恋、ときどき晴れ

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

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怪談in吉祥寺恋色デイズ:5人目

2015-08-15 07:37:56 | 吉祥寺恋色デイズ

 

これは昨年の8月にupしたお話の再掲です。
去年からブログに来てくださっている方、もう読んだよ~って方はごめんなさい。
新規のお話はしばらくお休みしますね。

 

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暑い夏が続きますね。
そろそろ身体もこの暑さに疲れて来る頃です。
そんなあなたに、気分だけでも涼しさを味わってもらおうと怪談話を企画しました。


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5人目 八田竜蔵

リュウは二階から帰って来ると元気に言った。

竜蔵「俺の話を始めるぞ」



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『船幽霊(ふなゆうれい)』

 
むかしむかし、ある漁師の村にこんな言い伝えがあった。

『お盆の夜には、決して舟を出すな。あかとりを奪われ、舟は水浸しにされて沈んでしまう。』

 あかとりとは、船底に溜まった水をくみ出すための柄杓のことだ。

 年寄りはこの言い伝えを信じて守っていたが、若い者はバカにして信じようとはしない。

なあにただの迷信だ。」

「俺たち漁師には、盆も正月もあるもんか。」

 とうとう数人の威勢のいい若者たちが、お盆の迎え火を背に沖に小舟を出した。

 海は穏やかで、空一面に星が輝いていた。

 若者たちは沖に出ると鼻歌をうたいながら、海に網を投げ入れた。

 網を投げ入れ終わったころ、一人の男が、沖の方を指差して叫んだ。

「おい! 見ろ!ありゃ何だ!」

 なんと、沖から真っ黒な雲がやってくる。

「これは…空模様が怪しいぞ。急いで網を引き上げろ!」

 若者たちは急いで網を引き揚げ始めた。

 ところが、だんだん近づいてくる雲の中から気味の悪い声が聞こえて来る。

「待ってくれーっ!」

「待ってくれーっ!」

 必死で網を引き上げながら、
「おいっ、待ってくれといってるぞ?」

「くそっ!待ってたまるか!急げ、浜に向きを変えろ!」

 黒い雲は、あと少しで小舟に追いつくというところまで来ると、渦巻くように空に舞い上がったかと思うと、大きな船に姿を変えた。

 そして、滑るように若者たちの小舟の方にやってくる。

 その船は今までに見たこともないような奇妙な形をしていた。

「おい、舳先に竜の頭がついているぞ。異国の船だ。」

「おう、見ろ! 松明だ!」


 何百本という松明があっという間に船に灯り、まわりの海を明るく照らした。

「すごい!こんなの初めてだ!」

 その松明の灯りは海面に映りキラキラと輝いて見とれるほどだった。

 さらに船が近づいて来ると、若者たちは異変に気づいた。

「おかしいぞ。あの船には誰もいないぞ。」

 船が今にもぶつかりそうになった時、泣くような唸り声が聞こえてきた。

「あかとりをくれー」

「あかとりをくれー」

 全身がそそけだつような悪寒が走った。
 その時、若者たちは浜に伝わる言い伝えを思い出した。

『あかとりをとられたら、命もとられるぞ。あかとりを決して渡してはならん』

「おい、あかとりをかくせ!急げ!」

 そう叫んだ途端、何百本という松明がフワリと浮き上がった。そして、小舟に向かって飛んで来くると若者たちの小舟を取り囲んだ。

 なんと、それぞれの松明からは白い手が伸びて来て、こう言いった。

「溺れ死ぬものは、だれじゃ…」

「俺たちの仲間になるのはだれじゃ…」

若者たちは一斉に叫んだ。

「助けてくれ!船幽霊だ!」

「だれか助けてくれ!」

「船幽霊がでた!」

 何百という白い手が、船べりをぎゅっと掴み、小舟は動くことすらできない。

「あかとりをよこせ…」

「あかとりをよこせ…」

 船幽霊の白い手がすーっと一人の若者の顔を撫でた。

「ギャー!!」

 その若者は慌ててあかとりを海に投げ込んだ。

 すると、たった一本のあかとりが、何十何百ものあかとりに変わった。

 船幽霊たちはその白い手で一本、一本、あかとりを掴むと、海から水をひと杓すくってはザバーン、ひと杓すくってはザバーンと小舟の中に注ぎ込んだ。

「だれか、助けてくれ!船幽霊だ!」

「ああもうだめだ」

 若者たちはもうなす術も無く、狂ったように助けを求めて叫んだが、白い手は、水を汲んでは注ぎ込んでいた。
 小舟は、もう今にも海の中に沈みそうだった。


 その時、浜の方では大きな炎がいくつもいつくも燃え上がった。
 それは、浜辺で焚いていた先祖の霊を迎える迎え火だった。

 炎は空高く燃え上がると赤い雲のようになり、生きもののようにこちらへ飛んで来た。

 そして、船幽霊の上にくると空いっぱいに赤い炎は広がり、火花を散らしながら叫んだ。

「異国の亡者どもよ、静まれ!」

「浜辺の迎え火を見てみるがよい」

「我々は海で死んだ漁師の幽霊だ」

「お前らもそうだろう」

「我々とお前らは同じ仲間だ」

「悪ふざけはやめて、消え失せろ!!」

 その声を聞くと、白く長い手は船の中に消え、何百もの松明に変わった。

 そして、船いっぱいに松明を灯した異国の船は、波にあかりを写しながら、沖へ、沖へと消えていった。


 あとには小舟と惚けたような若者たちが、満天の星空の下に残された。


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譲二「次はハルの番だな…。ハルも先に肝試しをしてくる?」

ハル「そうしようかな」

百花「ハル君頑張って来てね」

ハル「うん、行って来るよ」



6人目へつづく