって値段を支えに行った」くらいの事は本来は言えるのだけれど、ここまで問題を複雑にされちゃったらそれも焼け石に水だわな。。
ただこれをやった自己売買部門を日興は責められないはずだし、もし引受VS自己売買部門のパワーバランスによって当事者達に何か起こったら、この会社も未来はそんなに明るくないよ。
いずれにせよJ-COMに関してはさらっと主幹事交代だね。(主幹事がひっくり返るってのはその担当者にとっては左遷を意味するくらい強烈なことであることを一応付記しておこう)

しかしながらさはさりとて、
『日興シティ広報担当の渡辺直美氏は、同社がジェイコム株取引で得た利益をめぐり、今後の取り扱いを検討中としている。また、UBS証券の鈴木華久子氏と、リーマン・ブラザーズの菅井馨子氏も日本の金融当局や東京証券取引所、その他の市場関係者と利益返還の具体的方法などついて、調整中であることを明らかにした。』

何故に(恐らく)女性ばかりが矢面に立っているのだ、各社?
1社くらい社長がきちんと大多数の証券関係者が思っていることを堂々と述べるところがあっても良いんじゃないのか?

最後に
『今度の取引で上げた利益は法律やルールを破って稼いだものではない。返上するかしないかは、あくまで個々の企業が自らの責任で決める事柄だ。
横並びの返上ではなく、例えば公益性の高い団体などに寄付する会社が現れていたなら、もっと歓迎されたのではないだろうか。
与謝野氏は証券界を監督する金融庁の担当大臣だ。言われた側が圧力を感じたとしても不思議はない。外資系までが同調したのも、日ごろから風当たりが強い事情を考えれば納得できる。
この国には役所が許認可権限をテコに業界を束ねてきた歴史がある。
まだまだ不十分とはいえ、市場の独立性が重んじられるようになってきた矢先である。「大岡裁き」だと喝采する時代ではない。
一義的には責任あるみずほ、東証の両社が損失をかぶるのが筋だ。』

普段はちょいと斜に構えて読む朝日の社説の一部であるが(笑)、確かに証券界には「公益性の高い団体などに寄付する」なんて発想はまず出て来ないので、この部分は私はうんうんと頷いてしまった。でもこうやって書かれちゃったから、もうどこも出来なくなっちゃったけど(笑)。
まあこの社説全体を読むと一部納得できない部分もあるが、しかしながらこの与謝野さんのあの一声に対するきちんとした批判をマスコミから聞いたのは、あるいは私が気付かなかっただけかもしれないが、これが初めてであったので、ちょっと新鮮だった。


いずれにしても、外に居ると「まだやってるの?」「やっぱり日本は不思議な国ね」となっている空気をひしひしと感じるわけで、ビジネスセンスのかけらも無いような連中に引っ掻き回された結果、また「日本は不思議じゃなくてまともだよ」と、我々証券界の人間が言って回らなければならない訳で、だからセンスの無い奴は黙ってろっつーの。

利益返上ですか

2005-12-15 04:51:25 | マスコミ、企業
それにしてもJ-COM株、本日はストップ高でしたか。
どっちかって言うとみずほの立会外分売がどの辺の顧客に入ったのかが私は興味深々ではあるが。

さて、拙日記にてもまたちょろっと吼えさせていただいたが、結局全額利益返上だって?

あほか?

6社が揃いも揃って全額利益返上なんて、これはどう考えても別の大きな力が働いたとしか思えないね。敵に塩を送るどころか、敵に武器やら果ては兵員まで送って、今回の戦いにおいての相手の消耗分をみんなで補ってあげましょうよ、なんてことがあり得るのか?

