地球の裏からまじめな話~頑張れ日本

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人口構成から考える

2005-05-01 06:39:31 | マスコミ、企業
さるさる日記でちらりと触れたのだが、今起こっている中国問題を側面から切る上でのお話である。

私は聞いた事があったけど読んだことが無いのだが、アメリカの国際政治学者であるサミュエル ハンチントン氏の「文明の衝突論」。1993年頃の発表だったらしい。
彼曰く、世界の文明は全部で8つに分けられる。それは、
中華、日本、ヒンドゥー、イスラム、西洋、ロシア正教、ラテンアメリカ、アフリカの8つであり、これを元に90年代に起こった世界の紛争に切り込んでいるそうだ。
飲み会時に話題になったのは、ここで日本が単独の文明を持つ、という部分だ。

『著者の文明パラダイムは、近い将来の世界の姿をよく予想しているようにも思える。中国と日本、日本とアメリカの関係はともかく、中国とアメリカの関係は、これはもう「文明の衝突」と呼ぶしかないようなものだろうし、21世紀の日本はこの衝突にもろに巻き込まれる状態になるはずだ。また、東南アジアにおける中国文明とイスラム文明の衝突の趨勢が、中国を含んだ東・東南アジアの情勢を決定することにもなるだろう。
 仮に、この「文明パラダイム」が世界のすべての事件を説明するものではないとしても、イスラム文明と西欧文明の間、そしておそらくは中華文明と西欧文明の間の衝突は起こっているし、今後も起こり、国際情勢に大きな影響を与えるだろう。そのような中で日本はどう振る舞えばいいのか。答えはほぼ明らかで、日本は「日本文明」なるものを持たないフリをするべきである。文明を持っていなければ、少なくともこの本に記されているような原因で起こる紛争の当事者にはならなくて済む。湾岸戦争に金だけ出して非難されたこと、ペルー公邸占拠事件でのフジモリ大統領の行動に対するアンビバレントな国民感情が生まれたことなどは、良い徴候である。これはギャグではなく、かなり本気だ。』

これはアマゾンの書評に出ていたうちの一つであるが、これは98年に書かれている。
最後の方はまあ別としても、それにしても驚くべき解説ではないか。
世界広しと言えどもこの小さな日本が一つの文明を持つがゆえに、他の文明と衝突すると言う理論は、これだけ世界が混沌としてくるとやけに説得力を持ってくる気がするのは私だけだろうか。

さて、この理論を頭の片隅に置きながら、さるさるで紹介したD社のテクニカルアナリストK氏の資料を紐解いてみる。
昨年の12月に日本へ出張した時に、運良くD社の機関投資家セミナーに私は潜り込めたのだが、その時の講演者の一人がK氏であった。彼の分析は日本株の運用担当者には非常に好評で、その分野ではもはや世界的知名度を誇るといっても過言ではないかもしれない。
基本は株式相場を過去のチャートを元に分析するのが彼の仕事であるが、そのカバレッジが半端ではない。

ちなみに彼の日本株に対する見方は基本不変で、「日本株は歴史的名大底を形成、超長期強気相場に転じた」といっている。しかしながら2005年に関しては方向感の決め手にかける年と捉え、確固たるストラテジーを持つべきではない、といっている。巡航速度に入るのは2006年中盤からとの見通しのようだ。

さて、その時頂いたおよそ100ページに及ぶ資料にて、人口構成の問題も提示されている。
日本に関して言えば、現在もっとも注目されているのは団塊ジュニアの動向であり、団塊ジュニア世代の婚姻ブームを経て、日本の土地価格は06年からの上昇の可能性が大、としている。

