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終わりなき説得

2009-07-14 | 入居者、家族
連休明けの今日、私は午前中いっぱい、ある女性のご入居者の話を「傾聴」しました。


その方は八十代半ばで、歩行はいわゆるヨチヨチ歩き。認知症に加え難聴もあるので、ご家族から、
「一人で外に出たいといっても、出さないで下さい」
と申し付けられているのです。

でも、ご本人は長らく大企業に勤められた、自立心旺盛で、強い自我をお持ちの方です。いろんな用件が頭に浮かぶたびに、
「外出しますからクルマを一台用意して下さい」
と、事務所におっしゃってきます。
「クルマを用意」というくらいですから、行き先はかなり遠方でなのです。とても
「職員がちょっといっしょに」
という場所ではありません。

今日も、「ゼヒ銀行に行きたいからクルマを呼んで!」
という要望を、朝、事務所が開くなり言って来られました。私は言いました。
「ご家族様から、お一人での外出は控えて頂くように申し受けているのです…」
いつもかなりアグレッシブなご様子を示す方ですが、今日はひと際でした。
「なぜ私が一人で外に出ちゃいけないのよ!!」

それから約二時間、私はずっとその方とお話し、傾聴と説得を繰り返していました。
いちばん困難なのは、こちらがお話したこともご本人がお話しされたことも、十五秒後にはスッカリ忘れてしまわれることです。その上、持ち前の強いお気持ちから、私に「キチンとした回答」を求め続ける。
だから、私は、何度も何度も同じ説明を繰り返しました。最後のほうは、自分の脳が捩れてしまったような疲労を感じました。


認知症の方とじっくりとお付き合いするようになったのは、今の職場に勤めてからです。その大変さは、やはり「実際に」「毎日」「長期間に渡って」対応しなければ判らないものがあります。

でも私は、時間がくれば帰るし、週に二日は休日もあります。しかし、もし家族がそうなってしまったら…。
特養に入居できるのはごく一部だし、私の職場のような有料老人ホームも、誰もが入れるわけではありません。


その方は、いったんお部屋に戻ってから、紙をもってまた事務所においでになりました。
『明日から三日間、会社を休みます』
まだ、「会社勤め」をされていると考えておられるのです。
私は、その「休暇願い」をシズシズと受け取りました。





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1 コメント

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経験あります (マックス)
2009-07-15 13:31:47
認知症になった母親が在宅療養していたとき、まさしく文七さんのところの女性と同じでした。エンドレスのリピートは、本当に根気がいります。しかも被害妄想的だし。本当にお疲れ様です。
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