昨日は「相手の隙に付け込むのはこの世界では当たり前じゃ!」と吼えさせていただいたが、もう一歩話を進めてみると・・
拙日記にちらりと触れたように、アービトラージ的手法を考えてみればまたこの出来事を違う視点で眺めることが出来る。
つまり、市場の歪みをどう捉えるか、って事である。
今回のJ-COMに関しては、私はバリュエーション等の数字は詳しく見ていないが、見る人が見ればあの上場時の株価が何故かストップ安に一瞬ではあるかも知れないが放置されて居た、と言うのは「正しい歪み」であったはずだ。
つまりアービトラージャーのみならず、普通に市場に対峙している人は「ストップ安は、安い!」と思ったとしても不思議ではないはずであった。
従って証券の自己運用部門、或いはネット投資家の方々の何パーセントかは、今回の誤発注が大元であることを知らずに買い向かったかもしれない。
つまり誤発注による強烈な歪みは後付けであったと言う投資家が居ても私は不思議では無いと思う。

仮に私が自己運用部門に居て、それじゃあ百歩譲ってこれはどうも何かミスが裏にあるらしい、と感づいたら、果たして私なら覚悟を決めて買い向かえたかどうか、それも実は甚だ疑問なのである。
それほど強烈な信念(これは明らかに歪んでいる!)等が無ければ、実はいくらサラリーマン自己運用部門とは言え、簡単にはいかないはずなのであるね。
それを思い切ってやった連中は、きちんとリスクを取った訳である。
確かに後から見れば、ミスに乗じて大儲けしやがって・・と思える。しかし私は当事者達の立場に立ってみた場合、どうしても上のようなことに考えが及ぶ。
後から批判するのは簡単だ。しかしながらその瞬間瞬間で切り取ってみれば、そこには強烈な、本当に心臓が爆発しそうなリスクを取った連中が勝った結果であるのだね。

それをもっともらしく、世間やら世論やらの何となく解せないなぁ、と言う雰囲気を巧みに取り込んだ与謝野さんは、まあ操作上手なのかもしれないが、やはり当事者達から見れば、結局最後は圧力ですか、って感じに映ってしまう。
6社が6社、みんなで一斉に返還を決めた、なんてのはどう考えても何らかのパワーが働いたとしか考えられないじゃない。
コメント欄にある方が書いてくださったように、(昨日のチケット売り場の例で)「何故他のチケット売り場の人達はその儲けを返す必要があるのでしょう」と。
私も全く同感で、何故?なのである。

私がさらにこの問題に関連して危惧しているのは、以下のニュース。
『東京証券取引所の天野富夫常務は14日朝、自民党の企業会計に関する小委員会(委員長・渡辺喜美衆院議員)に出席し、8日に起きたジェイコム株の誤発注のような異常な売買が行われた際には、売買契約そのものを無効とする制度の導入を検討していることを明らかにした。
 東証の天野常務は欧州の一部では、発行済み株式数を大幅に上回るなど異常な売買が成立し、かつ影響が重大な場合は、取引所の判断で売買を強制的に無効とする規定があることに言及、今後の検討課題だと述べた。大手証券会社がジェイコム株を大量に取得した問題では、証券会社の自己売買のあり方などについて規定する考えも示した。』

例え欧州のしかも一部にそのような制度があるとしても、基本は『Done is Done』なのである。
それをそんな何処の国でやってるか分からないような制度を引っ張り出してきて(だってもしきちんとした国でやっているなら、その国名を開示すべきでしょう。欧州の一部、なんて、もしかしたら普段碌な商いも無い国かもしれんし、東欧だって欧州だぞ)、あたかもそれが世界の常識のような言い方をして、この常務もほんと世間におもねることしか考えてないね。

さらに、その後が問題だ。「証券会社の自己売買のあり方についても規定」するだと??そしたら市場の自由競争なんて何処へ行っちゃうの?
市場って言うのは如何に自由であるか?が大きなポイントでしょうが。
政府は小さな政府を目指しているのではないのかね?小さな政府っつーのは我々の言葉に言い換えれば、くだらない規則でがんじがらめにするのはやめて、もっと自主性に任せましょうよ、って事でしょうが。
それが東証の役員がそんな態度でどうすんの?

