地球の裏からまじめな話~頑張れ日本

地球の裏から日本頑張れ!の応援BLOGです。
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CBの動きとコメントへのお返事

2006-05-12 07:19:53 | 正しい金融知識
例の菱和ライフであるが、本日きちんと寄ってしかもプラスで引けた。
出来高は約2500万株!ちなみに確か浮動株は3000万株程度であったからすごい回転率であるね。

こちらユーロでのCBの取引も無事に再開されたが、実は大きな動きは無かった。
パリティーベースで70台まで下がってしまった訳だけれど、朝一番のインディケーションは、99.75-100.75、その後100を挟んだ動きに終始、但し実質的な商いはほとんど無かったようだ。
ひとまず株が無事に寄ったので、CB投資家も安心したのだろうか。

さて、コメント欄にまたまた非常に鋭い質問を頂いているので、それに絡めてお話をして見たいのだが。

『菱和ライフさんの件ではなく、一般論なのですが、PDFの内容を読むと、合併などで上場廃止になった場合100%+αで償還するようになってると思います。例えば発行会社の突発的な倒産などで債務が履行できないような事態になった場合は実際どういうふうな処理になるのでしょうか?MPOなんかだと引き受け証券が丸損で諦めるのですか?大抵の物は無担保表記ですし、資産があってもそういうところは大抵銀行担保になってますよね。』

例えば今回の菱和のCBの詳細を読んでみると分かるけれど、おっしゃる通り、仮に上場廃止になった場合、100%での償還をリクエスト出来る権利を主幹事は持っている。つまり上場廃止(もちろんそんな事態になるかどうかは分からないし、あくまでも一般論であるよ)になった場合でも、倒産等ではない限りCBは100前後にて償還されるはず、なのである。
しかしながら債務不履行等で倒産等をした場合にはこの限りでは無いと記憶する。
先月民事再生法を申請したA社であるが、この会社はあるいはご存知かも知れないけれど、スイスフラン建てCBを野村スイス主幹事で発行しているが、昨年末のPUT資金を調達できなかったため、監理ポストに入った。
結局その後の資金調達も上手く行かず、民事再生法申請になったわけであるが、時系列でこの関連のニュースを追って行くと、まずは野村スイスにて社債権者集会が開かれ、最初は全額面の5%、翌月は10%、と言った具合に順次100にて償還する、ってな事が話し合いが行われ、でも結局約150億の負債を持って事実上倒産してしまった訳だから、それらの話し合いは絵に描いた餅になっていると思われる。
無い袖は振れない。
特にアルパやスイスフランは私募にて発行されるので、その債券の償還順位ってのはほとんど最下位なのである。

実際私が覚えている限りでは、スイスにおいては、マンションのマルコーとか、日本データ機器ってな会社がCB存命中に倒産している。その際はほとんど返って来なかったはずだ。
上場廃止までは何とかなるけれど、それ以上のステージに進んでしまうと、CB投資家も大きな打撃を受ける。もちろん株式投資家はもっと大きな打撃を受けるわけだけど・・


『>昨日今日は、投資家がCBを売りたくても事実上売れなかったのだ

という事は、MMカーの方々は売りが出れば買わなくてはならないのですよね...欲しくなくても..万が一上場廃止等になってしまった時、気の毒にもMMカーさんの手元に残ってしまったりしたら社内的にヤバかったり怒られたりするのでしょうか...?』
<MMカーとはマーケットメイカーの事です~筆者注>

おっしゃる通りです。
ユーロにおけるMMの基本は、前に書いたようにK4K(Knock For Knock)と呼ばれる、お互いにファームプライスの提示が基本であるから、出した値段で売られようが買われようが、それは聞いた方の権利なのであるね。
これは倒産とかでは無かったけれど、数年前CB市場を突然襲った信用危機ってのがあった。別に危ない会社でも何でも無い会社のCBが突然売られだし、その時の事を考えるともうMMなんてやりたくない、ってくらい死にそうだったのだが。
プライスを聞かれて「95-96」と出すとすぐに95で売られ、今度こっちが聞きに行くと「92-93」で止む無く売ると、今度はその場で相手にプライスバックを求められ「90-91」って出してやったら90で再びヒットされ・・って言う恐ろしい事が起きて、そうなると全てがネガティブスパイラル・・・

