地球の裏からまじめな話~頑張れ日本

地球の裏から日本頑張れ!の応援BLOGです。
証券関係の話題について、証券マンとしての意見を述べていきます

一見マーケットは落ち着いているが・・・

2008-09-23 03:52:37 | 初心者集まれ!株を始めてみる?
もう日替わりで世の中が目まぐるしく動いている感じで、私ごときでも付いていくのがやっと、ってな感じである。
マーケットは落ち着きを取り戻し、先週末は乱痴気騒ぎの相場を演じたかと思えば、今日のアメリカ・ヨーロッパはまた不安感に覆われている、そんな感じだ。

今日のビッグニュースは何たってMUFGのモルスタへの出資及び野村がリーマンの結構な部分を買うことに決めた、これだろうね。
リーマンに関しては遅かれ早かれどこかが触手を伸ばすだろう事は誰もが予想していたはずだけど、まさかモルスタにMUFGが名乗りを上げるとはねぇ・・・

拙BLOGにて19日に書いた記事で、コマーシャルバンクの巻き返し及びインベストメントバンクのビジネスモデルの崩壊に関して語ったけれど、その同日に以下のようなニュースが流れて、やっぱどう考えてもそうだよね、と思った。
例のMr.Yenのコメントである。

~~~以下記事引用~~9月19日(ブルームバーグ)ニュースより

榊原氏は、昨夏以降の金融危機で「投資銀行のビジネスモデルが崩壊してしまった」と分析。米証券2位のモルガン・スタンレーは「あと1週間くらいの間に」単独での生き残りを断念する公算が大きく、最大手のゴールドマンも「中期的には、どうなるか分からない」と述べ、「インベストメントバンクは消えていく運命にある」との見解を示した。

預金を集めて貸し出しを行う商業銀行が中心となる「牧歌的な金融システムに、だんだん戻ってきている」と指摘。この歴史的な「パラダイムシフト」を踏まえ、次期米大統領が就任する「来年以降、金融当局の政策や規制の形であるレギュレーション体系を変える」動きが起こると予想した。

~~~以上引用終わり~~~

いや、誤解を招くといけないので言っておくが、私は天下の榊原氏が拙BLOGを読んでるなんて自惚れはこれっぽちも無い(笑)。
実戦を知っている極めて発言力のある方だって、私のようなシガナイ証券マンだって、ちょっと考えれば分かることなのだね。

その榊原氏のもう一つの予言である「モルスタは一週間以内に」ってのもピタリと当たったね。
結構モルスタ東京の中枢に居る私の後輩と先週電話で喋っていたのだが、彼曰く、
「小鬼さん、うちは手元流動性から何から他社とは簡単に比べて欲しくないくらい厚いんですよ~」と言っていた。これは事実だと思うし、でもマーケットはやはりそうは受け止めてくれなかった訳だ。

今、「ああひとまず安心」だと思っている政府関係者の方とかが居るとすればそれは大きな間違いだと思う。確かに現象面だけ見れば、アメリカ政府の大量資金供給があって、メリルはBOAの傘下に、AIGは政府の庇護の下に、そしてモルスタはこれでしばらくいざって時の資金等で問題視されることはなくなるだろうし、割と全てが丸く収まった感はある。
しかし何度も言うように実体経済への影響はこれからである。
MUFGや野村の腹は分からないけれど、恐らく目先の大量解雇のようなことはしないだろう、でもその後は分からない。メリルだってAIGだってこれから本格的なリストラが始まるはずだ。当然買った側の負担はそれなりに大きい訳だから、それなりに業績に影響を与えるだろうし、世界中の銀行、コマーシャルバンクはこれらの動きをつぶさに目の当たりに見ている訳だから、当然貸し出し等は今後絞られこそすれ楽になっていくはずが無い。

日本の証券大手をもう一度考えてみると、前にも書いたけれど唯一野村と大和がきっちりしたコマーシャルバンクの後ろ盾が無い。
日興はシティーが、三菱UFJ証券はMUFGが、みずほ証券にはみずほFGがそれぞれ付いている。
MUFGのモルスタへの出資は現在の証券子会社で足りないところを徹底的に補完させる腹があるのだろうし、親会社の銀行としては資金のリスクに気をつけていればあとは証券同士で上手くやれ、みたいな感じなのかな、と思うし、これは極めて正しい戦略だと思う。
みずほはそういう意味では一歩出遅れている感はあるが、それでも銀行がバックについている限り新光との国内のある意味小さな問題はとっととクリアーして先に進みたいだろう。
そして繰り返しになるけれど、野村はこれで特にアジア、ヨーロッパ(リーマンのヨーロッパオペレーションの買収は現段階ではまだ推測記事に過ぎないけど、話はあるのだろうね)戦略は大きく前進する。ただこれといった銀行の後ろ盾が無いから、その部分は今後の動きが非常に興味深い。
そして大和はさらに一歩出遅れてしまった気がする。SMFGとの緩やかな提携はあるけれど、これを一歩進めて、そして何処へ触手を伸ばすのか、これも興味深い。

この間書いたプライムブローカレージ業務、これは野村も大和も何度もやろうとしていたけれどモノになっていないはずだ。結局日本の証券会社が海外でイマイチだったのもこの部分の巧拙が非常に大きい。
これも前に書いた記憶があるけれど、例えば貸し株の世界なんてののピラミッド構造ってのはそう簡単にひっくり返せない。アメリカのトッププレイヤー達を傘下に収めこの部分にての躍進を計ったら、日本勢はかなり今後大きな影響を持つことになると思う。
しかしながらそれらが本当に効いてくるのは恐らく何年も先のことだと思うし、そうなるまでの実体経済は、これからその苦しみを経験することになると思う。
ボンドやコモディティーの世界も含めてこれだけでかい事故と言うか歴史的な出来事に直面してまだまだ日が浅い訳である。
楽観はまだまだ禁物であろうと、本当に実感する。