ライブドア、楽天、そして村上ファンド・・・世間では、さらにBLOG等で上位ランキングの非常に世の中をお分かりになった方々は口々に罵っているけれど、でもね、彼らはやっぱり大きな意味での市場の歪みを矯正している一種のアービトラージャーなんだよね、私からみれば。
東証の役員がその程度で、また金融相もその程度であれば、まだまだ日本市場の歪みは矯正されないから、きっとこれからも世の中をお騒がせするような方達がハッスルするだろうね。
そのたびに踊っていなさい。
また、何たって外人投資家は歪みの矯正が大好きだからね。
って事はまだまだ日本株は勢いが衰えないかもしれないね、とっても逆説的だけれども(笑)。。。
 

J-COM、その後

2005-12-14 06:39:23 | マスコミ、企業
さてJ-COMの続きである。
結局伝家の宝刀である「強制決済」を持ち出すことになった訳であるが、確かにこんなのは私が証券界に入ってからは聞いたことが無かった。随分昔にあったようだが、それにしてもこんな方法もありかよ・・と言うのが私の第一印象であるね。
だってこのような例外を設けることを何よりも嫌う東証である。しかしながらまあそれしか方法が無いわなぁ、何たって実在株数の40倍だしね・・・

一応拙日記からの読者の方も居ると思うので、もう一度簡単に今回の出来事を例えるならどのような事だったのかをここに書いておく。

例えるならサッカーの観戦券を考えてみる。
今回の券、合計15000枚が売り出されることになった。15000人しか収容できないスタジアムでの好カードなのだ。
(但しもっと正確に言うならば、そのうち12000枚は既に来賓用に取ってあり、実際普通のお客さんに売られるべき枚数は3000枚であった・・)
買えなかった人たちはそれを持っている人に「ねえねえお願いだから私にその券を売ってよ、買値より高い値段を払うから」なんてやり取りが始まった最中、ある売り場の売り子さんが間違えてなんと60万枚のチケットを売ってしまった訳だ。
それでなくても買いたい人がわんさか居る所に60万枚が一気に売り出されたらしい、との噂は一瞬にしてサッカー観戦券市場に出回った。
「何だよあんなにプレミアムが付いていたのに、実は60万枚もあるのならそんなのは当初の売り出し値段より安くても買わないなぁ」と言う人が一瞬続出、これが公開後ストップ安した、と言う事であるね。
ところが冷静に考えてみれば、あのスタジアムは確か15000人しか入れないジャン、と言う事に気付いた人間が居た。彼らはこれはあの売り場の売り子さんのミスだと瞬時に判断し、その誰もが見向きもしない値段で売られているチケットを買い漁った。
さてその売り場の売り子さん「あれ、これってあたしの間違いジャン、まずいすぐに取り消さないと!」と慌てふためき、この売り子さんがチケット販売の元締め会社にすぐに取り消しのインプットをしたが、なぜかそれが上手くインプットされなかった。
あせった売り場主任は「それじゃあ仕方がない、とりあえず今売っちゃったチケットを買い戻せるだけ買い戻せ!」との指示を出した。
結果50万枚くらいは何とか買い戻せたけれど、残り10万枚くらいは買い戻せなかった。。ああかわいそう・・

さて、このサッカーの試合日はチケット売り出し日を含めて4日後。売り出し日に買った人は代金を4日後までに指定口座に振り込んで、同時にチケットが4日後に送られてきて、その日に試合が開かれる。。ところが元々15000席しか無い場所で差し引き(つまり慌てて買い戻した50万枚を除いた)10万枚のチケットが売られちゃっている訳で、今更席数を増やせず、スタジアムを変更出来ず、それじゃあどうしましょうか、と言う事で、10万枚買った人達に、強制的に現金を、しかもみんなの買値よりも高い金額で振り込み直して、「チャラ」にしてもらった。。(強制決済)
その後結果的に差っ引いてみれば、結局その売り場には約1000枚のチケットが残って居ることになった・・
それじゃああらためてこの残った1000枚のチケットを明日にでも売り出しましょう、(この例では試合の翌日、ってことになってしまうが、まあ夜行われる試合の直前を明日、と捉えてくださいな)と言う事になったのが、言われている「立会外分売(たちあいがいぶんばい)」の事である。
実際15000席あるものの、本来12000席は既に来賓等で占められており、一般の観客用チケットは3000枚しかなくて、一旦ほとんどをチャラにしちゃったので、あらためてその1/3の1000枚を一斉に売り出したらパニックになっちゃうでしょう、と言う配慮での行為であるね。