最終的には主幹事がどう判断するかってのが結構ポイントになってくるので、MMをやってる時はやばいと思えばすかさずそれを社内マターにでっかくして、なるべく上の人間をインボルブするようにして。。ってな感じで対応してたけど、それにしてもポジションが溜まるときは最終的には主幹事溜まる訳だ。
結局そのCBは70台まで突っ込んで、急遽東京経由で買入消却提案を行ってもらい、多少は取り返した記憶がある。。

私は経験は無いが、そうやってポジションが溜まり、そしてその当該会社が倒産、ってケースは当然あるわけで、そうなると場合によっては首なり左遷にもなると思うなぁ。
一応主幹事にはBID義務ってのがあるので、どんなに値段を出したくなくても、出さねばならない。もちろん100のCBに対して50BIDとか言っても良いけれど、そんなことをすればその業者はその後信用を回復するのに苦労するから、その辺のバランスが非常に問われる、苦しい戦いなのだね。。

そんな事が起きなければ良いな、と。


菱和ライフ事件・・

2006-05-10 05:03:26 | 正しい金融知識
現在世間を騒がせている菱和ライフ事件。
東証2部の会社だけれど、実はヨーロッパではこの会社は割りと良く知られているのだ。何故か?
そう、CBを数回スイスで発行しているのだね。確か3回だったと思うけど。
色々とニュースを読み、さらにYAHOO ファイナンスの掲示板や、果ては2ちゃんねるとかもチェックしたけれど、どうも菱和ライフの立ち回りがきちんと説明されているところが無いので、まあそれは捜査の進展を待つしかない。
社長さんに関しては、もうネットでは書かれたい放題、まあ私はそれらのスキャンダラスなことには興味が無いし、それよりとにかくこの会社が今後どうなっていくのかが気になる。

昨日の逮捕から、当然の事ながら我々の方にも投資家から様々な問い合わせが入っている。入っているけれど結局報道されていることくらいしか我々にも分からないので、どうしようも無い状態が続いている。
今日も手分けして、同僚はアナリストに、私は東京やロンドンの引受系部署に色々サウンディングしたけれど、やっぱり結果は同じ・・

ちなみに菱和のCB、ずっと最近はオンパリ、120超え位で堅調に推移してた。
不動産系の会社の株式全般のパフォーマンスも決して悪くなかったので、またCBの投資家もまだまだCBを転換ないしは売却する意向もさほど持っていなかったために、転換は余り進んでいなかった。
CB市況によっては、これら小型系のCBってのはパリティーベースで120を超えてくると結構転換が進むのだが、直近の市場、新発債もほとんど無かったので、特にCBファンドなんかはポジションを利喰ってしまうとキャッシュが残り、そのキャッシュを使うべくCBが見当たらないために、結構ハイプライスのCBだらけってところが結構あり、菱和もその一つだったわけだ。
先週まで123程度のパリティーだったと思うけれど、2日連続ストップ安によって、パリティーは80台まで来てしまった。
ちなみにユーロ市場の紳士協定で、当該株式がストップ高ストップ安で値段が付かなかった日は、マーケットメイカーはファームプライスの提示義務が無くなる。
つまり、昨日今日は、投資家がCBを売りたくても事実上売れなかったのだ。
それじゃあ仕方が無いから株を売ろうか、と思っても、本日の売れ残りが約980万株あるんじゃ、明日も推して知るべし、だろう。
CB投資家はこの2日、全くこのポジションから逃れる術が無かった・・明日もストップなら同じ状況が続く・・・

結局事件のキーは、裏社会とのつながりだと思うけれど、まあキレイごとを言わせていただければ、今後の東証の管理なりがまた問われるだろう、と。
もちろんそこまでの審査を要求するのは最初の時点では無理があろうし、CBを3回も起債してるって事は、それを引き受けた金融機関の審査なりも全て通過している訳だから、今回の件では東証一人を悪者には出来ないだろうと思う。
しかしながら、非常に厳しいけれど、では裏社会とのつながりが捜査当局によって暴かれて、ゆえに会社のトップが逮捕、って事になれば、東証は果たしてどうするのか・・・上場基準に触れていればかなり厳しい裁決が出るかも知れない。
ましてや東証は散々ライブドアの件やJCOMでは信用を失墜している訳だから、ここは徹底的に張り切ってしまう可能性もあろう。

いずれにせよ大迷惑なのは紛れも無い、投資家だ。
個人しかり法人しかり、そして外人しかり、さらにそのデリバへの投資家しかり。
言って見ればこれは投資家にとっては交通事故のようなものだけれど、事故なら事故できちんとした処理を見せて欲しい。
ちなみにCBは来年PUTが付いている・・・