そして本題の中国問題と人口構成の絡みである。
「紛争当事国は20歳人口が増加する傾向にあり、産油国は80年代のベビーブーマーが就学就職難で社会不安に」とある。
産油国はオイルショックによって80年代に近代化に成功、その結果現在25歳未満人口が極めて多く、サウジでは20歳台の失業率は20%台と推計されており、社会不安の根源である、と氏は言う。
ちなみに、
1940年の日本の人口分布は、0-4歳をピークに年齢と共にきれいに下がっていく構成であった。つまり若年層が多く、太平洋戦争へ突入していった。
1980年のイラン及びイラクの人口分布もその日本と全く同じグラフを示しており、この両国がその後イランイラク戦争に突入して行ったのは記憶に新しい。
ちなみに1965年のアメリカ、5-9歳がもっとも多く、30-34歳でへこみ、。45-49が多くなる、若干いびつな形をしているが、基本的ラインは上記の国々と似通っており、アメリカはこの後ベトナム戦争へ突入したわけだ。
2005年のサウジの構成を見ると、まさに上述日本、イランイラクと全く同じ形になっている。
さあ大丈夫か?と言うのが氏の見方である。

ちなみに人口における青年層比率は(2005年国連)、
サウジ(56.7%)、クェート(40.0%)、オマーン(55.9%)、シリア(59.3%)、ヨルダン(56.9%)、エジプト(54.8%)、アルジェリア(53.0%)
と、産油国は軒並み50%を超える。
ちなみに日本は25%、アメリカ35.4%、中国は38.3%である。
ただし、ここで注意したいのは、この数字は各国の全人口におけるその「比率」だと言う事だ。
つまり、絶対数で比較するととんでもない数字が現れる。
産油国の中でも比較的人口の多いエジプト、総人口は約7500万人に対して25歳未満は4100万人に上り、ゆえに比率は54.8%になるが、中国の総人口は13億2227万人!この38.3%とはつまり5億620万人に及ぶのだ!
これは日本の総人口の約4倍!中国の25歳未満人口はなんと日本の25歳未満の15.8倍もの絶対人数が居る事になる。
アメリカの総人口は約3億であるから、アメリカの総人口の約1.7倍の25歳未満の中国人がこの世に存在することになる。。
数じゃとてもじゃないけどかないませんなぁ。。

そしてもってその若年層が人口ピラミッドにて中心を占めるとき、
例えば1970年の日本では学生紛争真っ盛り、日米安保だなんだ、って時であったし、1990年の中国、ここではあの第2次天安門事件が勃発している。

また、私がスキャナーを持っていないのが本当に悔やまれるのだが、中国の19歳人口の移り変わりをグラフにしたものが手元にあるのだが、これは見事なまでに過去の騒動と一致する。カッコ内は19歳の人口。
これは1960年からのグラフなのだが、まず最初のピークである1976年(1899万人)、ここで第1次天安門事件が勃発した。
そして次のピークは1989年(2801万人)でここでは第2次天安門事件が勃発した。
その後グラフは穏やかな下降線と辿り、1996年(1793万人)を底に再度緩やかな上昇に転じている。2001年には2310万人、翌2002年に一旦2006万人まで下がり、今後の予想は、
2006年と2009年にダブルトップを形成する。06年は2628万人、09年では2621万人の19歳が現れてくる。
そして09年をピークに2013年の2013万人までまたグラフは下降線を辿る。
もう言わんとすることお分かりになるかもしれないが、2006年~2009年までは現在の暴動が拡大する懸念があり、景気の軟化のみならず、オリンピックの開催自体もリスクになりかねない、となる。
もっとも危険な時に北京オリンピックが開催されることになっており、この面から考えると徐々に盛り上がりつつある開催地の変更等を真剣に議論するべきかもしれない。


とまあこのような分析手法もある、って事ですな。
確かに若年層のエネルギーは凄いし、それらがわ~っとなればデモだって暴動になってしまうし。
もちろんこれは色々な事象の過去からの動向を基にした分析及び予測であるので、これが両国の問題解決には全然ならない事は自明の理である。
中国の今の若い連中がもうちょっと大人になって「はぁ」となった時にようやくごたごたも多少は落ち着くのかも知れないが、それはまだまだ先のようだ。