と言うのが事の真相である。
分ったかなぁ?誰がみずほで誰が東証で誰が与謝野大臣から『美しくない』と言われた人達か。

さて明日の立会外分売の結果どうなるかは私より皆さんの方が早く知れるわけで、興味津々で見てみてくださいな、と。

今回の件で気になることが2つばかりある。
1つは、東証が何だかすごく弱気なこと。
ある記事の抜粋はこうだ。
『今回の証券事故に対するみずほ証や東証のかかわり度合いなどに基づき、みずほ側の損失を東証が一部負担するのかなどが焦点となる。
東証は当初、取り消しができなかったのは、みずほ証が入力方法を間違えたためとしていたが、東証のシステムの不具合が原因だったことが判明した。東証の鶴島琢夫社長は12日、報告に訪れた金融庁で記者団に対し「損害がみずほに出た場合、取引所のシステム障害との関係はどうなるのかの解明が今後の問題だ」と述べた。』

個人的には私は東証のシステム障害なんて物が本当にあったのかどうか疑問だと思っている。世間の風向きを考えた場合、一見みずほの単純なミスで本来は済みそうな気がするが、やはり発行済み株数を大幅に上回る注文を簡単に東証のシステムがアクセプトしてしまった事は看過出来ない事態であるのは事実だ。これが本当だとすれば、やはり世界的な信頼を東証は失いかねないシステムにて今まで運営して来たことになり、そうなると将来的な上場を視野に入れている東証も洒落にならない。
ゆえにここは耐え難きを耐え、忍び難きを忍んで、あえてシステム障害と言う大義名分を作り上げ、損失の一部を負担する方が、長い目で見た場合得策と考えたのではあるまいか。

実はこの「システム障害」、我々もたまに使う手なのですな。
大きなミスはもちろんそんなのでは済まないけれど、でもちょいとした事にはこのシステム障害を理由にする事がある。
かつて私がやっていた転換社債のマーケットメイク。ポジションがどっさりあるCBの株が例えば暴落しちゃった場合、果てどうしようか、とりあえずオープニングは「システム障害により弊社の取引開始を30分遅らせます」的なアナウンスを他社にしておいて、その間に方策を考える、なんてのはたまに使った奥の手だ。
何らかの理由によって、本日のお客さんの株の注文の約定連絡が遅れたとき、「すみません、ちょっとしたシステムトラブルがございまして・・・」

要はシステム障害ってのは外部には全く分らないのである。ゆえに何か起こればとりあえずそのせいで、と言うことにしてしまうと、結局外部の人は文句を言えない。百歩譲って我々がマーケットメイクでやってた「障害」なんてのは、実は相手も百も承知の助なのであるが、そうやって面タン切られちゃうと「嘘つけ!」とは言えないのである。何せ彼らに我々のシステム障害を確かめる術が無いのだから。


次に私が許せないのが与謝野のおっさんの発言。これは前述の拙日記にて吼えさせて頂いた。

ふたを開けてみれば(つまり5%ルール報告を見てみれば)、
『米モルガン・スタンレー証券が4522株(31.19%)、野村証券は1000株(6.9%)、日興コーディアルグループが3455株(23.83%)、リーマン・ブラザーズ証券は3150株(21.72%)取得していた。』
さらに今日のスイス時間の夕刻、私も正直噴出してしまったが、あのUBS証券なんて、なんと3万8千株あまりも保有していることが分った訳である。

先ほどの例で言うと、あるチケット売り場で間違って売ってしまった大半のチケットを実は他のチケット売り場の連中がどっさり買っていた、って訳であるね。
実はこのチケット売り場同士では日頃熾烈な販売競争があったとすれば、結局その売り場の単純ミスである、と言う嗅覚は誰よりも他のチケット売り場の連中の方が優れている訳であるから、連中がそのミスに付けこんで利益を上げようとしたわけである。

さてこの行為、本当に責められますか?

与謝野さんは、
『誤発注ということを認識しながら、他の証券会社がその間隙をぬって、顧客の注文を取り次ぐのではなく、自己売買部門で株を取得するということは、美しい話ではない、証券会社も経営者は行動の美学を持つべきだろう』
とのたまったそうで。

???????