コメントありがとうございます

2006-05-07 04:45:45 | 正しい金融知識
世の中はGWなのでまあそんなにここを訪れる方もいないかなぁ、さらに私自身少々ばたついておりまして、あれだけやる気を見せながらの裏切り、すみませぬ。

さて、コメント欄に双日に関するものを頂いた。
あっし、それに気付き急いで双日の「優先株式の一掃による当社の資本構造再編について」と言う資料を打ち出して読んでみたのだが、何せこれが長い・・
約30Pに渡る資料なのである、よって多少めげた、すまぬ。

まず頂いたコメントは以下の通りである。
『双日が優先株5760億円を約3500億円で買入消却するために3000億円のMSCBを新たに発行するとの発表がありました。
基本的な質問で大変恐縮なのですが、なんで優先株を持っている人はこんな条件を受けるのですか。またMSCBを受ける側の目論見って何なのでしょうか。』

その後に通りすがり様から今回の経緯に関する記事のコピーを頂いた。
さて、ざっくりした印象は、私の解釈では以下の通りであるが、これは全く無責任なものなのをご承知おき頂きたい。

確かになんで6000億近い優先株の買入消却を銀行は3500億程度で受けるのか、これは不思議であるね。
ただ、記事によれば各行は既に減損処理、つまり簿価を落としているので、逆に3500億でやってもらえればかえって利益が出ちゃうので、WHY NOT?って事だ。
例えば私がブックを持ってCBをやっていた時は、常にポジションに対してはMark To Market、すなわち単価100で仕入れたものが翌日99になれば、もうそこで1ポイントの損を出す、という事をしていたのだが、これはマーケットに対峙する所は全てやっているはずだ。
翌日99になったものがその翌日101になったので売っちゃえば、昨日比2ポイントの利益が計上されることになる。もちろんそれはブックの上であって実現益は1ポイントであるのだが、このような作業を日々行っているのであるね。
そしてそれが決算(私の時は毎月月末であったが)の時に評価損益も全て実現されて、翌期ないし翌月からの新コストが決まるわけである。
つまり私の100で買ったモノ、日々評価損益を計上しながら期末に95になっていた場合、今期5ポイントの実現損を出して、来期の新コストは95でスタートする、と言う事になる。
ここで私は新しい期に入った途端それが98で売れるなら喜んで売るね。それで3ポイントの実現益が発生するのだから。

つまりこの双日の優先株も、全て処理して簿価を下げた中で、双日が新コストよりも高いところで買入消却をするって事になれば、私なら喜んでそれを受ける。将来的にもっと高く売れるかもしれないし、色々起こるかも知れないけれど、この優先株が将来普通株に転換された段階で、例えば市場が陰の極であったりしたらその処理でまたまた面倒が起こるかも知れないのだから、そしたらさっさとこのポジションを掃いてもっと別なことにお金を使ったほうが良い、と考えると思われる。
これは双日側もハッピーだし、銀行側も面子を保ちつつ堂々と売れるわけだから、両社の利害がきっちり合致したと考えられる。

さて、その資金をMSCBで、って話でこれは野村が引き受けたようだ。
MSCBってのはここで何度も書いているけれど、基本やれば儲かる、いやその儲かるところはどこかと言えば、引き受けたところであるね。
今回のMSCBの条件は今度ゆっくり検討するけれど、色々この資料には「株価に影響を与えないようにどうのこうの」って書いてあるけれど、天下の野村に抜かりがあろうはずは無く、もちろん多少のリスクはあると思うけれど、現在の野村にとってはそのリスクたるや微々たるものだろうって。
MSCB自体はこの間書いたように日々それを遂行することが難しくなってきているので、恐らく今年中には完全に廃れるであろうと思われる。つまり今の段階ではブローカーにとってはとにかくやれるだけやっておいて、将来的な含み益を残しておくことが重要なのであるね。

さらに一般株主に取ったって、将来確実に普通株に転換されるモノが出回っているより、もしかしたらCBのまま終わってしまうMSCBになる方がまだ希薄化の面では有利になると言えようし、双日だってここで言っているように資本構造を根本的に改善出来るのだから、まあそうやって考えればこれはほとんど全ての利害関係者の利害関係を満たすスキームと言えようかなぁ、と。

取り急ぎ、詳細はもうちょい検討させて下さいな!