地球の裏からまじめな話~頑張れ日本

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ACCESSのMSCB

2005-05-28 05:19:14 | CB教室
バリュークリックに引き続き、ACCESSもMSCBの発行を決議し、一般投資家の皆さんはかなり混乱しているように見受けられる。
バリュークリックに関しては昨日書いた通り私の目から見てもあまり誉められたモノでは無い。特にその引受業者である日興シティーの姿勢は私には理解出来ない。
単なる引受業者としてみれば、黙っていても10%*50億の利益は確定したようなモノだから羨ましい限りであるが、投資家から見ればたまったモンじゃないだろう。ライブドア証券が協力を求めて、もしかしたら非難ゴーゴーの嵐を多少は避けるために日興シティーを引き込んだのかなぁ。

それに対してのACCESSのMSCB。
これはきちんと検証してみるとバリュークリックとの違いが多少なりとも見えてくる。
まずACCESSの時価総額は約1900億、それに対しての500億であるから、ダイリューションは約25%ちょいとなり、まあまあこれは通常の範囲だ。
本日株価が約18%下落したようで、しかもストップ安売り気配で売り物を残しては居るが、ダイリューション分はほぼ織り込んだ水準ではあると思う。
さらに、今回のACCESSの資金使途である。
レリースにはこうある。
『NON-PC端末向けソフトウエアーの開発並びに既存事業の拡大及び新規事業展開(テクノロジー・ポートフォリオの充実、研究開発人員の確保、市場占有率の獲得)に伴う資金に充当する予定であります』

正直私の頭では良く分からないが(笑)、要は今後の設備投資やR&Dに使う、と言う事であり、これは極めて前向きな使途であろう。
あまり表面的なCBの条件やバリューやらばかり見ていると見誤るケースがあるのだが、この「資金使途」は非常に投資家に取って重要な事項である事をしっかり頭に叩き込んで置かれる事をお薦めする。
やんややんや言われているヘッジファンド軍団の青目のファンドマネージャーの兄ちゃん連中もこれはしっかり押さえている。どんなに条件が良い発行であっても、この資金使途が後ろ向き(例えば今回償還が来る債券の借り換え、だとかそういった類のモノ)であれば、そこはしっかりディスカウントして向かってくる。
昨日書いたように、バリュークリックのケースはこれがもう一つはっきりしない。借り入れの返済等は分かるが、M&Aに対する資金プールのような目的はあまりにも漠然としている。
ライブドアのケースはそれが同じMAであっても、きちんとしたターゲットがあった。これは大きく違う。

もう一つこのACCESSとバリュークリックのレリースの違いであるが、それは潜在株式比率の項目である。
ACCESSの場合は、
『今回のファイナンスによる潜在株式比率は20.3%になる見込みです』
と書いた上で(ここまではバリュークリックと同じであるが)、さらに、
『潜在株式の比率は、今回発行する予約権が全て当初の転換価格で権利行使された場合に新たに発行される株式数を直近の発行済み株式数で除した数値です』
としっかり計算根拠を書いてある。
バリュークリックの場合はそれが無かったから私は推測で昨日は書いたわけだ。

ちなみに当初転換価格はバリュークリック同様、発行決議日の株価の終値に5%のプレミアムを載せた値段になっており、それは235万円である。500億円をこれで割れば、自動的に潜在株数が計算できる。
但し昨日も書いたようにこれはほぼ間違いなく最低限の株数である事には注意を要する。
来月から毎月第3金曜日に転換価格が基本的に90%に下方修正されていってしまうので、転換価格は株価がずっと一定だとしても下がる訳だからね。
もちろんこれからこの株がグングン上昇し、235万円をはるかに上回るケースが無いとも限らないので、『ほぼ』と言う表現にしたわけだが。
もっと正確に言うならば、転換価格は修正されるけれども、上下限が決まっているので、最大最小の潜在株は算出できる。
ちなみに上限価格は353万円、下限価格は118万円と決まっているようだ。

ブルーンバーグの記事等を読むと、「借株が容易に調達できその売り圧力を嫌気して・・」的なことが書いてある。
ライブドアの時もフジテレビの時もそうだったが、引受業者はその引き受けリスクを回避するため、特にMSCBのようなスキームにおいては間違いなく借り株は手当てしてある。
バリュークリックはライブドアが70%を占める株主であるからまず間違いなくそこから借りているだろうし、ACCESSの場合も大株主から野村は既に借りていると考えてよい。
通常の転換社債の場合はそれが転換可能になるまでには時間がかかるのに対して、MSCBの場合は転換開始日からさっそくガンガン売れるので、これは潜在株ではあるけれどほぼ間違いなく市場に出てくる。
それに対して通常のCBの場合、発行当初に決める転換価格に、これら同様大体プレミアムが載っており、さらに経験的に言うとパリティー(転換社債の理論価格)が120~130になってこないと転換は起こらない。(株価がその転換価格を20~30%上回ってくることと同義)
ゆえにモノによっては償還までに全く転換が起こらないものもある。
それらのケースはまさに『潜在株』であるが、MSCBの場合は言ってみれば『一時的潜在株』である。その『一時』ですらせいぜい1ヶ月程度であるが・・・。

しかしながら前にも書いたが、株って言うのはある程度の売り物が無いと上がらない、と言う説もある。
いつまでも売り物が無ければ誰も見向きもしなくなるわけで、売り物がきちんと出るのであれば、じゃあそれをしばらくしつこく買ってみようか、と動きも出てくる。
ダイリューションを株価に織り込ませる事は理論に叶っては居るが、その後実際に潜在株が出てきた時にどう考えるかはまた別問題であると言う認識もある程度必要である。

次回はもういちどきちんと転換社債と言う商品を見つめてみることにする。