確かに美しい、友情に溢れ愛情に溢れる話ではないわな。がしかし、そんなことを金融相が言っちゃうことが何よりも美しくないのだよ。
人命救助とは訳が違うんだよ、大臣。ここは言ってみればアフリカのサバンナなのですよ、大臣。
食うか食われるか、それしかない。それが資本主義でしょう。
証券マンだって普通の人達と同じような心は持っていますよ。持っていますけれどもこの話、誉められこそすれ、グチャグチャ言われる筋合いの話ではないのである。
弱いところ、いや弱みを見せればありんこだってライオンを食い尽くすのですな。

野生動物で恐いことの一つは、その動物が虫歯になることである、と言う話を聞いたことがある。仮にライオンが虫歯になってしまったら、もう肉は食えない、そうなると待っていることはただ一つ。
虫歯になったライオンは結局他のライオンに食われてしまう訳であるね。
ライオン歯磨・・・なんて冗談はさておいて。。

スポーツだってそうでしょう。
あのタイガーウッズのお父さん、彼がタイガーにゴルフを教えるとき、例えばタイガーがパットをする瞬間にわざと音を立てたりしていたそうだけど、それでミスしちゃうのはタイガーの責任なのだね。その程度の事でミスをするようなことが無いように、との訓練でしょう。

もっと言えば日本のマスコミだって、結局はあらの探しあいで食ってる訳でしょう。それを何故にこの問題に限って「行動の美学」が求められるのか?
もちろん尋常ではない金額の金が動いてしまっている訳だから、一般常識とはちょっとかけ離れているよね、って感じはするだろう。
この業界に身を置くに当たって新人の頃に飽きるほど教えられることがある。それは「自分の財布と仕事はきっちり分けて考えろ」って事だ。
つまり我々はそういう天文学的な金額に、全うな意識で触れる訓練を受けているのであるよ。

パラシュート部隊やら消防レンジャーの方々のやっていることが我々には考えられないように、或いはお医者さんが毎日真っ赤な血と対峙していることが小心者の私には理解できないように、普通の人から見ればこの問題は別世界でのお金が動いているように見える、よって与謝野さんは行動の美学うんたらかんたら、と言っているのであろうが、我々から見れば片腹痛いね。
だって業界の内側から見れば千載一遇のチャンスだったもん。
正直UBSの約4万株に関しては、ちょっとやりすぎちゃうの?って気がしたけれど、それでも私は「アッパレ!」と叫びたいね。

皆様が、何だか小鬼ってのは実は血も涙も無い冷血動物なんじゃねーの?とお思いになるだろうことも想像出来る。
しかしながら、僭越ではあるが、もし私のこの記事を読んでそう思われている方がデイトレとかをやられているのなら、それはすぐにお止めになった方が良いですよ、と言っておこう。
株ってのは貴殿が買った値段で必ず売った人が居るから売買が成立しているのですからね。その逆もまた真なり、ですからね、念のため。
その意図するところがお分かりになりますよね??












みずほ証券大ちょんぼ

2005-12-09 05:49:17 | マスコミ、企業
いやはや読者の方々の暖かいお言葉に甘えつつ、ついついこんなに間が開いてしまいました、ごめんなさい。
その間小鬼は決してぐーたらしていたわけでも無いので、どうぞお許し下さい。
先週は東京、先々週はロンドンにジュネーブ、そして今週末からまたジュネーブ、ってな具合に移動ばかりしております。。
「お前、移動や出張ばっかりで全然稼いどらんやんけ~」とかローカルの外人にまで言われている始末ですが、まあそれは置いておいて・・
相場も非常に良いので余計大変だったりする訳ですなぁ。。
日常の基本的なことは、拙日記にアップしておりますので、基本はそちらをご覧あれ~~

さて、しかしながら本日のみずほの大ちょんぼを書かないわけには参りますまい。
みずほは私自身関わっていた会社ですから(汗)。

事の経緯の細かい内容はここの読者の方であればもう徹底的にご存知であろうと思う訳ですが、一応簡単に書いておきましょう。

J-COMと言う会社(人材派遣の会社ですな)が本日初めて上場しました。東証マザーズ、まあ東証に上場したと考えるのが簡単です。
この上場の意味は、要は当該会社の株価に初めて値段が付く、って事です。
ちなみに世の中に出回るであろう総株数は約1万5千株。1株あたりだいたい50-60万円の株でございます。
つまりあなたが1株買おうとすると、それに払う金額は60万円くらい、と言う事になりますな。

