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ドサンコレスラー

2010-01-27 | 映画
ここのところ仕事が忙しく、こころが折れそうになることもあった。

だから、休みの今日は、自分を元気付けてくれそうな映画を借りてきた。



『レスラー』はずっと待ち望んでいた一本だった。

そして、この作品でミッキー・ロークがアカデミー主演男優賞を獲れなかったのはまことに残念だし「おかしい」とすら思った。

本命視されていながら、ショーン・ペンに栄冠が輝いた。でも、そのショーン・ペンが、オスカー像を手にしながら、ミッキー・ロークに賛辞を送ったのだ。

プレイヤー同士では、誰が「ベスト」なのか、周知していたのだろう。



『レスラー』は、かつてスーパースターだったが今はすっかり落ちぶれた中年レスラーの孤独と意地を描いた作品である。

プロレスに興味のない人には知られていないことだが、アメリカに於いては、トップレスラーの社会的地位も収入も驚くほど高い。

アメリカでは、プロレスは明確に「ショー」と位置づけられている。

しかし、そのショー・ビジネスでトップを張るためには、超人的な肉体の鍛錬と精神力と知恵を発揮し続けなければならない。

でも、それは、「男が社会で戦い、演じ、生き残る姿」と、全く相似形なのではなかろうか?

アメリカでプロレスラーに人気があるのは、誰もが「命がけで演じ続け、居場所を確保し続ける」ことを明白に意識し合っている社会だからだと思う。

その分、リング上のプロレスラーに自分を投影しやすく、喝采したりブーイングを送ったりするのである。

プロレスを楽しむためには、数限りない「お約束」を周知しつつ、レスラーの瞬間芸を一瞬で読み取り、解釈しなければならない。

そういう点では、プロレスと歌舞伎はほとんど同じジャンルである。



そしてまた、プロレスは「排除された者」が感情移入しやすい「癒しの劇場」でもある。

『レスラー』でも、ミッキー・ロークが場外乱闘でヒール(悪役)を攻めているときに、ファンの観客が「これを使ってくれ!」と、自分の義足を差し出す場面がある。

そうやって「我らがヒーロー」と結びつくことで、自分の居場所を見出すのである。

くだくだしい説明は省くが、私の経験でも、今まで出会った障害者にプロレスファンは多かった。

誰でも命がけで演じ続ければヒーローになれる(かもしれない)…という夢を、プロレスは与えてくれるからだ。

ミッキー・ローク演ずる中年レスラーが惹かれる女性が、子持ちの中年ストリッパーというのも、「お約束通り」だが、泣かせる。

ストリッパーもまた、「カラダを張って生きる」という意味で、プロレスラーと限りなく同業種なのだから…。



いくつかのセリフが、心に響いた。

「オレはロクデナシで、全身がボロボロの、孤独なオヤジだ。お前にした仕打ちもひどかった。でも、オレは、お前にだけは嫌われたくないんだ」

これは、幼い頃に見捨てるように別れた自分の娘への言葉。

そして最後の場面。

心臓発作を起こしバイパス手術を受けたミッキー・ロークがリングに向おうとするのを、ストリッパーのキャシディが「死んでしまうわ!」と止める。

「オレには、外の世界のほうがずっとつらい。オレの『居場所』は、あそこだけだ」



ミッキー・ロークのイメージが、あまりにもランディ‘ザ・ラム’ロビンソン(映画の役名)そのもの過ぎたことが、アカデミー賞を逃した原因かもしれない。

だが、『レスラー』のミッキー・ロークは、文字通り一世一代、入魂の演技であった。



もう一本、中年男が主役の映画を借りてきた。

それは高倉健主演『ぽっぽや』である。

『レスラー』とは赴きは違うが、これもまた不器用で孤独な男の物語だった。



高倉健演ずる佐藤乙松(オトマツ)は、北海道の廃止寸前のローカル線の駅長である。

親子二代の鉄道員で、真面目を通り越して愚直一徹な性格のため、妻と娘が亡くなったときも、駅長(というよりただ一人の駅員)としての職務を全うしてしまったほどである。

その孤独な佐藤乙松のもとに、一瞬の幸福が訪れる…。



『ぽっぽや』は観た人も多いと思うが、無骨で不器用で頑固な佐藤乙松像は、高倉健のイメージそのものである。

でも、主演の高倉健も大竹しのぶも私の母校の先輩だし、私の血族は皆北海道の出身だし、何より私の父親は鉄道員だし、しっかり感情移入いてしまったのでした。


ミッキー・ロークのプロレスラーも、高倉健の鉄道員も、派手と地味、奔放と生真面目…という違いはあれど、アメリカと日本の「必死に生きる中年男」のひな型のようなところがある。

その二人に感情移入し、涙した今日は、なかなか良い休日になりました。

女性からすると「男ってクダラナイねエ」と思えるかもしれないけれど…。




どうも、お粗末様でした。








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