私のホームには、いわゆる資産があるご入居者が多いようです。
しかし、どんなにお金や資産があっても、配偶者も子供もいない方は、常にとても強い不安を抱いている…と痛感しています。
あるご入居者は、医療保険や介護保険の保険料など、いわゆる「役所関係の手続き」がうまく出来ているかを、それこそ「夜も眠れないほど」強烈に不安に感じています。
その方は、新聞もTVニュースもとても細かくご覧になり、最近の . . . 本文を読む
連休明けの今日、私は午前中いっぱい、ある女性のご入居者の話を「傾聴」しました。
その方は八十代半ばで、歩行はいわゆるヨチヨチ歩き。認知症に加え難聴もあるので、ご家族から、
「一人で外に出たいといっても、出さないで下さい」
と申し付けられているのです。
でも、ご本人は長らく大企業に勤められた、自立心旺盛で、強い自我をお持ちの方です。いろんな用件が頭に浮かぶたびに、
「外出しますからクルマを一台 . . . 本文を読む
昨日に続いて、少し教会の話をします。
私が初めて教会に行ったのは、十二、三年前の土曜の夕方のことでした。そのときの私は、職場での失恋と仕事の行き詰まりに見舞われ、息も絶え絶えの状態でした。
カトリック教会を択んだのは、大学生の頃から好きだったカトリック作家の小川国夫の影響が大きいと思います。
初めて訪れた教会の神父さんは、五十代半ばで体躯のガッチリとした、少し髪が薄い人でした。笑顔の底に「オー . . . 本文を読む
今日は、今月初めて教会でミサに与りました。
私はカトリック成城教会に所属しています。
カトリックは基本的に居住地にいちばん近い教会に所属することになっていますので、約二年半前に祖師谷大蔵駅の近くに越してから、最寄りの成城教会のメンバーになり、ミサにも与るようになりました。
今の教会に移って驚いたのは、その活気です。
いわゆる先進国では、おしなべて伝統宗教は信徒を減らしていると聞きます。日本 . . . 本文を読む
私の母は今年七十八になるが、月に二回くらい電話を架けて来る。
いくつになっても息子は頼りなく、心配な存在のようだ。
四年前、私がケアマネジャーの資格を取ったとき、母はたいそう喜んでくれた。
ケアマネジャーという仕事の内容について、母が充分に知っていたとは思われない。ただ、障害者施設を辞めてからの私が再就職に苦労しているのはかなり案じていた。
その上、
「ケアマネというのは、年寄りを世話する仕事な . . . 本文を読む
皆さんは介護保険制度に関して、どのくらいご存知でしょうか?
お役所に申請すると、しばらくして訪問員の方が自宅やホームにきて、いろいろとお話しを伺います。これを『認定調査』といいます。
そして、掛かりつけのお医者さんが体や精神状態を書いた『医師の意見書』。この二つをもとに介護認定審査会というのが開かれて、「要介護度」が決ります。
いちばん軽度な「要支援1」から重度の「要介護5」まで、7ランクに分 . . . 本文を読む
「家に帰ります」「外に出して下さい」
職員にそう訴えるご入居者様は多いですが、ほとんどが認知症状のある方です。
認知症状がある程度強まると、今自分がどこにいるのかも判らなくなります。
だけど、何にも知らずに入ったホームに対する「ここは自分の居場所じゃない」という意識は、なかなか消えません。
昨日の文章と矛盾するようですが、老人ホームがご入居者にとっての「本当の家」になるのは、そうとう大変なことな . . . 本文を読む
今日は、月に一度の訪問美容の日。
いつもどおり、大浴室の脱衣場を即席の美容院に仕立てて、十六人のご入居者がお洒落を楽しみました。
いくつになっても女性はお洒落が大好きですね。カットをし、パーマをかけ、パーマ・マニュキアを楽しみ、フェイシャル・エステで癒され…とご注文は様々ですが、終わった後は、皆さんひと月で一番良い顔をされています。
そういう表情を見ると、こういった普遍的な楽しみが「生活の質」を . . . 本文を読む
今日は仕事が休みでした。
午前中に歯医者に行ってから、DVDを二枚借りてきました。
一枚はペドロ・アドモドバルの『トーク・トゥ・ハー』。
そしてもう一枚は、『男はつらいよ・柴又慕情』…。
私が『寅さんシリーズ』を見始めたのは、今年に入ってからです。それまでは、レンタル店に行っても、『寅さん』の棚には近寄ることがなかった。というより、避けていました。
私は昔、映画青年だったのです。高校大学と「 . . . 本文を読む
最近流行の「脳科学」では、男と女では脳の「しくみ」自体が根本的に違う…とよく言われる。
あるいは、こういうこともしばしば耳にする。つまり、「生物の究極の目的は良い遺伝子を残すこと」であるが、その場合の主体はメスであって、オスたるもの、メスに「良い遺伝子」を捧げられるがどうかが勝負である。それが出来ないオスは単なる役立たずに過ぎない。とは言え、「良い遺伝子」をメスに供給したオスも、その仕事が終われば . . . 本文を読む
老人ホームは一年三百六十五日、二十四時間営業だ。週末祝日関係ない。私も、昨日も今日も仕事です…。
てなわけで、今日はじっくり語る余裕がない。そこで、私の考える「おたすけ長屋」のイメージを夢想します。
まずは山中貞雄の傑作『人情紙風船』。昭和十二年の作品だけど、今観ても画像も言葉もとても美しい。
私がこれを初めて観たのは、火事になる前の京橋フィルムセンターだった。大学でシネマ研究会に所属して . . . 本文を読む
今の会社に入って最初の三ヶ月、私はデイサービスで働いていた。
ケアマネとして新設の老人ホームに異動するとき、デイの所長は言ったものだ。
「ホームは人間関係キツイわよ。三年経ったら全員入れ替わる世界だから」
それから三年半たった。所長の話はほとんど当っていた。
オープニングスタッフは、もうほとんど残っていない…。
この世界に入って驚いたのは、とにかくヘルパーどうしが壮絶に「潰し合う」ことだ。
. . . 本文を読む
ケアマネ稼業を始めて三年半になるが、「ヤバイ」と感じることが増えた。何より酒量が十倍になった。ホッピーと焼酎が毎夜のお友達だ。ま、私はそれまで下戸に近かったけど…。
しかし問題はそんなことではなかった。老人ホームに勤めて三年半、いろいろ見て聞いて知ったあげく、「このままでは、資産も子供もないニンゲンは、老後の前に悲惨な最期をとげるしかない!」と確信するようになったのだ。それはいてもたってもいら . . . 本文を読む