さて、9時にマーケットが始まり値段はある意味順調に推移していたのですが、9時半ごろ突如値段が下がり始めます。
ある証券会社からなんと約60万株の売り注文が出たのですな。
ちょっと考えても分る通り、世の中には1万5千株しかないのです、しかしそれに対して60万株の売りが出れば、一体何が起こったのかなんて考える隙すら無く、値段はあっという間にストップ安。。
そしてストップ安を付けた瞬間からあれよあれよと値段は上昇に転じ、最後はストップ高で終了。。
ニュースを総合すると、要はみずほがこの注文、本来「1株売り@60万円」を単純に「1円で60万株売り」と入力、それが通ってさらに東証でも簡単にアクセプトされて、執行されてしまった訳ですな。

どの段階でみずほが間違いに気付いたのか現在は不明ですが、ストップ安を付けた時点からみずほがひたすらバイバックに走ったのは、そのティックを見れば一目瞭然、それに提灯が付いてストップ高になったのは誰でも分かる所。

大方の予想は、1株当たり20万やられたとして50万株であればその損失たるや約1000億円!
現在のみずほの発表によれば、現時点での損失は約270億、今後1000億程度まで膨らむ可能性とか。

~~~~~
この時点でのポイントを幾つかあげましょうか。

まずは東証は約定を無しにする、とは考えていないこと。つまり証券用語で言うところの『全てにケツを入れる』と言う事。
世の中に1万5千株しかないものを、要は60万株の空売りをしてしまった訳で、当然それら売った株全てを買い手に渡す義務が生じるわけです。
しかしながら60万株のショート、一体いつになったら全部買えるのですか?と。
東証の言葉をそのまま受け取れば、みずほは全株揃うまでひたすら買わねばならず、そうなるとホルダーは決して売らず・・と言う事が考えられるわけで、下手すれば1000億でも済まなくなる可能性があるわけです。

次に問題なのはそんな単純ないわゆる有り得ない注文をみずほのシステムが簡単にアクセプトしたこと、そしてそれを東証のシステムが当たり前のようにやはりアクセプトしてしまったこと。
ここは実は非常に重要な箇所で、今後みずほは東証になるべく責任の一端をかぶせようとするだろうし、東証はそんなものは頑としてはねつけるだろうけれど、でも自分も大きいことを言えない、と言う状況が出てくるでしょう。
これは世界的に大笑いの的になるわけで、百歩譲ってそれで済めばむしろラッキー、例えば外人なんかは「そんな取引所が杜撰ならもう日本株はいいや」と考えるとも限らないわけで、そうなると相場全体への影響がまじで懸念される訳です。

さらにここからは余り大きな声では言えませんが(笑)、最近みずほ内部が非常にがたついていたのですな。
あそこは元N証券で固めています、さらに外資系顔負けのような給与体系になっている訳で、人の出入りが物凄い激しいのです。個人的な感想をいえば、とんなに優秀でも元Nであるか、もしくはみずほ生成前の旧銀行系出身でないと結局居ずらくなるのですな。
しかしながら内部で大規模な抗争があったようで、大物役員の更迭やら元N軍団の要所を固めていた方々がはずされたり、って事が起きていたようで、要は社内がガタガタになっていたと推察されます。
そこへ来てこの大問題ですから、まあ推して知るべし、ですな。

さて今後の展開ですが、要は旧銀行系が元N軍団の存在を面白くないと感じていたのは明白なので、ここで証券存亡の危機になっているのでとりあえず銀行本体なりホールディングがとりあえず救済に行くことはほぼ間違いないと思われ、でもそうなると「やっぱり証券マンには任せておけね~」と銀行は言い出すに決まっていて、そうなるとせっかくのあの会社の良い意味でのダイナミズムみたいなものが徹底的に失われる可能性が大、と考えているわけですな。

そうなると他社はどうするか?
決まっています、生き馬の目を抜く世界です。徹底的に(我々も含めて)証券は草刈場になるでしょうね。
つまり優秀な人材の徹底的な引抜きのゴングが鳴ったわけですよ。トレーダーやらアナリストやらなんやらかんやら・・・
我々ももちろんアクションを起こすでしょうね、それがこの世界の掟ですから。。

この内容はくれぐれもあなた限りにして下さいね。一切の責任は負いかねますので・・・