地球の裏からまじめな話~頑張れ日本

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買収防衛策

2005-05-05 01:16:59 | 買収防衛
さるさるにも書いたが、JR西のボウリング大会はもう言語道断である。
ここにはこれ以上は書かないが、今回の件はマスコミはきちんと調べたね。これはさすがだといわざるを得ない。

さて、ちょっと古い記事になるが、4月30日付けの朝日新聞の以下の記事である。

『敵対的買収、「脅威」7割、32社防衛策検討 本社調査

日本を代表する大手企業50社を対象に、朝日新聞社が今月中旬に敵対的買収に関してアンケートしたところ、回答42社のうち71%が「脅威を感じる」と答えた。
既存株主を大切にするための増配など何らかの防衛策を検討しているとした企業は76%に上った。また5社が買収者を撃退するためのポイズンピル(毒薬条項)の導入を検討中とした。株式の時価総額が大きい日本の大手企業でも、企業の合併・買収(M&A)の本格化に向け、危機意識が高まっていることが裏付けられた。
 ニッポン放送をめぐるライブドアとフジテレビジョンの買収合戦がピークを迎えた時期に、東京証券取引所1部上場企業のうち株式時価総額の上位50社(3月末現在)を調査対象とした。
 敵対的買収に「脅威を感じている」と答えたのは30社。19社(複数回答)が「外国企業・資本」による買収が脅威とした。外国株式を使った合併手法が解禁(07年度予定)されれば、外国企業に比べて時価総額が相対的に低い日本企業はM&Aの対象になりやすいからだ。時価総額が国内1位のトヨタ自動車ですら「買収される可能性はあると感じている」と答えている。
 防衛策を検討するとしたのは、シャープ、松下電器産業、三井住友海上火災保険、UFJホールディングス、イオン、イトーヨーカ堂など32社。具体策(複数回答)では、「増配」と「自社株の取得」がそれぞれ7社で、親密先やグループ各社との株式の持ち合い強化など「安定株主・友好的株主を増やす」(4社)などもあった。以前からの制度を防衛策として強化する内容だ。
 新たな防衛策(複数回答)は、5社がポイズンピル導入を検討中としたほか、「(ポイズンピルを含む)あらゆる選択肢を検討」などとした企業も11社。今年から来年の株主総会にかけて導入が広がりそうだ。
 そのほか、買収者が現れた時に機動的に増資できる「授権資本枠の拡大」(3社)「空席の取締役ポストを買収者に占められないための「取締役数の上限引き下げ」(2社)もあった。
 防衛策導入の狙いでは「地道な経営努力を積み重ねている健全企業をマネーゲームの対象とするべきではない」(信越化学工業)の声もあった。
日産自動車など8社は、時価総額が比較的大きいことや安定株主の存在などから「敵対的買収の脅威を感じない」と答え、6社が防衛策導入の予定はないとしている。』

このアンケートは時価総額上位50社となっているために、時価総額1兆円超えの企業がほとんどであろうから、今回のような単純な方法での買収はまず不可能だと思われる企業がほとんどなので、もっぱら彼らの仮想敵国は「外資」になろうことは容易に想像が付く。
実際信越化学の金川氏は、ライブドアによる問題が盛んだった時の日経の「企業買収を問う」と言うコラムにおいて、「当社の時価総額は1兆8千億円。欧米には10倍以上の企業もあり、株式交換なら買収は割合に簡単だ」と述べられている。
ただ、どちらかと言えばこれらアンケート対象企業群は「買収される側」と言うより「する側」なのであるから、どうして朝日がこれらの企業を対象にこんなアンケートを行ったのか、正直良く分からない。
どうせやるのなら、PBRが1倍以下の上場企業を対象にやれば、もっとこの防衛策に対する率直なコンセンサスが取れると思うのだが。

恐らくそれらPBR1倍以下企業群はやっきになって防衛策を検討していると思われる。こういう状態においてもそれを検討していないとすればそちらの方が遥かに問題だろう。
ただ、何度か書いたと思うが、防衛策よりもまずはさんざん言われている「企業価値の向上」が第1義である事は言う間でも無い。ここを本末転倒しているような企業も問題だろうと思う。
「女房が言うほど亭主はもてず」じゃないが、本末転倒企業なぞは所詮買収者も食指が動かない事をきちんと認識すべきだ。

私がこの記事を読んで唯一嫌悪感を持ったのは、やはり信越化学の言葉である。これは恐らく社長の言葉だろうと思うが(日経のコラムでも同じ事をおっしゃっていたので)、
「地道な経営努力を積み重ねている健全企業をマネーゲームの対象とするべきではない」
確かにわが国の国力その他を考えれば、資源を持たない日本にとっての製造業と言うのは大変なる価値があると私も思う。
ただ、製造業万歳だけでは今の世の中回らないと、違う世界に居る私は思う。
氏はコラムでは「防ぐための法整備が必要だ。一方経営に問題があって人材や技術を生かせていない企業は、逆に買収で経営者を交代させたほうが良い」とおっしゃっているのだが、だからそういう企業には買収者だって食指が動かないでしょう。
どうも氏は「買収者」=「諸悪の根源」のような頭があるようで、これは個人として持たれているポリシーであれば構わないと思うが、堂々と常に同じような事を世間に発信されるのはどうかと思う。
これら一連のご発言もものすごい自己顕示欲の表れであるなぁ。

さらにコラムでは
「将来の企業価値をどう見るか、裁判官だけでは難しいので、第3者機関として元経営者や学者、弁護士など有識者で構成する委員会を設置し、裁判所に助言するようにしたらどうか」

こんなことしたらもしかしたら将来でっかくなるような突飛な発想等が全て封じ込まれるだろうね。
新株予約権の司法判断に噛み付いた方々が非常に多かったけれど、それが元経営者だの、さらに弁護士!(今じゃ余り信用が置けないのだが・・いや誰とは言いませんが)だのがよってたかって裁判所に助言して、全てがぶっ潰されて終わりになる事は目に見えている。
こうした発想って本当にそろそろ改めたほうが良いと思うのだけれど。
結局仲良しクラブの発想そのままってことだし・・・。